ラリマー
突然人語を話し始めたドラゴンに向かって、腹黒で根性のある変な神官が声をかける。
「お久しぶりです、ラリマーさん。今月もたくさんの荷物ありがとうございます」
「え、あ、そ、そんな、これくらいどってことないし。が、学者センセの役に立てたなら嬉しいし…」
なんでこいつ、ラリマー?急にしどろもどろなんだ?ていうか学者センセ?色々知らない情報が飛び交うのでひとまず情報収集に回る。
そんなこちらにはおかまいなしに近況報告を親しげに交わす神官とドラゴン。なんかドラゴンの方はどもりっぱなしだが。前になんかあったんかな。
どもりの理由はわからないままだが、なんとなくわかってきたこともある。どうやらこのラリマーなるドラゴンは定期的に街に交易品を持って訪れるらしい。ドラゴンの大きさを生かした1人商隊だな。そして他の街にも同じように渡って行くので、世界全土に詳しいというわけだ。
「-。あ、そうそう、ラリマーさん、お花はお詳しいですか?」
「え、花?ま、まぁ、ある程度は見たことあると思うけど…」
腹黒だけど気を遣える神官らしく、こちらの話題を振ってくれていたようだ。
「実は、こちらの冒険者シオンさんが、とある花畑を探しておりまして」
「花畑?」
「あぁ、細くて白い花びらの花が咲いている場所なんだが、どこか心当たりはないか?」
問いかけを受けて先ほどまでの挙動不審は身を潜め、真面目そうな顔をして虚空を見つめる。まぁ、ドラゴンの真面目な顔とかわからんけど。
「細い花びらってのがこの辺りにはないかな…。海の方でそんな花を見た気がする。なぁ、その花畑は風が強かったりするか?」
「….そういえば、花びらが舞い上がる程度には強いか」
「葉っぱが露に濡れた感じだったり?」
「え、いや、そこはわからん、すまん」
「あぁ、いや、いいんだ、ちょっと思いついた花の特徴を聞いてみただけだから」
細い白い花びらは印象に残っているが、正直葉の様子は全く覚えていない。だが、このわずかな手がかりからも心当たりを探し出してくれたあたり、神官の言う世界全土に詳しいもあながち言い過ぎではないようだ。
「うーん、絶対とは言わないけど、海沿いで見る花が特徴として近いと思う。クリスタルリーフって植物」
「…クリスタルリーフ…」
「ありがとうございます、流石ラリマーさんですね。僕はこの辺りにはなさそう、くらいしかお伝えすることができなくて…」
「べ、別に、あちこち飛んでるから見たことあるだけで、が、学者センセみたいにすごいわけじゃないし」
さっきまでの落ち着きはどこへやら、また挙動不審になるドラゴン。ドラゴンといえば圧倒的強者のイメージだったが、だいぶ目の前のラリマーはそのイメージから遠いようだ。
「ありがとな、助かった。おかげで次の目的地が決まった。俺は海に行く。…上手く使われてた気もするが、一応、世話になったな、神官」
にこやかに別れの握手を、と手を差し出すが、なにやら困ったような笑いを浮かべる神官。いったいなんだ?
「…えーとですね、シオンさん、実はシオンさんは冒険者として働いていただいておりましたが、その、昇格試験の類は受けていらっしゃらなかったので、今はEランク、実力を考慮してDランク相当として登録させていただいております」
「…うん?」
「それでですね、実は冒険者の皆様の安全をお守りするためもあり、ランクごとに立ち入りできるエリアが決まっているんです」
森では、そんな話聞いたこともなかったな。人が多いところは面倒だ…。そんな気持ちが表情から漏れ出ていたのか、腹黒で根性のある変な神官が申し訳なさそうな顔になる。
「具体的には、冒険者ランクAが最も強いクラスになりますので、旧魔界も含めどこでも移動可能です。続いてBが海も含めた旧人間界と呼ばれるエリアになります。その下のCは旧人間界の陸地、Dは街の周囲、街道が整備されているエリアに移動可能となっています」
「俺、もともと森の奥にいたけど」
「そう、ですね。正直ランクとして森の奥ですとD〜Cに相当するかと思います。ただ、あくまでもランクは関所などを通る際、証明が必要になる場合のものなので…」
「…つまり、関所がないとこならバレないからいい、と?」
「ふふふ、そんな、シオンさん悪い人みたいですねぇ」
そう言う本人の方が腹黒そうな笑顔を浮かべながら神官が俺に罪をなすりつける。流石腹黒。
「ランク試験、受けるなら試験会場までは乗せてってやるよ」
「そうですね、海の方に向かわれるようでしたらBランクまで昇格が必要になりますし、ラリマーさんがいらしているときでよかったですね」
初見の内容が多すぎるが、どうやら試験とやらを受けないと夢で見た花畑に行けないらしいことは理解した。それなら善は急げ?思い立ったら吉日?とにかく試験を受けに行くしかねぇな。
「ありがとな。その試験について、教えてくれ」
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