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罪状

石を溜めるんだ…全ては正月ガチャに前ブッパする為に…。

ユニークボスと銘打たれた骨だが、終始朱雀の優勢が続いている。

全力の蹴りを受けて体勢を崩す骨。そこに更に抜き放った大太刀で斬りかかる朱雀。


なんとも絵物語でも読んでるような気分だ。

なんだっけ滝夜叉姫?

どうやら骨は俺の体がある場所から動けないようで、動く前にタコ殴りにされている。



「弱くなってるとは言え、容赦ねえな龍狩り」


「これが龍狩り殿の戦いですか…」


「グルァ…」



三者三様の意見だが、よくわかる。

朱雀の戦い方はとても単純だ。

相手が動く前に斬る、斬って怯んだらもう一度斬る。

今も倒れ込んだ頭蓋骨に刀の持ち手を使って兜割を叩き込んでいる。



『オイ待テ…ヤメロ…オイ!

コイツヲ止メロ我ガ供物!』


「朱雀、お客様がもう一セット追加だってさ」


「承知した」



怯み、怯み、怯み。

大剣はスタン値が高い、それは大太刀も同じなのだろう。一方的に頭を叩きスタン値を稼いでいる。

ふと見れば、攻撃を当てられ続けている頭蓋骨が徐々に変色している。

『腐食』のバッドステータスだ、クロノスでは良くゾンビとか一部の不死属性持ちが持ってたっけ。



「ちょっと加勢しよう…『弱点付与』」


「むっ…助かる」



アイテムボックスから取り出した短剣にアビリティを使い、骨に投げる。

頭上にヒット。

髑髏の一部に魔法陣が浮かび、朱雀は的を変える。とはいってもさっきから殴ってる場所のすぐ近くだけど。



『グワァ、ヤメロォ…』


「何被害者面してんだ、お前」


『我ハ、死霊ノ集合体…飢餓ノ…。

何故攻撃ガ通ジル…』


「そりゃ宿主が悪いからだろうな。その小僧は月の後継だ。お前さんら死霊には天敵だろうさ」


『月…月…嗚呼…嗚呼…!

カノ銀月…人ノ死ヲ…人ノ死ヲ見守ル者カ…!』



そんな殊勝な神じゃないと思うよアイツ。

出て来ては菓子をモキュモキュしてる小動物だし…いや、あれは別にルナーティアの本体じゃないのか。

悠長に喋ってはいるが朱雀の猛攻は止まらない。

あ、頭蓋が砕けた。

音を上げて割れた頭部を見ていると、不意に骨の目が紫の光を帯びる。



「朱雀、警戒」


『ッ…!クハハハッ…ハハハッ。

見タゾ。男…貴様モ我ト同ジデハナイカ!』


「…同じだと?」


『ソウダ…我ガ目ハ生キル者ノ悪ヲ見ル。

貴様モ遠イ過去ニ多クの悪行ヲ成シテイルデハナイカ』


「むっ…?」



急に骨がなんか語り出した。

おかしいな、朱雀はこっちに来てPKをしてないはずだけど何か悪い事でもしたっけ?

もしかして密入国の事かな。



『多クノ者ヲ殺メタ貴様ガ何故奴ラニ組スル?』


「何を言っているのか分からないのだが…」


『謀ルカ。我ガ目ハ過去ヲ覗ク事モ可能ダ。

貴様ガココデハナイ場所デ行ッタ事モ見抜ク』



ここではない場所…もしかしてクロノスの事?

ああ、確かに思いっきり悪行成してるわ。だって年柄年中PKしてたんだ。

…ちょっと不味い予感がするんだけど。

絶対朱雀も今ので気付いただろうし。

おい待て、こっち見るな。



「…成程な、確かに某はかつて別の場所で悪行を成した。だが、そんな物は序の口だろう」


『序ノ口ダト?』


「ああ…見よ、我らが偉大なる首領の姿を。

お前のその眼でな」



骨の目がこちらを見る。

…紫に光る瞳孔が徐々に揺れ出し、何かを恐れるような目に変わる。



『…毒殺、刺殺、斬殺、絞殺、撲殺、圧殺、水殺、奇襲、誘拐、拷問、他者ヲ嗾ケ、魔物スラ嗾ケ…虐殺、大虐殺…供物、貴様ドレダケノ罪ヲ背負ッテイル…?』


「ちょっと記憶にないっすね」



おいやめろよ、急に俺を白羽の矢でぶち抜いてくるなよ。

見ろ、また爺さん達ドン引きしてるぞ。

こっちでは何もやってねえぞ。

…いやだってさ、プレイヤーって死んでも死なないから直ぐに向かってくるし日に100人とかざらに超えてたし。



「リクの小僧、お前さん…」


「リク様…」


「グルァ…」


「待って、俺は無実だから」


『馬鹿ヲ言ウナ、我ヨリ人ヲ殺メル者ガ無実ナ訳ガアルカ』


「朱雀、コイツの口を今すぐ塞げ」


「任せろ首領」



なんで俺はこの世界で過去の悪行を晒されねばならないのだろうか。

全く面倒くさい事をする骨だ。

調服したら絶対にこき使ってやる。



「まあほら、前世の出来事だから。

過去は過去…今は綺麗な俺だから」


「…まあ、儂も人の事は言えんからな」


「…そうですね、今のリク様はお優しい方です」


「グルァァ…」



好感度高くて良かったぁ。

何とか全員の了承を得た俺を他所に、どうやら骨の方は朱雀によって虫の息らしい。

すぐ傍まで歩いて行き、頭蓋に顔を近づける。



「それで、俺の配下になってくれるんだよね?」


『誰ガ…貴様ナゾノ…!』


「朱雀」


「ああ」


『グァァァ!』



頭蓋に再び兜割を入れる朱雀。

まだ随分と元気じゃないか、これならもう少し遊べる。



「俺の配下になってくれるかな?」


『フザケ…』


「朱雀、腕」


「『払魔断ち』」


『アガァァァァァァァ』



往生際の悪い骨の腕に朱雀がアビリティを入れる、ほぼ全身の腐食に加えてレベルはあと少しで上限。

簡単に一本目の腕を落とした朱雀に感心してしまう。

絶えず絶叫を上げる骨は痛覚があるらしい。

何故?



「答えは?」


『誰ガ』


「もう一本」


「『払魔断ち』」


「グアァ…ァァ…」



二本目の腕が落とされる。

もう断末魔を上げる暇もないらしい。

昔やっていたモンスターを仲間にするゲームも瀕死状態で捕まえるのが最適だったし。

ああ、状態異常も入れなきゃダメなんだっけ。



「朱雀、次はこれで胴体」


「それは首領の打った物か?」


「そうだよ」


「…良い物だな」



『森蛇の毒小剣』を手渡す。

俺じゃステータス差でダメージが入るか分からないしね。

渡された小剣で二度、三度と朱雀が斬りつける。



『ァァ…ァァ…ッ!』



麻痺が入った。良いね、その声。嫌いじゃない。

よくよく考えたら麻痺率50%って壊れてるよな毒小剣。


ビクビクと身を震わせる骨…身なんてないのか、にもう一度顔を近づける。

今度は笑顔のおまけ付きだ、喜べ。



「俺と契約して、配下になろうか」


『……分カッタ…配下ト…ナル…ナルカラ…モウ…ヤメテクレ…』



なんで被害者面してるのお前。

元はと言えば俺に憑りついて爺さんを倒そうとしてたくせに。

…まあテイムは使用しないけど。

俺のテイムモンスターに骨とか必要ないし、うちの可愛い子達のブランドに傷がつく。


骨が承諾の意思を示すと、アナウンスが鳴る。



《ユニークボス『飢餓なる者ムクロアダバナ』の調伏を確認しました》


《ユニーククエスト『飢餓』を達成しました》


《称号『ユニークハンター』を獲得しました》


《称号『飢餓の踏破者』を獲得しました》



専用の称号があるなんて、流石ユニークボス。

攻撃を朱雀に任せたせいだろう、経験値が入っていない。

まあ、ここまで来たらレベル1を貫くのも面白いかもしれないし問題はないかな。

横を見れば、骨の姿が徐々に薄くなっていく。

骨、お前…消えるのか?



「悪は去ったな!」


「最後はどっちが悪か分からなかったがな」


「首領、レベル上限に到達してしまった」



え、早くない?

大雑把な判定でこうなってるけど、罪状…もっとあるよ。

叩けば幾らでも出てくるよ、埃みたいに。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まっくろくろすけ… [一言] 首領ォ!www
[一言] ボスに攻撃して弱点付与しても経験値ゼロって、寄生防止のために一定値以下の貢献度足切とかしてるんかね
[良い点] ちょいちょい挟む小ネタが面白い(笑) [一言] とんでもねぇキューべーいたわwww
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