陣に戻りて
へいゲリラ更新。
クリスマス閑話書きたい欲滅茶苦茶あるんだけど、正直何も構想がない。
龍人達の本陣に戻ると、出迎える万雷の歓声。
ではなく、他の兵士も爺さん達も揃って俺を見て顔を引きつらせている。
なんだ、最良の選択を引きまくった男に対する反応かそれが。
「リクの小僧、やり過ぎだ」
「リク様、あれは流石に酷いと思います…」
「グルゥ…」
お前らも承諾した事に口出しをするんじゃない。
結果的には軍も引いて要人も確保しただろうが。
大事なのは手段じゃなくて結果だぞ。
「流石、迅速な仕事だ首領」
「お前らの頭を張ってるんだ。無体は晒せない」
《ちょっと嬉しいね【月見大福】》
《兄上マジックだな、効果は我らだけだが【†災星†】》
さて、今回の戦利品はと言えば龍人の軍に恐れをなしたのか俺の後ろに引っ付いている。
服を掴むな、服を。…いや待て、泣きそうになるな。
「まあ、これで一先ずは鬼人は手を出してこないだろう。そうだな、鬼王の末娘よ」
「…はい、アレは力はあっても臆病者なのです」
「カッカッカ、言い得て妙だな」
オニユリの言葉に笑い声をあげる爺さん。
余程琴線に触れたのか、膝を叩いて酒を飲んでる。
「あんな分かりやすい演技に引っかかるなんて、やっぱり鬼は馬鹿なのか?」
「短絡的なのは同意するのです。
でも、あれは不審者さんが悪いと思うのです。
一瞬だけ本気で殺す気だったのでしょう?」
「へぇ、良く分かったな」
クロノスでは、NPCを狩るのに面白味を感じなかったから手を出さなかっただけだ。
別に不殺を気取る気はない。
死んだら戻らないとはいえ、所詮ゲーム。
「だから、最後に聞いたのですよ」
「子供に手を出しはしねえよ」
死神と一緒にされちゃ困る。
アレは子供だろうが老人だろうが簡単にロストさせるが、流石にそこら辺の線引き位はする。
「信じるのですよ」
「仮にも誘拐犯だけど?」
「不審者さんは怖い人ですが、嘘はつかないような気がするのです」
どこかで信頼度稼いだっけ?
いや、誘拐して物みたいに持ち上げて運んだ位しか記憶にないわ。
「鬼の直感なのです」
「急なスピリチュアル」
《草【凱歌】》
《なんだかんだと、兄上は年下には優しいからな【†災星†】》
《誘拐はしましたけどもね【ハートの女王】》
《我らの首領に相応しい【軍師カンペイ】》
茶々を入れて来るコメントにツッコミを入れようとすると、急にオニユリが俺の服を強く引いてくる。
「…なに?」
「名前は、なんというのですか?」
「名前?」
「私だけ知られているのは気持ち悪いのです」
そんなもんかな。いや、そうかも。
俺も知らない奴に名前呼ばれたら反射的に切りたくなるし。
「リクだ。ただのリク」
「…分かったのです。不審者さん」
「呼び方変えません?」
「気が向いたら変えるのです」
「ああ、そう」
誘拐の張本人として、甘んじて受け入れるべきだろうか。
「それで、私はこれからどこへ連れていかれるのです?流石にここで寝ずの番は辛いのです」
「敵陣で寝床確保するとか図太すぎだろ。
爺さん、どっかコイツを置ける場所とかある?」
「お前さんが末娘を攫った時から準備してたぜ」
仕事が早い爺さんは好きだよ。
促された場所を見ると、確かに一つ即席のテントがある。
「ここから冬の街までは半日掛るのです。
不審者さんの脅しで彼らも手を出してこないでしょうし、今は兵を休ませて置く事を勧めるのですよ」
「お前、捕虜の身だよね?」
「何か本などがあれば読みたいのです」
「自由人か?」
「どうせあるのでしょう?寄越すのです不審者さん」
「随分懐かれていますねリク様」
俺に対してだけなんでそんな強気なのこの子。
なんか、手頃な本とかあったかな。
双子神の物語は…色々不味そうだし却下。
「月見大福、なんか良い本ある?」
《今送ったよ【月見大福】》
《兄上の考えを読んでおったな【†災星†】》
《流石、我らが副官【軍師カンペイ】》
《副官は私の席ですわよ?【ハートの女王】》
贈られてきたアイテムリストを表示すると、なんともジャンルがバラバラな大量の本。
これから好みそうな物を選ばせろと言う事か。
取り敢えず、片っ端から取り出しオニユリの前に積んでいく。
「宝の山なのです!」
月見大福と同じ事言ってるよこの子。成程、お仲間の本の虫だったか。
書物の山を見てキラキラした目をするオニユリに一冊本を持って来る。
受け取ろうとしたのか伸びて来る手を避ける。
パシッ、ヒョイ、パシッ、ヒョイ。
「…そろそろ怒るのですよ不審者さん」
「いや、面白いなぁって…」
何かネコと遊んでる感覚。
持っていた本を手渡すと凄まじいスピードで引っ手繰られ頁を捲っている。
「ここで読むなよ」
「・・・・・・・・・・・・・(ぺらぺら)」
「…聞いてない」
「運んでやれ、リクの小僧」
俺が運ばなきゃダメなの、これ。
朱雀やハルカの方を見ても黙って頷かれるだけ。
桜玉は…爺さんと遊んでやがる。
仕方ない。
他の本をアイテムボックスに仕舞い、オニユリを持ち上げようとする。
「俵持ちは止めるのですよ、不審者さん」
「お前普通に聞こえてるじゃねえか!」
このチビ。本を読んでるから背負う訳にもいかず、小さな体を持ち上げる。
《首領の、お姫様だっこ…【BB】》
《首領助けて!ビビちゃんの目が据わってる!【桜吹雪鱈】》
《八千代は経験済みだったりする!【八千代】》
《お嬢、火に油を注がねえでくだせぇ!【蛮刀斎】》
《ついでに我もだ【†災星†】》
混沌としたコメント欄を見ないふりして、指定されたテントへ運ぶ。
「羅刹丸、一応見張り頼んだ」
「御意にござる」
影から手を伸ばしオニユリの影を触る羅刹丸。
こういう時、本当にコイツ便利だよな。