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神の種類

ただいま。

予想以上にハッスルし過ぎて気づけば早三日。

色違い厳選のせいでストックが書けない。

八千代との手合わせを終えて、俺は鍛冶場に来た。

剣系統の派生スキルは既に上限に達したので、現在は他の武器で派生スキルのレベル上げ。

槍や斧、暗器などの元からあった武器種を始めアルテマに移行した事で更に種類を増やしたらしい。

それにしても、一体いつになったら鍛冶スキルも進化するのか。

クロノスではレベルを上げればすぐに取得出来たと掲示板に書かれているが、現状上級スキルを獲得した者の情報はない。

無造作に置いた武器の山を見ながら黄昏ていると。



「おい坊主、あの食い物くれよ!」


「己は野良犬かバルカン」


「神に向かってなんつう事言うんだお前」



鍛冶場の窓を閉め切ったと同時に姿を現した憐れな神の姿に俺は辟易する。

いやだって、また出て来るとは思わないし。

果実パイまだ在庫あったっけ…あったわ。



「ほらよ」


「うぉぉぉ、これだよこれ!」



俺から皿を受け取ったバルカンは仰々しい手つきで受け取りフォークを突き刺した。どっちが神なのか分からねえな、おい。

刃狼があの武器で活躍してなきゃ今頃叩き出してるぞ。



「で、要件ってそれだけ?」


「これが本命ではあるんだがな。坊主、お前面白い武器打ったな」


「面白い武器?」


「蛇の毒を沁み込ませた剣だよ」



ああ、毒小剣。でも、あんなの既に思いついてる鍛冶師もいるだろう。



「思いつく人間はそりゃいるだろうがな。それをやった所で、鈍らが一本増えるだけだ」


「そうなの?」


「言っただろう。武器を打つのに必要なのは想いの強さだって。お前がアレを打った時、随分楽しそうに打ってたじゃねえか」



まるで見てたかの様に言うな。

まあ、楽しかったのは否定しないけど。途中からどんな剣が出来るかワクワクしてたし。



「異邦の鍛冶師共だがな、ありゃダメだ。

中には筋が良いのも居るがどいつもこいつも惰性で打ってやがる。

それじゃあ、良い武器ってのは仕上がらねえ」



惰性、まあゲームだから作業効率を重視するのは理解出来るけどね。

…そういえば、あの風狼のナイフを打ったチェシャ猫女史はコイツの言う筋が良い鍛冶師なんだろうか。

本人は武器にならないってぼやいてたけど。



「だから、お前みたいに楽しみながら打つヤツが俺は好きなのさ」


「過分な栄誉だな。一応神だし」


「一応を付けるな、正真正銘の神だぞ?」



果実パイを名残惜しそうにに一口一口食べるコイツをどうやって神と見れば良いのか。

いや、それを言ったらルナーティアも同じか。

アイツの場合もためかして食べてるけど。



「それにお前、聖国を目指してるんだろう?」


「俺と言うか仲間達だけどな」


「どっちでも同じことだ。俺からしたら異邦人なんざどれもこれも変わらねえ」


「聖国がなんか関係あるの?」



そう聞くと、バルカンはフォークを止めて俺を見て笑う。先程までの人好きのする顔ではない、正しく神が人に向けるような顔。



「神ってのは気に入ったヤツを贔屓するもんだからな。聖国に着いたらとっておきの贈り物をしてやるよ」


「凄い嫌な予感しかしないんだけど」


「もう決めちまったんだから拒否は出来ねえよ。

それよかもう一皿くれ」


「よくそれでもう一皿強請れるな」



渡された皿を回収し、仕方ないともう一枚出す。



「ここじゃねえと他の連中から隠れて食わないといけねえから面倒なんだよ」


「神様に自分の部屋はないのか…」


「神殿はあるが、俺達は基本住む場所を持たねえからな」


「…ホームレス」


「おい、不敬だぞ坊主」



ホームレスって単語、こっちの世界にもあるんだ。

あれ、なんか前にもこんなやり取りしたような。パイを美味そうに食べるバルカンを見ていると、一つ聞きたかった事を思い出す。



「なあ、神と亜神って何か違うの?」


「んぁ…ああ、そういやお前さん。

アマツミの眷属に逢ったんだったか」


「アマツミ?」


「ほれ、あれだ。こっちだと海姫だったか?」


「そう、それについて聞きたかった」



バルカンが首を捻り何かを考えている。

良い説明でも思い浮かばないのだろうか、俺は紅茶を取り出し一息入れる。



「亜神ってのはアレだ、地上の生物が神の因子を体内に宿して力を得た存在…で良いのか?

あの小娘が取り込んだのは水神の力だからな、海とは合うんだろう」


「聞いておいてなんだけど、凄い会いたくない」


「一端とは言え神の力だ。異邦人でもあの小娘に手を出すことは出来ねえだろうよ」



プレイヤーでも簡単に倒せないNPC。

凄く、厄ネタ臭がする…。



「この情報って、俺の仲間に流しても良いヤツ?」


「やめとけ。天の裁きを食らうぞ」


「なにそれ?」


「神から与えられた情報ってのは、易々と他の人間に伝えない方が良いって事だ。

もう一人の姉貴が上で見張ってやがるからな」


「ああ、太陽の」


「おうよ、あっちの姉貴を怒らせるのは怖いからな。

あまり他言はしない方が良いぜ」


「…でも俺。ルナーティアから聞いた話を他の仲間に言ったような気がするんだけど」


「ルナーティア様は別だ。あの方は太陽の姉貴の埒外にいるからな」



目を伏せるバルカン。双子神は別枠なのか。



「自分で見て、感じた事を言う分には寛容だが俺が言った事をそのまま流すんじゃねえぞ」


「了解。俺も、その天の裁きは受けたくないからな」



これ、ゲームの中じゃなくてリアルで伝えればどうなるんだろう。

そんな事を考えていると、二皿目を食べ終わったバルカンが立ち上がる。



「それじゃあ俺はもう行くぜ坊主。聖国に着くのを楽しみに見てる」


「やっぱりお前も覗き見してるんじゃねえか」


「そりゃあ、神は暇なんだよ」



じゃあなと告げたバルカンは以前の様に姿を消した。

さて、またいらない事を抱え込んでしまったような気がするけどどうするか。

まあ、龍魚にあった事を伝える位で良いか。



「よし、鍛冶しよ」



考え事を一先ずぶん投げて炉に火を付ける。

…やらなきゃダメかな、謝罪配信。

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