陽気な昼下がり
凄くしょうもない話になるんですが、明日から更新が二、三日位止まります。
ちょっとポケモンの為にネットから離れなきゃないので。ストーリー終わらせたら再開。
全ては私に休みを与えなかった仕事のせいです。
今日は陽気な昼下がり。
「それじゃあ行くよ、リッくん!」
「…なぁんでこうなったかなぁ」
場所は天空島の闘技場モドキ。
暇だから鍛冶でもするかと鍛冶場まで向かっていたら、八千代達と遭遇した。
そこまでは良かったのだが、最近は風精やらメルヴァ前のボスモンスター『人食い土竜』やらとの戦闘続きで、八千代が人との戦いに飢えていた。
HaYaSE達も必死になって止めたが俺を引く八千代のSTRに敵わずあれよあれよと闘技場前。
目の前では刀の鞘に手を置き、いつでも始められるような八千代が目を輝かせている。
「お前ら、もっと必死に止めろよ…」
「最近のお嬢の目に負けて…」
「まあまあ、八千代も首領の為に頑張ってるんだぜぇ?たまには遊びに付き合ってやれよぉ」
「そうだよボス。女の子の我儘に付き合ってあげるのが男の役目でしょ~?」
申し訳なさそうにしてるの蛮刀斎だけじゃねえか。
だが、確かにここ最近の八千代の活躍は聞いている。
男の役目云々は許容できないが、まあ良いか。
アイテムボックスから二本の直剣を取り出し左右の腰に掛ける。
右から一本引き抜き垂らす。
「わぁ、ちゃんとやってくれるんだ!」
「お前ら相手に手を抜く事なんてねえよ」
「それじゃあ行くよリッくん!」
八千代が跳ねる。
コイツも俺と同じ高速アタッカーだ。
STRとAGIにポイントを振ってるのだろう、レベル差がある分流石に早い。
「てやぁ!」
「まだ見えてるぞ八千代」
直前、下から迫る斬撃を避けて跳ぶ。
速度はあるが新月のように姿が消える訳ではない。
迫る二撃に合わせ持ち手を回し、構える。
「『月歩』『新月』」
姿を暗まし、難なく二撃目を横に躱した俺が狙うは八千代の後ろ。
がら空きの首を狙い一閃。
防がれる。
体を回転させ、剣を自身の刀で流す八千代。
そのまま舞う様に斬撃、斬撃、斬撃。
「流石に、隠者が欲しい」
「見えてるなら八千代の首は取れないよリッくん」
避ける度に少しずつ傷が増えていく。
紙一重、ほんの少しでもタイミングがずれたら俺が斬られて終わりなんだよ。
そもそも八千代はダメージ頭の前衛。俺は後ろから首を取るしか能のない一発屋。
なんで俺と戦いたがるのか分からない。
再び開いた距離。八千代が動こうとする前に。
「『新月』」
一歩、彼女に迫る。
剣を構えて全力で上段から斬りつける。俺の剣を弾く八千代だが、そこ隙だらけだぞ。
左手でもう一本の小剣を抜き横に薙ぐ。八千代の頬を剣が掠める。
「…ッ」
「もう一発」
小剣を避けた瞬間にお留守になった右の剣で突く。
ーーやっぱり躱されるよなぁ。
でもさ、そこで後ろに避けるのはダメだって昔言ったじゃん。
左の小剣を眼前に投げつけ、八千代が弾く。
俺の勝ちだ。
「八千代、今何秒経った?」
「え?…ッこれ!」
「『月歩』『新月』」
答えは10秒。麻痺って少し時間が掛るんだよ。
フォレストスネークみたいに特殊ギミックだったら直ぐなんだけど、俺の小剣みたいな状態異常は少しラグが生じる。
デバフ、状態異常は月見大福やハートの女王の十八番だからそこら辺の認識が甘かったな。
一瞬だけ硬直した八千代の首に剣を滑らせる。
終わり。
「お前らが送ってきた森蛇の毒液だよ」
「いつ使ったの!?」
「この小剣。
俺が打ったヤツなんだけど、普通の剣に毒塗って打ったらどうなるか試した」
『森蛇の毒小剣』
フォレストスネークの毒を丹念に塗り込み打たれた片手剣。作り手の悪意を感じる。
:STR+20
:攻撃命中時、50%の確率で『麻痺』を付与。
STRは低め。だが、二分の一は実質100%
これで外してたら凄く恥ずかしかったが、当たってくれて良かった。
武器のテキストに軽くディスられてるような気がするけどきっと気のせいだろう。
刀から手を離す八千代を見て、俺も剣を鞘に収める。
「そんなの使ってくるなんて思わないじゃん!」
「手を抜かないって言ったじゃん」
「じゃあ右の剣も何か仕込んでたの?」
「いや、これはただの剣」
腰から剣を外し、麻痺が切れた八千代に渡す。
使う事はないだろうに、セイちゃんが度々送ってくるSTRがちょっと高い剣。
俺が鍛冶に手を出してからは少なくなったが、それでもアイテムボックスに100本位溜まっている。
「それで、満足した?」
「少しスッキリした!またやろうねリッくん!」
「またかぁ…」
今はあんまり戦いたい訳じゃないんだけどな。
それに、八千代相手だとアレを使わないとジリ貧で俺負けちゃうし。
「で、お前らは何やってんの」
「お嬢と首領の雄姿を動画に収めてやした」
「割と人外同士の戦いってやらねえじゃん?」
「てかボス、なんでレベル1なのに八千代とやりあえちゃってんの?」
「経験と、勘かな」
山で暮らしてたらなんとなく動きが目で追えるようになるんだよ。
あの爺さんは心眼とか言ってたっけ。
そして予備動作。
完全な自慢ではあるが、俺は仲間達の動きの癖も動き方も全て理解している。どこを攻めれば隙を見せるか、どうやって気を逸らせば食いつくか。
あとはまあ、個人の好みと誕生日位かな。
「首領の逢った爺さんって本当になんなんだぁ?」
「ただの山籠もりしてた爺さんだよ」
素手で熊張り倒してたけど。
あれ、本当に人間だったのかな。
「それじゃあ、俺はもう行っていい?」
「うん、リッくんありがとね!」
「頑張ってくだせぇ」
仲間達に見送られ闘技場を出る。どうやら、この後もアイツらは少し手合わせをしてから戻るようだ。
全くどこまでも戦闘狂な集団だな、なんでここまで攻撃的なクランになったのか…大体俺のせいかな。
闘技場から出た俺は不意に右手を開く。
「大分鈍ってるな」
アルテマに変わり、もう2カ月。
最近は移動以外であまり体を動かしていなかった事の弊害だ。
もう使う事はないと思ってたけど、こうして実感すると少し寂しい。
「八千代達に頼んでまたやるか」
そう一人呟き、鍛冶場に向かうのだった。
戦闘描写マジで苦手。