茶会と情報
話を進めたいのに死神戦が終わらない地獄、なんで私コイツ出しちゃったんだろ。
なまじ強設定盛ったのが悪いな、これ。
某運命のゲームのクリスマス配布がシルエット公開されました。
私はサンタ蘆屋オルタリリィだと思います、異論は認める。
「海姫様ですか…存じておりますよ」
竿を回収し街まで戻ってきたらハルカと桜玉に遭遇した。
先程の出来事を軽く説明すると、どうやら何か情報がある様子。
「海姫様は、アズマでも縁深き御方です。
海の調停と秩序を守り、常に海の底より我らを見守る海の守護神。オウカの街でも、時たま魚人族が訪れ商いを行っています」
「え、神なの?」
「緋桜龍様は亜神と仰られていました。
一度オウカの祝典にいらっしゃった際ご挨拶させて頂きましたが、慈悲に溢れたお優しい方です」
「亜神ねぇ…」
バルカンは自分を神と言っていたし、亜神は別物なんだろうか。
「そういえば、龍魚っていうのは龍と関係のあるモノなの?」
「我ら龍人と似たような者です。
海姫様の傍に侍る海龍様が力を与えた魚達の事だったかと」
「滅茶苦茶詳しいな」
「かつては緋桜龍様の傍仕えでしたので、あまり出回らない書物を読む機会が多かったのです」
ハルカさん有能過ぎないか。
これ、月見大福に言ったら凄い問いただされるぞ。
「ですが、まさかこの島に龍魚が訪れるとは…」
「その海姫は水場と水場を繋げられるらしい」
「…元々魔力の豊富なあの湖は水に住む者には楽園のような物なのでしょう。
そして、桜玉の力により龍の気を感じ取ったのかもしれませんね」
「グルァァ」
「お前は本当に何者なの?」
「?リク様と桜玉のお世話役ですが…」
違う、そうじゃない。
まあそんな如何にも強そうな姫様と事を構えず済んだことを今は喜ぶべきか。集団戦は何度もやったが、流石に水中だと勝手が違い過ぎる。
「此度は、無許可で人の領地に入ったその龍魚に非があります。
リク様はどっしりと構えていましょう」
「そうするわ…」
凄い、NPCなのに滅茶苦茶説得力がある。
ハルカの思わぬ有能振りに驚きしかない。
本当に爺さんはこんな人財こっちに寄越してよかったの?
「そうですリク様。メルティ殿がお茶菓子を焼いてくれたのです。ご一緒にいかがですか?」
「…いいね、こういう時は甘い物が食べたい」
「それでは参りましょう!」
「分かった…ん、ちょっと待ってくれ」
どうやらメッセージが届いている。
送り主は、月見大福か。
『聖国の一つ目の街に着いたよ』
一つ目の街、名前は『祈りの都メルヴァ』
セイちゃんがそろそろ着くと言っていたから来るとは思っていたが、早いなぁ。
添付された街のスクショに目を通すと、長閑な田舎町のような見た目。
『少し街を探索したら次は聖国だよ』
追加のメッセージ。
長居をするつもりはないらしい。仲間達がそれぞれピースをするスクショも添付される。
楽しそうだな、おい。
俺もそろそろレベル上げた方が良いかな。
「リク様?」
「いや、なんでもない。
ちょっと仲間が新しい街を見つけたみたいだ」
「流石はリク様の配下の方々ですね」
「グルゥゥ!」
配下じゃないけどね。なんで他のNPCは俺の仲間達を配下だと思ってるんだろう。
何度か訂正したけど流されてる気がする。
「それじゃあ、行こうか」
「はい。なんでも今日はけーきなるものを作って頂いたとか!」
「ケーキ?また随分凝った物を…」
「異国の甘味、とても楽しみです!」
「前にカップケーキ食べてなかったっけ?」
「それはそれ、これはこれです」
この世界でもその言葉あるのか。鼻歌を歌い前を歩くハルカと桜玉を見ながら俺も続くのだった。
☆
「あら、リーダーも来たのね!」
「お邪魔するよ」
最近メルティは個人調理室とこの島をよく行き来している。なんでも、今までは自分のアバター故にお客さんの声を生で聞けてなかったが、ここなら八千代達が良く食べるので感想を言ってくれるとか。
「これが、けーきですか!」
「凄いな。リアルのケーキ屋で見るようなヤツだ」
「ケーキは良く作ってたんだけど、リーダー達が集めてくれた桜を混ぜてみたの」
「感激です!」
ハルカが珍しくキラキラした目をしてる。
龍桜の使われた異国の甘味が余程嬉しかったらしい。
「この桜、元が少し甘いから砂糖漬けにすると美味しいのよね」
「そういえば、あっちの桜餅とかもあんまり甘味料を使わずに作られてたっけ…」
「リク様!」
お預け食らった犬のようにケーキに手を付けないハルカ。別に好きに食べてもいいんだよ?
「それじゃあ頂きます」
「美味しいです!」
早い。
俺が喋った直後に既に食べてる。
嬉しそうに食べている様子を見て、俺も一口。
「なんか、優しい味だ」
「桜の良さを出す為に少し砂糖は抑えめにしてみたの」
「グルグル…」
桜玉も顔をクリームで汚しながら食べてる。
気に入られたみたいで良かったなメルティ。
「そういえば、もう調理スキルはレベル10になったんだっけ?」
「ええ、今は派生スキルのレベル上げをしてるわ」
「上位スキルは未だ見ずか…」
「その分派生が多いからじゃないかしら。私はお菓子系しか上げてないのだけど」
「そういうものか」
ケーキを食べながらメルティと情報交換。調理スキル、俺も仲間達の弁当作りに良く使ってるから10まで行ったけど、派生スキルしか出なかった。
最近はおにぎりのリクエストが多いから『調理【手料理】』が増えたよ。
手料理って、料理方法なのね。
てっきり上位調理か調理魔術とかが増えると思ってたから肩透かしな気分。
「バフが付いた料理って、結局果実パイだけだしな」
「あれは少し特殊過ぎるわよ」
「ご馳走様でした!」
「グルゥ!」
「あら、お口に合ったようで良かったわ」
ハルカと桜玉はもう食べ終わったらしい。
皿を下げるメルティ…なんで男に母性を感じるんだろうな。不思議だ。
横を見れば、二人が俺の方…というか皿を見てる。
そういえばまだ一口しか食べてなかった。
「まだ入るのか」
「い、いえ!私はもう大丈夫です!」
「おかわりもあるわよ?」
「頂きます!」
「グルゥ」
変わり身速いなお前。
桜玉は俺に巻き付き顔を寄せて来る。ああ、俺が食わせろって事ね。
「ほらよ」
「グルルッ」
「はいハルカさん、一杯食べてね!」
「ありがとうございます!」
代わりの皿を渡され喜ぶハルカに、自分の菓子を嬉しそうに食べる様を見て喜ぶメルティ。
海姫だなんだと、色々あったが。
「平和でなによりだ」
派生スキルの手料理ね…私の愛するルーンファクトリーが元だよ。
今更思ったけど、私がやった事あるほのぼの系ってルンファクとスカイリムとAC6しかない気がする。もう駄目かスローライフほのぼの物書き、コーラルに頭突っ込んで来ようかな。