鍛冶場の男
上杉謙信20連で優勝、これまでの爆死の清算来てます。
アイギスは60でへリューズ。
死神のせいで最近戦闘描写しか書いてない気がする。
四章は絶対のんびりライフするんだ…。
せんとうむり、あたまつかうのつかれた。
「…まさかプレイヤーも住民に含まれるとはなぁ」
「ミューン」
翠玉の体を枕にして平原で寝転がる俺。
ウインドウを出し、マイルームの詳細を開くと現在の住民数が28人となっている。
ハルカと桜玉を連れてきて5人。
NPCは島に来訪すれば良いらしいが、プレイヤーはセーブ登録をする事で住民にカウントされるようだ。
朱雀はいつの間に登録したんだろう。
開拓レベルの上昇は20人になった際に一度起こった。
アップデートは一先ず白玉の元居住エリアだった神獣域を選択。
もう一度街をアプデしようと思ったら、出て来なかったから消去法である。パッと見変わった所は無かったが白玉がとても嬉しそうに俺に顔を擦り付けてきていた。
「アルファシア、どんな状況なんだろうな」
「ミュミュミュ」
アルトメルンは街門が完全封鎖されたみたいだし、状況が分からない。
アイテムボックスからメルティ作カップケーキを取り出して、翠玉に与える。
昨日少し余った物を翠玉用にコッソリ貰っといた。
白玉と桜玉は、専属の餌付け役が与えていたがコイツはあの場にいなかったからな。
モキュモキュと食べる翠玉の頭を撫でながら、攻略掲示板を覗いてみると、早くもあいつ等の話題で持ち切りだ。
曰く夜叉が刀を振りまわしていたとか、全員が見た事もない防具を付けていたとか。
防具は少し前からゴドーに頼み加工して貰っていたアズマの素材を豪勢に使った一品。
ずるいだなんだ言ってる輩は、もしかして新規さんかな?ここの運営は梃子でも動かねえぞ。
「防具は良いとして、やっぱり武器だよなぁ」
「ミュー?」
武器の耐久値を回復させるだけならゴドーに任せればいいが、新素材などを安心して任せられる鍛冶師がうちにはいない。
最近は鉱石も送られて来るし、余りに余った素材を消費する事も考えれば。
「打つか」
鍛冶をやってみよう。丁度今はゴドーもログインしていないから鍛冶場が開いてる。
思い立ったが吉日、翠玉を連れだって俺は街に帰る事にした。
鍛冶場に到着。
さて、ポイント使って『鍛冶』を取るか。それとも軽く自分の赴くままに打ってみるか。
スキルポイントも残り4しかないから無駄には出来ないんだよな。
「…まあ取るか」
初めての事をやるなら手順って大事だろうし、ラストエリクサーし過ぎて余らせてもあれだ。
ついでに翠玉は外で日向ぼっこしている。どうにも鍛冶場、というか火を扱う場所が苦手のようだ。
アイテムボックスから、一番多く在庫のある『鉄鉱石』を取り出す。
基本的な道具はゴドーが置いていってるのでそれを借りよう。
「さて、従来の鍛冶ってのはどうやるのかね」
おっと、手順が出てきた。
炉に魔石で火を炊き、水の入ったバケツを用意。
鉱石を鉄ばさみで掴んで火で熱して…。
「槌はこれで、水はここに…鉱石は、こんな感じ」
パタパタと事前準備を挟みつつも、時は流れて打ち入れである。
言葉にすると単純に見えるが準備は大事。かなり時間をかけてしまった。
「それじゃあ、一本目」
槌を鉱石に打ち付ける、カンカンキンキンと鉄のぶつかる音。
どうやらSTRは関係ないようで、何合か打ち合わせれば鉱石の形が変わっていく。
カンッ!
カンッ!
カンッ!
バキンッ!
あ、やっちまった。
力加減を間違えたらしい、まずは薄くする過程と力任せに槌を振るっていたら真っ二つに砕けてしまった。
「もう一回」
鉄鉱石はまだ200個近くあるし、なんなら他の鉱石だってある。
失敗は仕方ないから次に繋げよう。再び鉱石を熱していざ勝負。
カンッ、カンッ、カンッ、バキンッ。
次。
カンッ、カンッ、バキンッ。
次。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ、カンッ。
良い調子だ。
バキンッ。
次。
鉄を打つ度に少しずつ馴染んできてるような気がする。一つ、二つとドンドン鉱石が消費されているが、明日は休みでまだ時間もあるし何とかなるはず。
さて次の鉱石を取り出して無言のまま槌を振り続けるのだった。
☆
「…今、何時?」
「キュキュウ」
一体何個目かの鉱石を打ち終え外に出ると、既に真っ暗。熱が逃げないように殆ど密封状態だったから全然気づかなかった。
扉の前には白玉が立っており、その横には大量のお菓子の山。
どうやら、俺が鍛冶場に籠ってる事を察した連中が差し入れを置いて行ってくれたようだ。
時間は…朝の4時を超えている。俺が鍛冶場に入ったのが昼の12時位だから、軽く10時間は過ぎてる。集中し出すと時間を忘れるのは俺の悪い癖だな。
置かれたお菓子から軽く摘まめそうなのを何個か手に取り、一つを白玉に渡す。
無心になって鉄を打ちつけている内に、どうにか剣を作れるようになっていた。
後ろの方に無造作に積まれた不細工な直剣がその証拠だろう。
鉄鉱石の在庫がなくなってたから、多分無意識に他の鉱石出して打ってたな。ちょこちょこと色の違う物があるし。
『鍛冶』のレベルは6か。『銀月の祝福』で経験値が増えるとはいえ一日でここまで上がるとは思わなかった。
「もう一回入るか」
「キュキュ!?」
「仕方ないだろ。結構楽しくなってきちゃったんだから」
心を研ぎ澄ませ、ただ一つの鉄を打つ。
PKの頃の感覚を思い出すようだ、これは楽しい。
「それじゃ白玉、行ってくるわ」
「キュキュ~」
呆れた様子で俺に手を振る白玉を一瞥して扉を閉じる。
さて、今さっき打ってた鉱石は『イデアル鉱石』か。なら、今度は朱雀が送って来てたアズマの方でやってみよう。
アイテムボックスから幾つかの鉱石を取り出し、槌を構え再び集中して鉱石を…。
「全然なってねえぞ、坊主」
「…ッ!」
聞きなれない声に反応し、反射的に近くに転がっていた直剣を横に振るう。
「うぉ、あぶねえじゃねえか!」
男が立っている。すぐ後ろに赤い髪をした上半身裸の男が突っ立っている。
俺の横薙ぎを間一髪で避けたのか汗を垂らして俺も見る。
誰だろう、知らない人だ。
「どちら様?」
「なんで何事もなかったように声掛けれるんだよ、その剣置けって…」
引いたような赤髪の声を聞きながら、観察する。
赤…いやもっと深い色だな。少し黒が混じった感じの暗い色。
源氏小僧よりもデカい。朱雀と並ぶ位か。
俺より二回り程ある図体でまるで不審者を落ち着かせるような事を言ってる。
手に持った直剣を投げ捨て、男に再び問いかける。
「それで、どちら様?」
「その態度は継続なのな…」
疲れたような顔をする男と変わらず睨み付ける俺。
なんで不審者に呆れられなきゃならないんだろう。
「…ゴホン。それじゃあ自己紹介だ」
「・・・・・・・・」
「俺はバルカン。火と鋼、鍛冶の神バルカン」
「…神を名乗る不審者はこれで二度目だ」
「一回あった事あるのかよ!?」
あれは多分本物の神だと思うけどさ。得体が知れなかったし。
というか、なんで俺のマイルームに自称神様が来るんだろう。
白玉しかり翠玉しかり、ここは人間と動物が仲良く暮らす森じゃないんだけど。ようこそも集まれもしてねえぞ。
いや、そういえばルナーティアもここを見つける神が居るかもしれないって言ってたっけ。
「で、そのバルカンさんが俺に何の用?」
「ぶっきらぼうなヤツだなぁ、姉貴の眷属に接してた坊主はどこに行ったんだよ」
「生憎と初対面の相手に掛けてやる慈悲は持ち合わせて…姉貴?」
「おう、ここは姉貴の島だろう。俺は姉上から生まれた存在だから分かるんだ」
「…その姉貴の名前は?」
「ルナーティア様だ」
前言撤回、コイツ神だわ。