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【閑話】道化追想・星に引かれた少女2

死神をしばき倒す算段を練りながら閑話を書いているカフェイン常飲者がいるらしい。

レッドブルとコーヒーと炭酸水しか愛せない。

次誰の追想書こう。

「蛮刀斎、ヘイトお願い!」


「任せてくだせぇ!」



チュートリアルを難なく熟し、私達は着々と強くなっていった。巨大な熊や毒を持つ蜂の群れと戦い、今では最前線と呼ばれる者達に数えられるほどに。

戦場の風はどうやら私達には合うらしい、並み居る敵を薙ぎ倒しレベルを上げて装備を整え再び挑む。


絶え間なく続く戦いは今では余裕すら生まれ私達二人は縦横無尽に戦場を駆け回った。

蛮刀斎が言っていた、私にも仇名が付いたらしい。


『夜叉』


どんな敵を相手にしてもどんな攻撃を受けても避け続け敵を屠る事からその名らしい。

蛮刀斎が自分の事のように喜んでいたので私も嬉しくなるが、何故彼女には付かないのだろう。

良い名前はいっぱいあるじゃないか、不沈艦とかかっこよくない?


私がそう言ったら、何故か蛮刀斎は首を強く横に振っていた。どうも恥ずかしいらしい。

カッコいいのになぁ。



「蛮刀斎、次はどれにする?」


「ここいらのモンスターは結構狩り尽くしちまいやしたからねぇ」



剣を腰に戻しながら彼女に語り掛けると、ウインドウを開きながら頭を唸らせている。

ゲームを始めて早三カ月程だろう、私達は殆どの狩場を行き尽くした。


私がこの世界にのめり込みはしゃぎすぎてしまった。


レベルも既に100を超えてしまい、そろそろレベルキャップに到達してしまう。

アイテムボックスから好みのお菓子を取り出し、食べながら彼女の反応を待つ事しばしば。

…ふと何かの声が聞こえた。



「今のって」


「悲鳴でやすね」



聞こえた方角からして結構近いだろう事が伺える。



「どうする?」


「行ってみやしょう」



素早く身を翻し、悲鳴の方へと走り出す蛮刀斎。

正義感の強い彼女の事だ、きっとモンスターに苦戦する誰かの助太刀でもしようと考えてるのだろう。

仕方ないかと私も走り出し並走する。



「あれって、ビルダーベア?」


「なんでこんな所に…」



巨大な体躯に、鋭い爪。

人二人分程の大きさのソレは、もう少し先のエリア…不倒の断地で出現するレアモンスターのはず。

熊と戦うプレイヤー達は疲れを滲ませているのか足取りがたどたどしい。



「加勢する?」


「お嬢が良いのなら…」



そういってはいるが、彼女の目は参加する気しかない様子。小さく溜息を付きながら私は剣を構えて熊へと駆ける。



「助太刀するよ!」


「助かります!」



熊の体の横を通り斬撃を浴びせていく。

斬って、避けての繰り返しはいつもと同じだ。

振り下ろされる右腕を紙一重で避けながら、更に速度を増していく。



「蛮刀斎!」


「変わりやす!」



ヘイトを受け持ち過ぎたので蛮刀斎と前線を交代し、私は攻めに徹する。

レアエネミーとは言ってもボスではない。

複数人で攻撃を与え続ければこと切れるのも時間の問題。



「『ツインスラッシュ』」


「『アタックカウンター』」



振り下ろしの腕や突進は蛮刀斎が弾き、カウンターにより怯みが生じる。

何度もビルダーベアを狩った事があるせいだろう、慣れ親しんだ単調な攻撃モーションを見ながら隙を付いて斬り続ける。



「『アイス・バレット』」



後衛の青魔術を受け、熊がその巨体を後ろに倒す。私達の勝ちだ。

剣を鞘に仕舞い一息つく。



「本当に助かりました!

アイテムも尽きてたのでどうしようかと思ってて…」


「無事で何よりでやす」


「あ、もしかして夜叉さんのパーティですか!?」



どうやら蛮刀斎の方は話し込んでいるらしい。


私はああいうのは苦手だから素直に凄いと思う。

話に花を咲かせる彼らの姿を見ながら近くの木に寄り掛かろうとした。

その時、影が見えた。



「え?」


「まさか、こんな所で獲物が釣れるなんてな」


「蛮刀…っ!」



不意に聞こえた声と気配に剣を抜き放ったと同時、さっきまで蛮刀斎と話していたプレイヤーの首が落ちた。

その後ろに、いる。

黒い外套に身を包む一人の男とその周りを囲む数人の影。

左腕には笑う道化の腕章があり、それはかつて蛮刀斎から聞いたある集団の象徴。


ーークレイジー・キラークラウン


道化を名乗る神出鬼没のPKクラン。



「本当は、暇つぶしに熟練狩りでもしようかと思ってビルダーベアを誘い出したんだけど。

こんな所でお目に掛かれるなんて光栄だよ、夜叉」



大仰に動き、芝居がかったように語る男の目は一心に私を見ている。



「あれ、予想以上に小さくない?

ちょっと手を出しずらい…」



一瞬だけ、素に戻ったような口調。

私を見ながら首を傾げ、一度咳払いをして話を再開する男。



「まあ、いいや。

今日は良い日だな、たまには気の向くままに行動してみるものだよ」


「テメェ…ハヤトを!」


「朱雀、これ邪魔」


「承知した」



ただの一言だ。


彼の横に立つ大男がまるで羽虫を払う様に他のプレイヤーを淡々と狩っていく。

些細な時間…それなのに私は動けず、私と蛮刀斎の二人だけしか残らなかった。



「さて、それじゃあ可愛らしいお嬢さん」



男の顔がニタリと笑う。



「狩りの時間だ」



これが私の始まり。チュートリアルの終わり。

私と蛮刀斎が道化の一員となるまでの僅かだが、濃密な死の一時。


道化の狩りが始まる。

この頃の首領は口数は多いし、イキり倒してる。

遅咲きの中二病って厄介だよね。私も古傷が痛むわ。

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[一言] _:( _ ́ཫ`):_ やめ…やめt…(血文字はここで途切れている) ꜀(。௰。 ꜆)꜄
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