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旅の終わりはいつも華やかに

※本作はほのぼの系です、私を信じて?

賽は投げられた。


あの後は、特に滞りもなく配信をしながら疑似的に皆とオウカの観光を楽しんだ。


羅刹丸がハルカに忍者衣装が欲しいと言って呉服屋に行き、中々良い値段のする衣装を買ったり。皆へのお土産何が良いかなぁと選んで、結局華団子と桜餅を大量に購入したり。

爺さんが一番初めに咲かせたと言う千年桜を見に行ったりとオウカを満喫した。

今度は皆で来たいな。



「リクの小僧。オウカは楽しめたか?」


「良い街だったよ。色々あったけど来て良かった」


「ソイツは何よりだ、この街は儂の宝だからな」



俺は現在爺さんと酒を飲みながら歓談に興じている。

八千代達はオウカ郊外のフィールドに狩りに行ってしまったので、今は俺と桜玉、襖の近くに居るハルカだけである。

爺さんから渡された盃は最初の物よりも小さく、俺に丁度いいサイズだ。

注がれる酒を喉に流す。



「この酒も樽を五つばかり用意させたが、足りなくなったら再びオウカに来るがいい。

儂が安く卸してやろう」


「そりゃ嬉しいな」



桜玉は俺の首ではなく、体を伸ばして爺さんの膝の上に頭を置いている。

力を抜いてるのを見るにリラックス状態で欠伸をしている。

娘と父親というより孫と爺さんだな。



「さて、これで儂の依頼は完了とするぜ」


「とは言っても俺は殆ど何もやってないけどね」


「儂が一方的に恩を感じただけだ。気にすんじゃねえ」



《ユニーククエスト『桜花の龍は子を想う』を達成しました》


《報酬を獲得しました》



アイテムボックスを見れば、米俵、醤油モドキ、酒樽がそれぞれ5つずつ入っている。

これで色々料理を作る事が出来る。

今の『調理』スキルがレベル8だからもう少しでMaxだ。



「それと、コイツは儂からお前さんへの餞別だ」


「…なにこれ?」



爺さんが手渡して来たそれは桜の柄が入った硝子玉のような物。

細い紐が通されている、首飾りの一種みたいだけど。



「龍の髭と爪の一部を加工して作ったもんだ。

龍狩りには防具を渡したが、お前さんは戦いを退いたんだろう。

お守り代わりに持っていけ」


「へぇ、良い細工だ」



貰った首飾りを首に掛け鑑定を使ってみる。



『緋桜の首飾り』

緋桜の龍が友人へと渡す為に作り上げた寿ぎの首飾り。

盟友と子への旅路の祈願が込められている。

:VIT+100 AGI+100 LUK+50

:ユニークスキル『緋桜の誓い』を獲得する。



「ちょっと良い物過ぎないこれ?」


「作ってる最中に興が乗っちまった」


「そっかぁ」



新しいユニークスキルだ。

ウインドウで詳細情報を確認してみる。



『緋桜の誓い』

味方の人数に応じて全体にステータスの増加補正(0/50)



何も見なかった事にしたい。

まあ、アクセサリーだしステータスが伸びるのは仕方ないか。

味方強化もまあ、有用だから良いかな。



「これ、味方を増やすにはどうすれば良いの?」


「そんなの握手なりなんなりして増やすが良い」


「…ちょっとハルカ、来て貰える?」


「どうかしましたか」



大雑把に回答をくれた爺さんの言葉に従ってみる。

物は試しとハルカを呼び軽く説明。一度握手をしてもらう事にした。



《『ハルカ・モチヅキ』は友好度を満たしています》


《『緋桜の誓い』を使用しますか?》


「はい」



こういう感じのスキルか。アビリティはないけど、スキル自体で使用するか聞いてくるってちょっと面白いな。

人数の項目が一人増えていることを確認し、俺は爺さんの膝元で寛ぐ桜玉の手を握る。



「グルルッ?」


「ちょっと試させてね」


《『桜玉』は友好度を満たしています》


《『緋桜の誓い』を使用しますか?》


「はい」



お、人数増えてる。テイムモンスターでも味方としてカウントされるのか。

過剰戦力感は否めないけど、確認の為だから仕方ないよな。よし、次。



「羅刹丸」


「ここにござる」


「どうせ聞いてたでしょ?ちょっと試すよ」


「何時なりとも!」



名前を呼んだら後ろから出てきた羅刹丸の手を握る。



《クランメンバー『羅刹丸』との接触を確認しました》


《『緋桜の誓い』を使用しますか?》


「そういう表記なんだ…はい」



あ、増えてる。

成程な。NPCとかテイムモンスターは一定の友好度が必要だけど、プレイヤーの場合はフレンド間か同クランの所属で発揮されるようだ。



「羅刹丸、ステータス増えてる?」


「全てのステータスが6増えてるでござる!」



ステータス上昇は一人当たり2%増加って事かな。

もし50人揃えたら100と…普通にヤバい性能だったわ。

これパッシブスキルだから俺のログイン中は自動で掛かるのか。

『銀月の祝福』みたいに時間帯も関係ない。

基礎値の増加、最後にとんだぶっ壊れアイテムをくれたな。

…損はないし良いか、もう諦めた。

ゲームバランス壊れそうだから後で挙手制にして登録しよ。



「良い物をありがとう爺さん」


「なに儂が拵えた物だ。好きに使え」



カッカッカと上機嫌に笑う爺さんと夜通し酒を交わしながら、俺のアズマ観光は終わった。



後日、配信中に登録したい人挙手!と軽いノリで言ったら全員島に集合したが、それはまた別の話。







『四大精霊が守護するイデアルシアの大国、迷宮と精霊と共に生きる大地に異邦の者が来訪しました』


『プレイヤーにより王国アルファシアが発見されました』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「歯ごたえがないわぁ、NPC」



アルファシアの誇る城門の前に一人の女が座っていた。

全身を白い神官服で包み、巨大な戦斧を地に突き刺す姿は処刑人か…あるいは死神。

彼女の背後には大山がある、否…人の山だ。

辛うじてHPは残っているが、腕がちぎれた男や足を切断された女、全身の骨が折れた子供に原型を留めていない老人。



「痛てぇよ…」


「騎士様、助けて…」


「…ママ?」


「ぐぅ…ッ!」



死は平等に訪れる。

それは細やかな幸せを甘受する者にも、貧困に喘ぐ者にも公平に平等に。

NPCに痛覚設定はない。彼らはこの世界で生まれ、この世界で生きているのだから。

最もこの女も痛覚設定を100に設定し命のやり取りを楽しんでいるのだが。



「精霊の騎士だったかしら、結構良い装備を付けてたからお姉さんちょっと楽しみだったんだけど」



人山の中心に立つ一つの柱には男が括りつけられていた。壮年の蒼い鎧を身に纏う男は、その山の中でも更に異質な姿と言える。

四肢は落とされ、顔は潰され、体は折られ…。

精霊の加護は身体能力を向上させる、それは戦いの最中では有効だろう。

だが、今この時に限っては…不幸と言う他ない。



「アッ…ガ…」


「へぇ、まだ声が出せるんだ」



人山を踏みつけ、彼女は悪魔のような笑みを浮かべて男の方へと歩く。

喜悦、愉悦、甘美、恐怖。

踏みつぶされる悲鳴に耳を傾けず、女は男に戦斧を向ける。



「でもダーメ。

お姉さんもう飽きちゃったから、おじさんは要らない」



にやけ顔を浮かべ勢いよく戦斧を男に振るう。

下半身が、落ちた。



「フフッ」


「あ…ああ…!」


「騎士様…!」



致命殺。

かつて命を取り合い共に笑いあった友人が得意としていた攻撃方法。

最も彼はNPCを手には掛けなかったが、彼女は違う。



「道化の子達はもうPKをやってないみたいだし、ちょっと味見に行っちゃおうかな?」



舌なめずりをする様は、美しい容貌に似合わず悪魔的。

周囲に恐怖が伝達し呻き声が漏れる。



「やっぱりやめやめ!

あの子達に手を出したらリクくんが怒っちゃうし、そんな事になったらすぐに終わっちゃう」



なるべく長く楽しみたい。

彼との戦い、彼との死合い、それはとても甘美で楽しい物だから。

ピョンと飛び降りた女は先程まで自分が乗っていた人山を見据えた。



「やめてくれぇ…」


「助けて…助けてよぉ…精霊様ぁ!」


「・・・・・・・ッ」


「たかがデータと思ってたけど、クロノスから随分AIも進化したみたいだわ。

本物の人間みたい!」



ずるりずるりと重く気味の悪い音を上げて戦斧を引き歩く。



「メメントモリ、メメントモリ…ダメよぉ死を忘れちゃぁ」



死は平等に訪れる。

それは若い男でも、若い女でも、年老いた老人でも、まだ先の長い子供でも。

だからこそ、死を想え。

それは必ず訪れる。それは必ず現れる。

巨大な黒い鎌を携え、笑いながら命を引いていく。



「『断裁』」



引きずっていた戦斧を両の手で持ち、刃を天へ掲げた。

白い斧に集まる悍ましい黒い瘴気。

ソレがやがて斧の刃をに纏わりつき形状を変えていく。

巨大な戦斧、()()()()

縦に一薙ぎした黒い刀身は飛ぶ斬撃となってNPC達に襲い掛かる。



「ギャァァァァ…」


「フフッ…アハハハッ!」



人山が消え、女が笑う。

まるで面白い玩具を一番楽しい状況で遊ぶように。


門の先には既に多くのアルファシア兵が集まっている。

その中でも目を引くのは炎の騎士、風の騎士、地の騎士。

先頭に立つ者達が皆一様に殺気立つ。



「それじゃあ、お姉さんと遊ぼうNPC!」



女…ペイルライダーは舌なめずりと共に嗤いながら戦斧を構える。

この日あるプレイヤーがアルファシアを訪れNPCの虐殺を行った。

アルファシアの地では多くの国民と精霊の騎士を一人失い、死神は笑いながら姿を消した。




アルファシアは、異邦人を敵と見なした。



『王国アルファシアへの通路が封鎖されました』


『王国アルファシアへの敵対行動により『風の都アルトメルン』への異邦人の出入りが封鎖されました』




劇の初めは軽やかに、そして華やかに。

結末はデウス・エクス・マキナが謳ってくれる。

きっと喜劇に変わるだろうさ。


『ペイルライダー』

身長178㎝体重63㎏ 

光を集める白いルーズサイドテールと宝石の如き青い瞳。

純白の神官服に身を包み、巨大な戦斧を携える。

新規、熟練問わず目に付いた者は全てPKしており、CCとは別の意味で話題に上がる怪物。

リクが群にして個ならば、彼女は完成された個。

アルテマ・オンラインの世界に大手クランの数が少ない原因は名前を上げるクランに対して彼女がいつの間にか姿を現し軒並みPKを行ったせい。容赦なくNPKを行う加虐性あり。

その行動から付いた仇名は『死神』

個人PK数元トッププレイヤー、クラン複数壊滅、英雄殺し。

所持ユニークスキル…四つ。

本職『警察官』

リアルでは自分の身長を気にしている可愛らしい一面を持つ。可愛い。


共に笑いあったとあるが、首領は終始ブチギレ状態でコイツと戦っていた。


Q…自分の性癖に合致するキャラが居ません、どうすれば良いですか。

A…自分で設定を盛って書く。


私の好きな女性はバビロンの曲世さんです。

ついでに最推しはシャイニングフォースフェザーのアルフィン。

正直初期案がほのぼの作品であってはならない程のアレだったからマイルドに書き直した。

最初は水精の騎士は女の子の予定だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] また女かあ 死神は男であって欲しかった 女だとやってることの意味合いがはみ出して 鼻につく女臭ささが充満するから 男の狂気であって欲しかった (個人の感想です)
[良い点] ほのぼの()してますねぇ( ◜ᴗ◝ ) [気になる点] わかります、わかりますとも…確かに死神というキャラは魅力的ですし、僕も凄い好きなキャラです。 がしかし、どうにもほのぼのってワー…
[一言] スローライフと銘打つ作品ほど、そこから離れていくような傾向が強いと思います。色々盛り込んじゃうからですかね。 クランメンバーを掘り下げが少なめなので今後に期待しております。
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