表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/156

龍と人

やっぱりデウス・エクス・マキナって最高だ。

世界は愛で満ちてる。


《桜花の龍は子を想う》


この世界で初めての俺に与えられたユニーククエスト。

そもそもユニーククエストとは何ぞやと思うかもしれないが、要はプレイヤーがNPCと親しくなることで発生するそのプレイヤーだけのクエストだ。

報酬は破格。武器だったり防具だったり、スキルだったりとどれも強力な物を与えられる。

難易度はクエストによって大きく異なっており、例えば俺の『因幡流【皆伝】』はクソみたいな難易度のジジイを討伐する事だったが、『隠者』は軽い謎掛けを何度か行うだけで達成できた。

さて、このユニーククエストの内容だが。



「リクの小僧、お前さんにはその子を連れて行って貰いたい」


「…なんで?」



チビ龍をテイムする、それだけの単純なクエスト。

なのだが、どうにも要領が掴めない。やっと生まれて来た我が子を手放しこの爺さんになんの得がある。

自然と目に力が入ってしまう。



「勘違いするんじゃねえ。別にその子を手放そうなんざ考えてねえよ」


「というと?」


「…その子はまだ生まれたばかりだ。何も知らず、この小さい国に置いておくなんざ不憫だろう」



爺さんの言い分としてはこうだ。

まだ小さいチビ龍に外の世界を見て欲しい。

色々な場所を見て、色々な物を知って、色々な物を食べて大きくなって欲しいと。

何でも、災厄が起こる前は爺さんも世界を見て回り多くの国を訪れたとか。

成程、人生経験としては確かに必要な事だが問題は俺だ。



「俺、基本的に自分の島に引き籠ってるだけなんだけど」


「お前さん、自分の島を持ってやがるのか」


「空に浮かんでる島だけどね」


「空に浮かぶ島だと?」



NPC、それもこんな位の高い爺さんなら言っても問題ないだろう。

空に浮かんでる島と聞いた爺さんは、何かを理解したような表情をする。



「そりゃあ、消えた月の…」


「キュキュ、キュキュウ」


「白玉?」



白玉が爺さんの前に飛び出る。

急にどうしたんだろう。

突然の行動に面食らう爺さんだったが、白玉の謎言語に聞き耳を立てていると口を閉じた。



「そうか、あの時ゃ災厄の姿に驚いちまって気付かなかったが…白玉だったな」


「キュキュウ」


「月の後継に緑の災厄、そんな中に唯の小物が居る訳がねえ。お前さん…最後の獣か」


「…キュウ」



コクリと頷く白玉と納得した面持ちの爺さん。

出たよ、定期的に訪れる蚊帳の外現象。朱雀は目を閉じてるけど、お前暇だから寝てるんじゃないよな。

寂しさにチビ龍と翠玉を撫でる回数が増えていく。龍の撫で心地も中々癖になるな。



「…コイツは良い。

元々リクの小僧を気に入っての話だったが、これなら我が子の心配はない」


「キュイ!」


「話は纏まった?」


「ああ、憂いもなくなるってもんだ。どうだリクの小僧、儂の子を外に連れ出しちゃくれねえか」



真剣な眼差しで俺を見る爺さん。そこまで言われるなら俺も別に構わない。

仲間達への謝罪文を考えなきゃならないが、チビ龍の撫で心地も気に入ってきたし。



「その依頼受けるよ」


「ありがてぇ!なら、儂はこの話が終わったらお前さんへの返礼を用意しに行こう」



話ってもう終わりじゃないの?

ああ、そうか。条件はテイムだった。

胴を撫でていた手をチビ龍の頭に乗せ、アビリティを使用する。



「それじゃあ済ませちゃおうか…『テイム』」


「グルル…」



受け入れるように目を閉じるチビ龍。

成功らしい。アナウンスが表示される。



《『桜龍』との契約に成功しました》


《称号『龍種の契約者』を獲得しました》


《『桜龍』に名付けを行ってください》



これで見るのは三度目か。

狐モドキに鹿に龍と何か変な生物ばっかりテイムしている気がする。

嬉しそうに俺の顔に擦り寄ってくるチビ龍を撫でつけ、さあ問題の時間がやってまいりました。

名付けである。

さて、さっきの名前決め大会で一番票を獲得していた名前は何だったか。



「首領、一番多かったのは『桜玉』だ」


「分かってるよ、畜生」



名前はとても良いと思う。なんたって仲間達が付けた名前だからな。

でもまさか、本当に付ける事になるなんて思わない。



「お前の名前は、『桜玉』だ」


「グルルッ!」


「カッカッカ、良い名を貰ったじゃねえか桜玉」


「グルッ!」



爺さんの首にも巻き付く桜玉。

あの、これだと俺と爺さんが一緒にマフラー巻いてるみたいなのでとても止めて欲しい。とてもやめてほしい。



「良い名だと思います、リク殿」


「首領の島にまた生き物が増えるな」



純粋に褒めてくれるヒオウ殿と何も考えてないだろう朱雀。

なんて言って皆に説明しようかと、今から考えていると爺さんがもう一つ爆弾を落としてきた。



「リクの小僧。

桜玉の世話役にヒオウを連れて行くと良い。コイツも儂より桜玉に付いてく方が楽しかろう」


「宜しいのですか緋桜龍様?」


「待て」


「桜玉の世話のついでに、小僧の手伝いでもしてやれ」


「待って」


「それは楽しみにございます」


「良かったな首領。島が賑やかになる」


「待って!?」



俺を抜きにした話し合いで俺の島の住人が増えた。

ステキな仲間が増えますよォォォォォォ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ぽっと増えてて草 [一言] AI「ただ増えるだけじゃただの天丼だな…、せや!」
[良い点] わくわく動物ランド [気になる点] どうにも容量が掴めない 要領
[良い点] まさかの二枚抜き(笑) [気になる点] 桜玉は読み方はおうぎょくでいいんですか?それともさくらだま( ・◇・)?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ