それは翡翠のように
ゲリラ投稿だ、週末だからね。
誤解を招いたようだけど、首領周りの人物はほのぼの枠だから安心して読んで欲しい。私の悪癖の被害者は基本NPCなので。
追記)活動報告に謝罪文載せときます。
「翠玉?」
「ご老公、首領の式神の事だ」
「ほう、小僧は使役にも通じておるのか」
ああ、やっぱりこの国に式神って概念あるんだ。
『使役術』の事なのか新手のスキルなのか詳しく知りたいけど、取り敢えず目先の問題をどうにかしよう。
「『モンスター・コール』…翠玉」
地面に魔法陣が浮かぶ。
『モンスター・コール』は『使役魔術』で獲得するアビリティ。
効果は自分がテイムしたモンスターを召喚する事が出来る。
サモナーとの違いは、サモナーは固有のモンスターを持たない。
アイツらは魔石を使って一定時間モンスターを召喚するのだが…愛着が湧いてもロストしたら終わりだし、時間が過ぎても魔石と共に消滅するので一時期掲示板が荒れていた。
修正?ねえよそんなもん。
さて、魔法陣の輝きと共に翠玉の姿が徐々に構築されていく。
銀の光が一層大きくなり、消えるとそこには翠玉の姿…と口元に咥えられ死んだ目をしている白玉の姿が。
「ミュー」
「キュウ…」
「…お前、何やってんの?」
白玉の近くに手を持っていくと、翠玉が口を離し白玉が落ちて来る。
咥えられていた所を何度か撫でて肩に登ってくる白玉と俺に頭を押し付けてくる翠玉。
「遊んでた時に俺が呼んじゃったとか?」
「ミューン」
「…キュウキュウ」
どうやらそうらしい。多分俺がいない間に昼寝をしていた白玉へ翠玉がちょっかいを掛けてたんだろう。
頬をポンポンと叩く白玉を撫でていると、爺さんが血相を変えて俺を見る。
「おい、小僧…その翠の鹿ぁ…」
「ああ、爺さんは災厄の戦いに参加してたんだっけ」
頭を押し付ける翠玉の顔を両手で押さえ、爺さんの方に向けてやる。心なしか爺さんが震えている。
「元『翠の災厄』で、うちの翠玉だ。可愛いだろ」
「ミュー」
「なんで月の後継が災厄を従えてるんだ!?」
「なし崩しと言うか、ルナーティアに許可貰ったし…」
「どうしてあの御方が許可出すんだよ!?」
「緋桜龍様…?」
爺さん口調崩れてる。
キャラ設定は大事なんだから、気を付けてね。
全く、何をそんなに怖がってるんだ。
ほら見ろ、こんなに撫でて欲しそうに頭を擦り付けて人懐っこいただの鹿だろう。
ステータスはちょっとアレだけど。
「まあそれは置いといてさ」
「儂からしたら捨て置いておけねえぞ」
「大丈夫、今は悪さしないから」
「それ以前の問題なんだがなぁ!?」
老人が騒ぐな喧しい。
口やかましい爺さんを放っておいて翠玉と共に卵の前へと歩き出す。
…これ目玉焼きを作ったらどれだけ大きくなるんだろう。おっといけない、邪な考えが出て来てしまった。
「翠玉、この卵にMP…魔力を注ぐことって出来る?」
「ミューン」
「おい待て、小僧お前さんまさか…」
「黒蛇に妖力の補充頼む位だし、コイツのでも良いよね?」
「待て待て待て待て」
よっし、それじゃあ行ってみよう。
実験は好きだよ。
昔学園で色々とやらかして以来実験室には立ち入り禁止になったから。二、三回爆発しちゃった事はあるけど、MP込めるだけだし大丈夫大丈夫。
「翠玉、今出来る全力をこの卵にぶつけてみよう」
「ミューン」
「…あの、龍狩り殿。大丈夫なんですよね?」
「………ああ」
「おい龍狩り、今の間はなんだ」
「…首領に頼んでみようと言ったのは、ご老公だ」
「リッくん、ちょっと酔ってる?」
はい、外野言葉を謹んで。
今からリク先生のパーフェクトな実験が始まるよ。
見なよ、八千代と刃狼と羅刹丸は目を輝かせて俺を撮ってる。
今の翠玉のMPは25000。
翠玉から貰った指輪のバフ効果でそこから2倍されるから、50000。
封印されてるとは言え、あんな本にも書かれるような生物だし何とかなるでしょ。
冴えてるぞ俺の頭。ゾッとするぜ。
「翠玉、やれ!」
「ミューーーーーー!」
「…キュキュ」
翠玉が前足を卵に当てて、力いっぱい叫ぶ。
翠色の粒子が卵の周りを囲み空間が軋むような圧迫感。
ステータスを確認してみればゴリゴリとMPが減っているみたいだ。
5割、4割、3割。
ピキリッ
残り2割となった所で卵に異変が走る。
卵の外殻に罅が入り、徐々に全体まで進行する。
「これは…!」
「おいおいマジかよ」
1割に差し掛かる頃には完全に決壊寸前の卵。
出し切った、と思った瞬間。
「…キュウ!」
「え、白玉さん?」
白玉の一声。
俺達の周囲を透明のガラスのような物が覆う。アビリティの発動だが見た事がない。
あれか、金剛障壁とかいう防御アビリティ。
瞬間、視界の全てが爆ぜた。