龍の頼み事
皆さまからの熱いお言葉によって目が覚めました。
やっぱり心の田中を信じて書きたい物を書くって大事だよね。
そういやXの紐付けやってみたので良かったら探してみてください、ネッシーかツチノコみたいなもんです。
少し恥ずかしい姿を見られてしまったかもしれないが、今は一度爺さんから話を聞くのが先だ。
「それで、俺に頼みたい事っていうのは?」
「変わり身が早すぎるなぁ、小僧」
「首領だからな」
先程の一幕で絶叫したせいだろう、爺さんがちょっと引いたように俺を見ている。
そういえば、龍とは言ったけどこの爺さん街の住民とかみたいに人間に似た姿なんだけど。
「もしかして、この街の住民も全員龍なの?」
「いや、この街にいる純粋な龍は儂だけだ。
街の連中はかつて儂が血を与えて力を得た人間の末裔、いわば龍人だな」
ヒオウ殿をチラッと見ると、彼女は自分の角を手で撫でている。
眷属みたいなモノなのかね。
納得した俺は朱雀を睨み付けて話の続きを促す。
「某の悩み、というよりご老公とオウカの民の悩みと言った方が良いだろうか」
「嗚呼…儂らの悩みだろうな」
爺さんと朱雀が頷き合いながら言葉を重ねる。
もう少し分かりやすいように言って貰って宜しいか?
「ご老公、ここは一度首領にアレを見て貰うのが早いと思う」
「龍狩り殿、それは…」
「小僧なら何か手立てがあるかもしれねぇってか。確かにその方が話も早い」
俺を抜きにして三人が話している。
また蚊帳の外ですか。そうですか。
もう良いよ、八千代と刃狼と遊んでるから。
あ、ダメだこいつ等。まだ警戒解いてねえや。
「小僧、ちと付いてきな」
「また歩くの?」
「なに、この広間のすぐ先だ」
爺さんが自分の後ろに飾っている掛け軸に手を伸ばす。ファサリと上に持ち上げたると、先へ続く道がある。
「御館様、絡繰り屋敷にござる!」
「羅刹ちゃん嬉しそうだね」
掛け軸の奥へ行く爺さんと、それに続くヒオウ殿。最後に俺を先頭に全員で中に入る。
先程の広間とは異なる狭い部屋の先に、奇妙な物があった。
「…なにあれ?」
「卵だ」
「デカいな」
「儂ら龍種の卵だからな」
龍種は卵生なんだ。1m程の大きさの桜色の卵は敷物の上に置かれている。さながら鳥の巣。
「アレは、儂の子だ」
「サイズ感おかしくない!?」
「このアズマにゃあ西の国とは別に術がある。
儂のこれも『人化の術』ってヤツだ」
どうやら今の爺さんの姿はアビリティを使った別の姿で、本来はもっと巨大だとか。
魔術とは異なるスキル。
それはあれか、昔懐かし陰陽師が使っていたっていう陰陽術みたいなヤツかな。
ちょっと興味が湧いてきたが、そんな俺の様子など気にせず爺さんが喋る。
「儂が龍狩りに『黒蛇』を討つように命じたのは、コイツが理由だ」
優し気な手付きで卵を撫でる。
「儂の番の忘れ形見。鬼共との戦に敗れた彼奴は子の顔も見ずに逝ってしまった」
「鬼共?」
「冬の街に住む種族の事だ、首領」
春の街とは真反対の場所にあり、常に雪の降り続く街。龍人族はそこに暮らす鬼人族と戦を繰り返しているらしい。
「この子は、いつ生まれたんだ?」
「…彼是200年経ったな」
「龍人族ならばまだしも、純血の龍の誕生には膨大な妖力を一度に与える必要があるのです」
「朱雀」
「妖力とはMPの事だ、首領」
成程、MPの大量消費が条件のクエストか。
そりゃあ朱雀には荷が重いだろう、コイツSTRとVITにしかステータス振らないし。
「爺さんは足りなかったの?」
「雄の龍種は生まれつき妖力が少ない。それ故に番が常に妖力を与え続けなければならぬ…」
「そっかぁ…」
「『黒蛇』は雌の龍種だった。それで一度交渉に行ったは良いのだが…」
「お前討伐してなかった?」
「話が通じなかったのでな」
龍種は長い時を生きると話をする事が可能だが『黒蛇』は年若い龍だったらしい。
問答無用で襲い掛かってきたから、苦渋の決断で討伐したと。蛮族か?
「それで頼みの綱の『黒蛇』を討っちゃったから、今度は俺に頼みに来たと。何で俺?」
「首領なら、どうにかなると思ったのでな」
「お前の俺に対する信頼はなんなの?」
「わかる」
「分かるな」
「ござる」
お前らさっきから一言も喋ってなかったのに合いの手は打つんだ。俺達の様子が面白かったのか爺さんが声を上げて笑っている。ヒオウ殿も口元を押さえてる。
「それで、その妖力ってのはどれ位与えれば良いの」
「儂も詳しくは分からんのだ」
「古い文献にも、龍の出生については書かれておりませんでした…」
「情報ガバガバじゃねえか龍」
コイツ等戦闘能力に特化し過ぎて思考鈍ってんのか。攻略法も分からない、ヒントもない、でもMP大量に使いますとか馬鹿なの?
さてとどうするか。
そもそも俺はMPが多いわけでもないし、果実パイを大量に作ってクラメン達に魔力与えて貰うとか。
唸りながら頭を悩ませる。
「可愛い…!」
「・・・・・・・」
「ぬ、何故刃殿も構えてるでござる?」
「配信でも時たまする仕草、実写だと尚良い…」
「ござるか…」
なんか横からパシャパシャ聞こえて来るんだけど気のせいだよな。
大量のMPねえ。
あ。
「翠玉呼んでみよう」
そういえば居たわ、一番MP高いヤツ。
俺の脳細胞…今日は随分輝いてるな。