オウカの領主
黒確定10連チケが六枚被りで終わった物部です。
エクスとクーコ位しか嬉しい子居ませんでした、詰みです。
追記)イコル60連で出ました、勝ちです。
「お待ちしておりました龍狩り殿」
門の先に待っていたのは一人の少女。黒く艶やかな髪を腰ほどまでに延ばし桜柄の着物を身に着けている。髪にはこれまた桜の髪飾り。随分桜推すじゃん。
「すまぬヒオウ殿、某の主君をお連れしたと、あの方にお伝え願いたい」
「分かっています、誰かここに」
桜柄のNPCヒオウ殿が口を開くと、彼女のすぐ横に黒装束を身に着け顔を隠す者が姿を現す。
さながらそれは、
「御館様、忍者でござる!」
「はいはい、言うと思ったよ」
羅刹丸大興奮。そうだよね、忍者ロール大好きだもんね。あとで衣装買ってあげるから、今は静かにしようね。
影の中から響く声に驚いたように、ヒオウ殿と忍者が俺の方を見る。
「気にしないでくれ、俺の忍者だ」
「御館様ぁ…!」
「…そうでございますか」
一つ頷き忍者に伝言を託すヒオウ殿。
良いんだそれで、忍者で通じるんだ。
影の中から感激したような羅刹丸の声が聞こえるけどスルー。
伝言を聞き届けた忍者が再び姿を消すと、ヒオウ殿が俺達の方へ向き直る。
こちらを見るその眼は、なんだろう半信半疑というか。
「お名前をお聞きしても宜しいでしょうか、龍狩り殿を従える方」
「?」
右を見ると八千代が俺を指差す。
左を見ると、刃狼が俺を見て頷いている。
従えてないんだけど、クラマスってそんな風に思われてるの?
「リクだよ、ただのリク」
「ありがとうございます。リク殿、そしてお付きの方々どうぞこちらへ」
顔色一つ変えずにお辞儀をする。能面みたいな人だな。
俺の名前を口ずさむと、そのままヒオウ殿は屋敷の奥に手を向け歩き始めた。
付いて来いと言う事だろう。
促されるまま、俺達は後ろを歩く。
「龍狩り殿、リク殿ならばあの方の悲願を解決出来ると言っておられましたね」
「首領は某達では考えられぬ事を平気で熟す男だ。今回もきっと助けとなってくれるだろう」
「信頼されておられるのですね」
「首領以上に信を置ける男を、某は知らぬ」
訳分らない事を喋りながら俺の株を上げないで貰っていいですか?
悲願ってなんだよ。俺朱雀を手伝うとは言ったけどそんな大事に手を貸すとか言ってないよね。
「どうしよう皆、俺が知らない間に何かとんでもない事に巻き込まれてる気がする」
「リッくんなら大丈夫だよ!」
「首領だからな」
「御館様、頑張ってくだされ!」
俺に味方はいないらしい。
どんどんと奥に進んでいくヒオウ殿と朱雀を見ながら頭を抱えそうになる。
「着きました皆様。
ここに我らの都を治める御方がおります」
「会うのはこれで三度目になるか」
大きい。
回廊を真っ直ぐに進んだ先には巨大な襖が閉じている。先程まで歩きながら見たどの襖よりも大きなそれには、あの門と同じく桜の家紋が描かれている。
バカでかい襖に圧倒されている俺達の前で、ヒオウ殿が膝を付き声を掛ける。
「ヒオウです。お客人をお連れしました」
『おう、入れ』
中から聞こえる声は老人の声。
老いた低い声ながらも、自然と力強さを感じる声を聞きヒオウ殿が襖を開く。
襖の先は、大広間のようになっているようだ。
「どうぞ、お入りください」
ヒオウ殿に声を掛けられ中に入る。
中にいるのは、随分とガタイの良い老人が一人。上座に鎮座し酒を呷っている。
街の住民や先程のヒオウ殿よりも大層立派な角を持ち、上品な赤い着物を身に着けている。
一度吞み終えたのか横に置かれた酒樽を持ち上げ、盃に注ぐ。
待て待て、その体でどうやってその酒樽持ち上げてんだ。重量無視ってもんじゃねえぞ。
てか盃もデッカ、古き良きジャパニーズ赤鬼が鬼ヶ島で使うヤツじゃんそれ。
そんなに吞んでると肝臓壊すぞ爺さん。
「よく来たな、龍狩り」
「ご老公もお元気そうで何よりだ」
「カッカッカ、儂に元気も何もあるもんか!」
向けられた視線と言葉に朱雀が答える。
随分と元気の良い爺さんだこと。
「リッくん、多分あのお爺ちゃん強いよ」
「まあ酒樽持ち上げてるしな」
「…強者の気配だ」
「刃狼、殴りかかっちゃダメだぞ」
朱雀から貰った刀の鞘を握り目をキラキラさせている八千代と拳を握りしめ目をギラギラさせている刃狼を小声で制していると、話の主である爺さんが俺の方を見た。
興味深そうに俺を見た爺さんだったが、急に何かに気付いたかのように表情を変える。
「おいおい、こりゃあどうして…」
「ご老公?」
「龍狩りが敬うヤツがどんなのかと思ってみりゃあ」
爺さんが上座から立ち上がり俺の方に歩いてくる。
あんなに酒をかっ食らっていたのにしっかりとした足取りだ。
俺の前で立ち止まった爺さん。俺より頭二つ分くらいデカい。
「お前さん、月の御方から寵愛を受けてやがるじゃねえか」
月の御方。
それで思いつく者は今の所二人しかいないが、きっとうさ耳ジジイの方ではなく彼女の方だろう。
「爺さん、ルナーティアの知り合い?」
「ああ、その名も知ってやがるのか…」
感慨深そうに俺を見る爺さんは、少しの後にニカリと笑う。
「龍狩り、お前さんをこの街に入れて良かったぜ。
コイツなら、卵を孵す事が出来るかもしれねえ」
俺の肩をバシバシ叩きながら呵呵大笑する爺さん。誰か助けて…と後ろを振り返ればヒオウ殿が凄い驚いた顔して俺を見てる。
八千代と刃狼は相変わらずだし、朱雀も動かない。
卵ってなにさ。