定期謝罪配信
風邪が一向に治らなくて草ァ!
「…はい、と言う事がありました」
飛行カメラで正面を映し、ベッドの上で正座をする俺と呆れた顔をして俺を見ている白玉。
昨日の宴後の出来事を抱え込むのは心情的にちと重たかったので、呪いの分配ではないが仲間達に速攻で暴露した。
案の定呆れかえるコメント欄。
《災厄の一体をテイムして更に神の情報を貰ってしまったと…【月見大福】》
《最早笑うしかないな【†災星†】》
《首領だけ別のゲームしてますの?【ハートの女王】》
《流石リッくん…【八千代】》
《珍しくお嬢が引いてやす【蛮刀斎】》
《強烈なカウンター喰らってて草ぁ【HaYaSE】》
《やはり我らの首領だ【軍師カンペイ】》
《『200000マニー』【刃狼】》
こんな事になるなんて思わないだろ。
いつの間にか神様に好かれててお土産代わりに大量の厄ネタ貰いましたとか、今日日ネット小説でしか見ないわ。
てかHaYaSEお前根に持ってるだろ。
「…NPCのテイムスキルってどんな感じなんだろうな」
《『サーバント』ね、掲示板で調べても出てこないね【月見大福】》
だよなぁ、アルテマで実装された新スキルなのかもしれないけど今の所使い道もないし。
「月見大福。聖国の情報は好きに使っても良いよ。
どっかのプレイヤーがNPCから聞いたって体にしてね」
《了解、まだ見ない国の情報だしきっと高く売れるよ【月見大福】》
《あとで私が聞いた情報もメッセで投げとくっスよ~【十六夜】》
新しい情報には自然と他のプレイヤーも食いついてくるだろうから、今が稼ぎ時だ。
これで昨日の件は一段落と言う事にしておこう。
「今日はこれから朱雀と約束があるから、配信は一旦切るよ」
《はーい!【八千代】》
《旦那の用事も厄介事の気がするなぁ【HaYaSE】》
「妙なフラグを立てる事言うんじゃない」
特に異論は無さそうなので配信を切る。さて、朱雀にメッセージを送ってと。
「首領、某はもう着いている」
「速いなおい」
ウインドウを弄っていると、扉を開けて入ってくる朱雀。きっとさっきまでの配信を見ていたんだろう。
昨日も思ったけど、なんでお前着流しなんて着てるの?
「アズマで作った装備?」
「ああ、そしてこれが某の今の得物だ」
虚空から取り出した武器は、大太刀。
アイテムボックスに仕舞い込んでいたんだろう、黒鞘に包まれたソレは異様な威圧感を放っている。
「八千代が喜びそうな物持ってるじゃん」
「既に昨晩一本渡した。流石に普段使いはさせぬように言ったがな」
相変わらず子供達には甘いヤツだ。八千代も約束事は大事にする子だから問題はない。
「銘は?」
「龍太刀【黒蛇】と言う、良かったら鑑定してみてほしい」
自分の得物だというのに俺に押し付けるように渡してくる。まあ、折角初めてみた武器種だし俺も興味があるけどさ。
『龍太刀【黒蛇】』
アズマに巣食う龍の一つ『黒蛇龍』の素材を使用し打たれた大太刀。
:STR+300 VIT+150
:抜刀後、一定時間『腐食』の状態異常を付与する。
「とんでもない物持って来たな」
「レイドボスの素材を使用した一品だ。
中々に重宝している」
「え、レイドボス出てきたの?」
「ユニーククエストを進めていたら、発見してしまってな。NPC数人と共に戦った」
人の事言えたもんじゃないけど、コイツもコイツでやっぱり別ゲーやってない?
大太刀を朱雀へと返し俺は思う。
「それで俺にやって欲しい事があるんだっけ?」
「うむ」
一つ頷きながら、朱雀はウインドウを操作し始める。
数秒の間の後に俺に一通の通知。
「…パーティ招待?」
「ああ、某と共に一度アズマへと来て貰いたい」
「はい?」
急に告げられた要件に目を見開く。
確かに、パーティ間で転移を行う際一度リーダーが行った事のある場所ならばメンバーを連れて転移する事も出来る。出来るんだけど。
「会って欲しいモノがいるのだ」
「流石に急すぎない?」
「頼む」
俺の目を見ながらそう告げる朱雀。
相変わらず何を考えているか分からない目だが、何かを急いてるように感じる。
…まあ、良いかな。丁度アズマで米がないかと思ってたし。昨日なんでも手伝うって言っちゃったし。
パーティ招待の画面から承諾を押す。
「いいよ、手伝う」
「感謝する、首領」
良いさ。
仲間の頼みなら俺はなんだってするよ。
ああ、でも一つだけこれだけは言いたい。
厄ネタの匂いがするなぁ。