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宴の後に

なんとかメンバーを出せた。

全てはアイギス神と心の田中の導きによる物かもしれませんね。

さあ王子達、石を配ったのでギス。それ以上に割るのでギス。

さて、楽しい時間というのはいつも直ぐに過ぎ去ってしまうというべきか。パイも殆ど片付き、今日はもうお開きという場面。

締めとかは特にないので、全員眠くなったら解散というと徐々にだが人数が少なくなっていく。



「リッくん、今日は楽しかった!」


「そりゃよかったよ」


「それじゃ、俺達は運動がてら一狩り行くかぁ?」


「賛成!」


「私達も、行く」


「たまには皆で狩りだね!」



八千代とBB達は今から共同で狩りに行くらしい。

もう時間も遅いだろうに、よくやるなぁ。



「それでは首領、僕達もこれで」


「ああ、仕事忙しいだろうに悪かったな」


「呼ばれればいつでも参りますとも」


「社畜も案外カンペイ寄りだよねぇ」


「首領、何れまた…。新作楽しみにしてます」


「御館様、御用の際はいつでもこの羅刹丸を!」



各々別れを告げに来てはログアウトしていく。

羅刹丸は、もう何も言うまい。

チラホラと他のメンバーも消えていき、気づけばもう数人も残っていない。



「それじゃあねリーダー。また一緒にお菓子でも作りましょ」


「私も頑張るっスよ!」


「あいよ、時間のある時は行く。十六夜も頑張れ」



最後の二人に声を掛け、俺はテーブルの上で腹を膨れさせる白玉の元に向かった。

コイツが一番食ってたんじゃねえかな。手持ちのパイは残り2枚程まで減っている。



「随分と堪能したみたいじゃないか」


「キュキュ!」


「美味かったか?」



首を何度も縦に振り、これでもかと肯定を示す白玉だったが…急に顔を下へ向け動きが停止する。

フリーズしたように身動き一つしなくなった。



「白玉?」


『初めての人間の食事。それにキミの手作りだもの。美味しかったに決まってる』


「…は?」



声が聞こえた。

白玉から鈴の様に美しい女性の声が聞こえた。どうやら俺も相当疲れているらしい。

不意に顔を上げた白玉は、先程の様子と一転し人間味のある表情を浮かべる。



『あら、キミでもそんな顔をするんだね、リク』


「幻聴じゃ、ない…」



俺の呆けた顔が面白かったのかコロコロと笑う白玉。

間違いなく声は白玉から発せられている。

いや、口は動いているけどなんだろう。遠隔でどこかから聞こえてくるような。



『夜は私の時間だよ』



懐かしむように夜空を見上げ、無垢な笑みを浮かべる白玉。



「…お前、誰だ?」


『さあ、アナタは誰だと思う?』



悪戯っ子のように映るその顔は楽しそうに、嬉しそうに俺に問いかけてくる。

いや急に言われても分かる訳ない。

白玉、ではないだろう。先程の急なフリーズから別の誰かにすげ変わったように感じる。



「ヒントとか貰っていい?」


『素直な子は好き。そうだね、それなら…』



口元に手を当て、考えるように腕を組む白玉(仮)

少しの沈黙の後にポンと手を打ち口を開く。



『私は夜…夜を導いた者。人の眠りと終わりを見守り続けた者』



急に中二チックな事を言う珍妙な小動物。

謎掛けは趣味じゃねえが、夜を導いた者。

考えを巡らせながら、ふとある事を思い出す。

この島で見つけた情報、月と太陽。

いやでも、これが正解とか謎掛けですらないんだけど。



「『月』…?」


『…正解!』



よく出来ましたと言いながらパチパチパチと拍手する白玉(仮)。すると唐突にアナウンスが鳴り響く。



《上位者の介入によりユニークスキル『月の祝福』の変質が始まりました》


《ユニークスキル『銀月の祝福』を獲得しました》


「なんだって?」


『ただスキルを更新するだけだと芸がないでしょ?』



小首を傾げて茶目っ気たっぷりに宣う小動物。

ウインドウを開きスキルを確認してみる…うわぁ。



『銀月の祝福』

地の底に落ちた月が友好を持つ者に与える特別な祝福。

・夜の間、自身のステータスが上昇する。

・スキルで獲得する経験値が増加する。

・『精神異常』系統のスキルの無効化。



精神異常系統って、魅了とか混乱の無効化か。更に、ステータスの上昇量が増えている。

元々1.5倍だった効果が、2倍。

いやぁ、ステータスの計算が楽になったなぁ。

じゃねえんだよ、何この補正。

なんでLv初期値なのにAGI220もあるの。

運営さんバグった?バグっちゃった??



「えぇ…」


『フフ、とっても嬉しく無さそう。そんな顔も可愛い』



俺の渋面とは反対に『月』はとても楽しそうだ。



『今宵は満月。

地に繋がれる私がアナタと唯一お話が出来る日。

お土産は必要でしょ?』


「その割には何回か機会はあったと思うんだけど」


『最近のアナタ、いつも誰かといるじゃないか』



そうか、夜は大抵配信をしてるし最近は出回る事も多かったから。



『初めては、アナタと二人きりが良かったから』


「なんでそんなに好感度高いんだよ…」



会ったの一度目ですよね。



『ずっと見ていたもの。クロノスの世界で過ごすアナタも、この世界に来て楽しそうに過ごすアナタも』


「クロノスでの俺?」


『ええ、他の異邦人を楽しそうに切り刻むアナタ』



それだと俺が新手のシリアルキラーに思えるんで言い方変えて貰えません?

でも、クロノスからずっと見ていたっておかしくないか、この世界ってクロノスとは別時空のはずだけど。



『今は気にしなくて良いの。ただ私がアナタに会いたかっただけだから…あら』


「ん…鹿?」



『月』が俺の後ろを見て何かに気付く。ついで俺も後ろを振り返ると、いつの間にか鹿が立っていた。

足取り確かに俺の隣に歩いてくる鹿だが、急に『月』に頭を垂れる。



『そう、アナタも彼の事が気に入ったんだよね。

封印が弱くなってるのに外に出ようとしないし、この人と一緒にいたいの?』


「ミューン」



首を上げて頷く鹿に、『月』は笑う。



『やっぱり、リクの引き寄せ体質は凄い』


「俺のせいみたいに言わないで頂きたい」



好き好んで引き寄せてる訳じゃねえ。

動いたら勝手にフラグが立つなんてどうすりゃ良いって言うんだ。

トテトテと白玉の体で鹿に近付き頭を撫でる『月』。

ファンシーな空間なのに俺はそれ処ではない。



『良いよ、認める。キミの拘束を少し緩めてあげる』


「ミュー」


『やっと、一緒にいてくれる人を見つけたんだね』


「話がさっぱり読み込めない」



おかしいな、急に俺だけ蚊帳の外だ。

そんな事を思っていると、急に白玉と鹿の体が発光する。眩い閃光に目を瞑るが、光は一瞬で消失した。



「…なんかお前、体毛緑になった?」


「ミューン」


『さあリク。この子と契約してあげて』



契約。ああ、『テイム』の事か。

いやでも前に使った時は契約出来なかったけど、なんだ体毛が変わった事で出来るようになったのか?

まあ、使えと言うなら使ってみよう。



「『テイム』」



鹿の頭の上に手を置き、アビリティを使用する。

…あれ長いな。白玉の時は結構直ぐに契約出来たはずだけど。



『もう一度』


「『テイム』」


『最後にもう一回!』


「『テイム』ッ!」



三回目を使用した瞬間、ゴッソリと何かが体から抜け落ちるのを感じる。

急な倦怠感に足をふらつかせると、アナウンスがなった。



《『グリン・ケリュネイア』との契約に成功しました》


《称号『災厄の契約者』を獲得しました》


《称号『強き者』を獲得しました》


《『グリン・ケリュネイア』に名付けを行ってください》


《『使役術』スキルのレベルが上昇しました》


《『使役術』スキルのレベルが上限に達した為、上位スキル『使役魔術』を獲得しました》


《アビリティ『モンスター・コール』を獲得しました》


《上位者の介入により『使役魔術』の変質が開始しました》


《スキル『主従使役術』を獲得しました》


《アビリティ『サーバント』を獲得しました》



核爆弾みたいな、ログですね…。


首領の企画した事がこんなスムーズに終わる訳ないじゃん。

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[気になる点] ほーん 色災って云う割には、やっぱ緑なんすねぇ……? やっぱ色じゃなくて光の三原色臭いのに、なぁんで推定:約災さんな某ネコサンダーに間違えられそうな絵を彫られたホワイトリスは瞳の色の…
[良い点] 情報の核爆弾や~w [一言] 潤沢な石を見るとつい引きたくなるのは何故でしょうか…
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