俺の仲間達2
次に向かう場所はBB達の所だな。
こちらもまあ、当たり前だがいつもの組み合わせである。
BB、桜吹雪鱈、メルティ・スイート、十六夜。
あれ、十六夜が紛れてる。
「あ、首領」
「やっほー首領!」
「今お話ししていたのよ」
「こっちはこっちで賑やかだな」
何だろう、女子会?
メルティは筋骨隆々の男性だけど、まあ女性だろう。
というかこの中で一番女子力高いの彼女だろう。
「十六夜もいたのか」
「ええ、ちょっとメルティさんに聞きたい事があったんで参加させて貰ったっス」
「聞きたい事?」
「十六夜ちゃん、お菓子作りに興味があるみたいなのよ」
「へぇ」
意外だ。天才型の十六夜の事だからお菓子作りとかもう履修してるかと思ってた。
興味深く十六夜を見ると、何故かちょっと照れている。
「いやぁ、私料理とかしたことないんスよね」
「お菓子を作って、食べて、貰いたいんだって」
「ああ、ちょっとBBさんストップ!」
BBの言葉で更に顔を赤くする十六夜。後ろでは桜吹雪鱈が口を押えて面白そうに笑っている。
「まあ十六夜も誰かにお菓子を上げたい時位あるよ」
「ついでにその人、最近お菓子作りが出来るって判明したらしいよ~」
成程、共通の趣味を見つける所から始める訳だ。
なんだお前、随分と奥ゆかしい事をするじゃないか。ああ十六夜顔真っ赤だ。
ここは首領として助言を授けなければならないだろう。
「良いか十六夜。大事なのは味じゃなく心だぞ」
「…心っスか?」
「そうね、お菓子作りで大事なのは相手を想う心よ。美味しいと思ってもらいたいって思いながら作ると、きっと美味くいく筈だわ」
「成程…」
流石お菓子職人良い事を言う。うんうんと頷く俺だが、後ろでコソコソ話す声が聞こえる。
「首領気付いてないっぽいね~」
「うん、首領は、超の付く朴念仁」
お前らはなんで後ろで俺を貶してるの?
言っとくけど、俺の敵感知ってスキルがなくても作用するんだぞ?昔山で鍛えたから。
「…分かりました。メルティさん後で教えて欲しいっス」
「ええ、いつでも調理室に来てね。私もその気持ち痛いほど分かるわ!」
謎の共感でいつの間にか急激に仲良くなっている二人。謎のセンサーでも通じ合ったんだろうか。
「ボス、私頑張るっスよ!」
「ああ、お前に出来ない事なんて一つもないだろ」
何かを決意した目をする十六夜に俺も激励の言葉を投げかける。
やはり大事なのは根性、そして感情。
「やっぱり分かってないっぽいね~」
「首領は、絶の付く朴念仁」
「先行き不安ねぇ」
味方はいないのですか?
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「ほれほれ、刃の坊主もっと飲まぬか」
「翁、ゲームとは言え酔っているのか?」
「爺さん絡み酒じゃねえか」
あそこのテーブル混ざりたくねえ。
刃狼とゴドー2号、それに凱歌か。ゴドーのヤツワイン持ち込んでやがるな。
よし、ここは戦略的撤退…あ、目があった。
「おお、首領。どうしたこっちにこんかい!」
「おい誰だゴドーに飲ませたヤツ」
「首領、すまない」
「違うんだよボス。いつの間にか飲んでたんだ」
聞けばどうやら、凱歌が刃狼に戦い方のコツを聞いてる最中アイテムボックスから取り出して飲んでいたらしい。
いつもは温厚なゴドーだが、ゲームとは言え酒が入るとキャラが変わる。
「どうした首領、ほら飲まんか」
「ガッツリ絡み酒じゃねえか。飲む飲む」
ゴドーから杯を受け取り一息に飲む。随分酒精の強いヤツを持って来たらしい。
「ほれ、次はお前だぞゴドー」
「なんじゃ、首領自ら注いでくれるのか」
ビンをひったくりゴドーの杯に酒を入れる。並々と注いだそれを一気に呷る。
すると、先程までの勢いはどこへやらゴドーは机に突っ伏しイビキを掻いて寝てしまう。
VR世界ではアルコールに似たデバフが掛かるが本物が入る訳ではない。泥酔のデバフ効果は急激な睡魔。これでもう少し寝たままだろう。
「流石首領だ…」
「俺、ゲームの中でもあんな強い酒飲めねえんだけど」
「高々ワインだろ、あんなの飲んだうちに入らねえ」
昔から酒には強い方だ。会社の付き合いで飲みに行った時、呑み比べとか言って面倒だから全員沈めた事もある。
ついでにそれ以来、酒の強さと目付の悪さでついたあだ名が蟒蛇。
嫌な記憶を思い出した。
「そうだ、刃狼。いつも大量のマニーを投げてるけど大丈夫なのか?」
「問題ない。狩りをすればそれ以上に稼ぎになる」
「刃の兄貴、最近Lv60越えたらしいぜボス」
「すげぇなおい」
まだ一か月ちょっとしか経ってないはずなんだけど、もう60行ったの?
「翁から定期的に新しい装備が届けられるからな。首領のお陰で出費もない」
「全部お前らからの素材とかマニーだけどな?」
「そうは言っても、送ったヤツは全部ボスのもんだからな」
…お前らがいいならそれでいいよ。
「他に足りない物とかはある?」
「…武器だな」
「刃の兄貴ってボスと同じで武器の消費激しいもんな」
武器か。確かにうちのクランには鍛冶師がいない。
NPCや他のプレイヤーに打って貰うのも良いが、専属が欲しいか。
「鍛冶、そろそろ鉱石も集まってきたしやってみるかな」
「ッ!…首領が武器を打ってくれるのか?」
「そりゃあ…値千金だ」
お前らの中で俺の立場ってどうなってんの?
まあ、でも時間はあるし鍛冶台だってこの街にある。
そろそろやってみるか。
「今度試しにやってみるよ」
「期待している」
「うぉぉぉ、燃えて来たな!」
目に炎を灯している二人と未だにデバフの切れないゴドーと別れ、俺は別のテーブルに行く。
ワイン?そりゃ勿論押収したよ、もう空だけど。