俺の仲間達1
さて、俺の突然の厄ネタ暴露により全員が阿鼻叫喚した会場だが一先ずの静けさを取り戻し、今は各テーブルの連中が各々お喋りに興じている。
周りの様子を見ながら微笑みを浮かべ、俺は今全力で現実逃避をしている。
「聞いてるのお兄!?」
「白玉の時も驚きだったけど、これも凄いよねぇ」
「この果実、ここで取れた物ですの首領?」
幹部達が集まるテーブルで俺は今椅子の上で正座を強いられていた。
「あの、悪ふざけが過ぎたのは謝りますので正座を解いても…」
「まだダメ」
愛する妹からの冷たい言葉に俺は項垂れる。
横を見れば月見大福がニヤニヤ、女王は果実を凝視中、朱雀も俺を見て口角を上げている。
助けて朱雀!と視線を送っても、首を横に振り拒否する始末。やらかし具合ならお前も同じだろ。
「というか、そんなにヤバい事した覚えはないというか…」
「白玉ちゃんの時は配信だったし、他のもリアルで聞いてたけどこれは聞いてない」
だってサプライズだし…。
皆楽しんでるから良いじゃんってお兄ちゃん思う訳。
ああ、ダメですか。そうですか。
「まあほら、いつもの事という事でここは一つ…」
「…もういいよ、お兄がサプライズ好きなのは知ってるし。でも流石にこれは心臓に悪い」
「すいません」
平謝りするしか兄が取れる行動ってないんだよ。
ヒエラルキーで兄が上なんて事はこの世には存在しないのだから。
「にしても、これ凄いね。
食べただけで完全回復とバフ効果」
「調理アイテムは今の所嗜好品留まりですもの。
どちらかだけでも他のプレイヤーは騒ぎますわよ」
「戦いの際も使いたいが、流石に今は厳しいだろう」
公表する気なんて更々ないけどね。他のプレイヤーへの恩恵とかどうでもいいし。公平、平等クソくらえ。この世界はゲームだぞ。
「口外する者はいないだろうけど、一応後で言っておこうか」
「それが良かろう」
話は纏まったようなので、俺は朱雀に声を掛ける。
「そうだ朱雀。今は龍狩りって言うのはどうなの?」
「万事順調…と言いたい所だが少し悩みがある」
「へえ、朱雀が悩んでるって事は戦闘以外?」
「うむ」
月見大福と二人で珍しいと朱雀を見る。
コイツは戦闘狂だけど、割となんでも出来る。対人関係も卒なく熟すし頭も良い。
「首領、明日時間を貰っても良いか?」
「というと」
「少し協力して欲しい事がある」
これまた珍しい事だ。最終的に自己完結して結局戦場に戻る男が協力とは。
でもまあ、頼まれたのならやぶさかではないさ。
「所用故、すぐに終わるはずだ」
「いいよ、何でも手伝う」
「助かる」
「二つ返事でオーケーすると、また厄ネタに巻き込まれるよ?」
「このクランでは首領に並ぶフラグ建築士だからな」
「…うむ」
分かるぞ朱雀、返す言葉が見当たらないんだろう?
俺もよく同じ事になる。
話も一段落ついた事だし別のテーブルに行こうか。
近いのは、八千代達の所かな。
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「皆、楽しんでる?」
「あ、リッくん!」
「初手であんなトラップ仕掛けてくれたが楽しんでるぜぇ」
「右に同じくでさぁ」
「楽しいよ~」
八千代、蛮刀斎、HaYaSE、flowerdrop
八千代が組んでいるパーティメンバーだ。八千代と蛮刀斎が前衛、HaYaSEが後衛、flowerdropが回復。
随分バランスが取れたパーティだな。
「リッくん、この果実ってどこで取れたの?」
「ウチも気になってた」
「ああ、ほら西の森だよ。
あそこの森に群生してる場所があったんだ」
「白玉ちゃんの住処!」
「そりゃ俺らも気付かねえや」
「基本ここに来ても物置いて掃除して帰ってるだけだからなぁ」
なんで掃除が常習化してるんだろう。
助かってるけど普通仲間の家掃除して帰る?
「まあボスだからねぇ」
「家政婦さん!」
「お嬢も楽しそうに掃除してやす」
「似合わないがなぁ」
「HaYaSE後で闘技場ね?」
「やだなぁ」
最近の流行りは闘技場なのかね。HaYaSEと八千代は昔からこんな感じでよくケンカをしていた。
それを蛮刀斎が止めに入ったりしてたっけ。
懐かしさに少し笑ってしまうと、八千代が顔を赤くしている。
「HaYaSEのせいで首領に笑われた!」
「俺じゃねえだろぉ」
なんだかんだで回ってるのを見るに、相性は良い奴らだ。
蛮刀斎もflowerdropも微笑まし気に見てるのは、何だろう喧嘩する子供を見る感覚?
「二人もお疲れ様だな」
「俺はお嬢の護衛ですから」
「ボスからお目付け役も頼まれてるし、見てると楽しいもん」
flowerdropはイケイケギャルのような風貌だが、その実このクランの中では数少ない良心派だ。
最初にあった時はかなり好戦的だったけど、今じゃ牙が抜けたのか穏やかそのもの。
蛮刀斎に関してはマジでリアルで護衛らしい。八千代極道疑惑やっぱり濃厚か?
「さて、それじゃそろそろ行くかな」
「またねリッくん!」
「またなぁ首領」
さっきまで喧嘩していたのに素早い切り替えだ。