赤い鉄砲玉
急な気温の変化にやられて体調崩しました。
皆様方も風邪にはご自愛しやがり下さい。
「ようゴドー、待たせた?」
「何、石窯を確かめておった故問題ないわい」
転移後、ベッドで眠っている白玉を確認し、件の民家へ向かうとゴドーが既に家の中で石窯を観察していた。
俺も中に入り石窯を弄ろうとすると、一人多い。
ゴドーの横にいる男。赤い髪をオールバックにした八重歯が輝くメルティとは別のマッスル。
「源氏小僧も来てたんだ」
「おうよ首領!力仕事がいるかも知れねえなら俺様の出番だぜ!」
「相変わらず元気だな」
「クカカッ、それが俺様の取柄だからなぁ!」
源氏小僧。クロノスでは巨大な戦斧を笑いながらぶん回してた狂戦士。
考える事が嫌いだから取り敢えず手が出るタイプの脳筋だ。
「シモンと白椿は元気?」
「おうよ!いつも首領の配信見ながらニヤニヤしてるぜ!」
「それは結構」
源氏小僧とシモン、白椿は三人で行動する事が多かったからか今もパーティを組んでいる。
というかクランでパーティ組んでないのって朱雀か刃狼かゴドー位?ああアイツもいたか、羅刹丸。
忍者ロールって今どうやってんだろう。
ああ、でもアイツアレがあったわ。影魔術。
クロノスの時はよく護衛とか言って俺の影の中にいたっけ。
「それじゃ、早速始めよう」
「うむ、とは言ってもこれ位ならば掃除と網の取り換えで事足りるじゃろうがな」
「え、俺様用無し!?」
「ホッホッホ、取り外しが難しい時は頼むわい」
「もしかしてまたSTR一点?」
「おうよ!」
相変わらずのバーサーカーである。
ステータスの一点掛けなんてハイリスクだって何度言った事か。いや、俺もAGIにしか入れてないや。
取り敢えず、三人で分担し石窯の掃除を始める。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「時に源氏、シモン達が嘆いておったぞ。いきなりモンスターの群れに突撃し、常に瀕死の状態で帰ってくると」
「ゲェ、あいつ等翁にチクりやがったのかよ!」
「そのバーサークっぷりもう少し改善したら?」
「装備の修繕も大変じゃわい。どうして一日足らずで全壊手前まで壊れるんじゃ…」
「全壊手前って、八千代とか刃狼でもやらないよ」
「あの二人と一緒にするんじゃねえ!
てか刃の兄貴なんて上裸じゃねえか!」
「八千代は普通に服着て避けてるじゃん」
「あんなぴょんからぴょんから避けるとか趣味じゃねえな!」
「それで装備を壊したら元も子もないじゃろうて…」
「どうしてこんな狂戦士になってしまったのやら…」
「いや、この戦い方勧めたの首領じゃねえか」
「そうじゃの、『お前は常に敵だけを見て突撃しろ』とか言っておったじゃろうが」
「ここで俺に飛び火しちゃう?」
「そりゃそうだろ」「そりゃそうじゃろ」
「マジかぁ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、粗方綺麗になっただろうか。
湖から水を汲み、丁寧に窯の中を拭きながら一息つく。
時間を見れば一時間は過ぎているようで、他の二人も一段落したようだ。
「それで後は火を入れて焼き加減を確かめるだけじゃの」
「首領、なんか焼くのねえの?」
「焼くのかぁ」
アイテムボックスから在庫飽和を起こしていそうな小型の魔魚三匹とフレアリザードの魔石を取り出す。
ゴドーが新調した新しい網の上に串を刺して乗せ塩を振り、火を付ける。
「お前らが釣ってきたのまだ大量に残ってるんだよ。
誰だ、素材と一緒にまだ魔魚突っ込んでくるヤツ」
「カンペイじゃね?」
「あ奴、首領の飯が食えると吠えておったからの」
ああ、アイツならやりそう。なんで同じ男の料理なんざ食いたがるんだろう。俺は可愛い女の子の方が良い。
段々と焼けた匂いが漂ってくるので、串を回して両方焼く。
「おお、良いね良いね。なんかキャンプしてるみてぇだ!」
「原始的じゃからこそ良いのう」
「石窯って言うて原始的か?」
話ながら数分待つと、すっかり焼き上がった魔魚が三匹。
さて食べようかと思っていると
「キュキュ!!」
「やべ、バレた」
「美味いもんの独占はダメだよなぁ白玉!」
「匂いでも嗅ぎ付けたのかの」
入り口から猛スピードで俺に突進を仕掛けてくる白玉。魚を置き抱き上げると、グーパンでポフポフと俺の胸を殴ってくる。
「悪かったって、半分な」
「キュキュ!」
「変わり身速いなぁ」
「可愛らしいのう」
男三人で小動物に和みながら魚を頬張る。
「…うん、特になんもなさそうだな」
「煤もついておらんし、これなら問題なかろうて」
「うめぇうめぇ!」
「キュキュ!」
一人と一匹魚にがっついてるのがいるけど、石窯の調子は問題なさそうだ。
これなら明日の焼き上げも大丈夫だろう。
ゴドーと明日の段取りを話し合っていると、ふと外套が引かれる。
見れば、白玉と源氏小僧がまだ足りないというかのように俺の方を見ている。お前らもしかして思考回路同じなの?
まあ、源氏小僧はさっき働いてくれたからいいけど白玉お前…まあ可愛いから良いか。
「さて、それじゃあ明日の前祝いって事でじゃんじゃん焼くか」
「うっしゃああああ、やったな白玉!」
「キュキュキュ!!」
「日本酒が欲しくなるのう」
ああ、まだワインしか売ってないんだっけ。
アズマ観光してる朱雀に聞けば米とか買えたりしないかね。
魚を焼きながら騒ぎ、夜が更ける。