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迫る狂刃

出たなウェパ公、今度こそしばき倒し…倒し…ウェパル…?ウェパルちゃん…?

・・・・・・・・ウェパルちゃんだ!!(洗脳)

なんて事のないレベル上げの為の狩りだった。

私と春姫とユキは最近始めたアルテマ・オンラインを遊び始めた。最初はモンスターとかが怖くて何度も死んじゃったけど、それでも慣れてきてレベルも上がっていって…。

今日はレベルを上げながら、次の街を目指そうとこの森に入った。



「ほい一人目~」


「きゃあ!」


「ヤス早すぎるって」


「追い込まねえとつまんねえじゃん」



突然姿を現したプレイヤー達は、いきなりユキに斬りかかった。装備が整っていて、頭の上に赤い文字で名前が浮かんでいる。

レッドネーム。ゲームを始める前に読んだ用語集に書いてあったプレイヤーだ。

見れば後ろにも二人同じくレッドネームのプレイヤーがいる。

なんでこんな所にいるの…。

何とか三人で集まって武器を構える。



「お、一丁前に武器構えてる!」


「はは、足震えてんじゃん」


「おいおい大丈夫かよ」



頭に響くうるさい笑い声。私達になんていつでも勝てる余裕があるのだろう。

武器も防具も私達よりも上等だ。三人で戦っても勝てるとは思えない。



「アリサ、どうする?」



ユキが私に聞いてくる。どうするもなにも、戦うしか道はない。

このアルテマ・オンラインはリアルを追求したゲームだ。PK行為だって容認されているこの世界では通報した所でたかが知れている。

PKに負けたら装備とお金をロストする。初めて間もない私達じゃたかが知れてる金額。



「どうしてこんな事をするんですか?」


「楽しいからだよ」



男の答えに私は歯を強く噛んだ。

楽しいから、ただそれだけで私達を襲った。愉快犯というのだろうか。

損得関係なく、ただ楽しいから人を襲う。



「下種が…」


「おー睨んでる。怖いなぁ」



春姫も悔しいのだろう。男達を強く睨み付け武器を構えるが、それでも男達は笑っている。



「でもさ、罠に簡単に掛かるとは思わなかったな」


「ヒヒッ、新規なんだから当たり前だろ」



罠。この挟み撃ちの事か。

最初から狙ってたのか、私たちはまんまとこいつ等の作戦に嵌められたらしい。

初めてのPKプレイヤーに私は手足が震えて泣きそうになってしまう。こんなはずじゃなかった、ただ楽しくゲームがしたかっただけなのに。こんなのってないよ。



「おいおいこいつ等泣いちゃいそうだぞ」



目の端に溜まる涙を拭い、私たちは目を合わせる。

やろう、例え勝てなくてもこんなの悔しすぎる。

武器を構え直し踏み出そうとした時、男の一人が口を開いた。



「ホントに可哀想だよな。俺達首狩道化に目を付けられるなんてよぉ」



その時、男の首が飛んだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



反射的にやったけど、まあ後悔はない。

取り敢えず俺達のクランの名前を騙った男の首を落とし、他の連中に向き直る。

うん。被害者、加害者問わずぽかんとした顔で俺を見てる。

そりゃそうだろう、いきなり一人首が飛んだんだから。



《リク怒ってる?【月見大福】》


《こんな名前嫌だとか言ってるけど、一番このクランが好きなの首領だしなぁ【HaYaSE】》


《リッくんかっこいい!【八千代】》


《あーあ、新規のPK初場面がスプラッタか【凱歌】》



コメント欄はいつものように楽しそうだ。

お、こっちではキルしても消えるのに時間があるらしい。落ちた首がポリゴン片となる前に、連中の前に蹴り出す。



「で、誰が首狩道化?」



まあ改めて見るまでもない、全員知らない顔だ。

そもそも俺のクランは人数が少ないから顔が分からないヤツなんていない。

それでもまあ、儀礼的に聞くのは大事だ。

俺の声を聞いた男が口々に声を上げる。



「誰だテメェは!」


「おいやべえ、界王がやられた!」


「どうやってやったんだよ今の」



今の人、界王って言うんだ。なんだろう、名前負けしてない?

加害者達は随分と喋ってくれるけど、被害者達はなんで誰も喋んないんだろ。

ああ、首見てるんだ。まあどうでもいいけど。



「もう一回聞くけど、誰が首狩道化?」



答えてくれないからもう一度聞く。

すると、男の一人…ヤスだっけ?が口を開いた。



「お、俺達は全員首狩道化のメンバーだ。こんな事してただで済むと思うんじゃねえぞ!」


《なんで敢えて煽るんだろうね【月見大福】》


《力量の差が分からねえんだろぉ【HaYaSE】》


《普通一人やられたら逃げないか?【凱歌】》



そっか、全員か。ならやり易いや。

レッドプレイヤーはキルしてもレッドにならない。

経験値は入らないけど、アイテムやマニーを落としてくれるから実入りが良い。

抜身の剣を垂らし、アビリティを使う。



「『月歩』『新月』『弓張月』」



この因幡流。

『新月』が歩法なら、『弓張月』は呼吸法だ。

中伝を習得する事で獲得できる二つのアビリティはどちらも呼吸法。

静が『三日月』で動が『弓張月』

どちらも面白い効果を持つが、『弓張月』の効果は3分間だけ直線移動中に行う攻撃のSTRとAGIを2.5倍してくれる。


踏み込みと同時に新月が発動し、姿が霞む。

そしたらヤス?の首が落ちる。



「は?」


「ガフッ…」



今度はもう一度落ちた首を反対側の一人にぶつけて視界を奪い、リキャストが完了した『新月』で首を狩りに行く。

単調作業だ、面白味もない。だから俺はベテランを狩る方が好きなんだ。

最後にすぐ横で呆けてるヤツを剣で袈裟斬りにして終了。立ち尽くしてたら強制クリティカルだよ、避けないと。



「つまんないなぁ」


《ほら人外枠筆頭の顔だ【月見大福】》


《なんでもないかのように人の頭蹴ったり投げたりしてる【メルティ・スイート】》


《お、メルティさんおつかれー【凱歌】》


《使える物は何でも使う男だからなぁ【HaYaSE】》


《後で、説明、するね【BB】》



コメント欄は平穏そのもの。

あ、ごめんねメルティ。つまらない物見せた。

というか首も胴体も消えないな。

あれか、この世界蘇生方法が他にもあるのかもね。

口をパクパクしてるが声が聞こえない。



「よいしょっと」



一先ず最初に落とした界王だったかの首を持ち、顔を合わせる。

男との至近距離だからかな。なんか顔強張ってるけど、大丈夫俺ノンケだから。

安心させるように笑い掛けておこう。

ニッコリ



「ッ…。…!」


「おい、なんで顔を逸らしてんだ」



失礼なヤツだな。剣一本追加ね。

首を投げ捨て、落ちた所をアイテムボックスから取り出した剣で貫き縫い付ける。

落ち武者だぁ。

他の落とした首を拾い…あ、最後の一人生首じゃない。よいしょっと。

残り三つの首を集めて一つ一つ丁寧に投げて集める。

横になった生首に顔を近づけ優しく声を掛ける。



「俺のクランにはこれ位でデスするヤツ一人もいないんだ。皆それぞれ強みを持って、俺を殺しに来てくれる」


《いやねえよ【HaYaSE】》


《なんでボクらまで戦闘狂に仕立て上げようとしてるの?【月見大福】》


《八千代はリッくんと斬り合いたいよ!【八千代】》


《お嬢、ステイステイ【蛮刀斎】》



でもお前ら、なんだかんだで俺と戦う時になったら本気で斬りに来るじゃん。

まあ、いいや。



「俺はあんまり気に入ってない名前だけど、これでも仲間達と楽しんで刻んだ名前だからさ」


「ッ。…!」


「もう一度俺達の名前を名乗ってる声が聞こえたら、また首を貰いに来るよ」



俺の言葉に納得してくれたんだろう。

誠心誠意首を振って答えてくれる。あ、首だけだから振動か。

分かってくれたようで嬉しいと安堵していると、急に四人の顔と体がポリゴン片となって消滅する。

大体5分位かな。



「にしてもあの名前を名乗って何が楽しいのかね」


《まあ、クロノスの時色々やったからねぇ【月見大福】》


《悪名が轟けば、便乗しようとするバカもいるもんでさぁ【蛮刀斎】》



ただの中二病患者が付けた痛い名前だろうに、名乗っても得なんてないと思うんだけど。

剣を鞘に仕舞い直し、俺は元来た道の方へ歩き出した。


あれ、何か忘れてる気がする。

これリクくん、ちょっと怒ってはいてもキレてはいません。

コイツがキレると死亡判定なしのKHのレイジフォームソラになります。

皆伝の能力、考えたは良いけど正直ぶっ壊れ過ぎて出しても良いのか迷ってる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素直にカッケェ [一言] レベル88の身にウェパルちゃんはとほひ…
[良い点] いきなりPKにエンカウントしてトラウマになるかと思いきやまさかの天上人登場&虐殺にもう脳みそが追いついてないであろう新規プレイヤーw 君たちは伝説を見たんだ、、、見物料ってこと
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