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第一回隠者くん性能テスト

プロットは既に崩壊している。

俺はただ常に心の田中を信じて書き進めるだけだ。

…正直書き溜めが溜まり過ぎて、どっかで大量排出したかったり。

風吹き抜ける平原。

見れば奥にはバカでかい蛇がおり、所々に怖い顔をしたイノシシがいる。

そう、俺が今いるのは『始まりの平原』。

初心者達がこの世界の仕組みを理解するために訪れるいわばチュートリアルの戦場。

そんな場所で休みを使い今日俺がする事はと言えば。



「第一回隠者くん性能テスト~」


《いえーい!【八千代】》


《ドンドンぱふぱふー【flowerdrop】》


《なんか始まったなぁ【HaYaSE】》


《なんで今更性能テストなんだ?【凱歌】》



説明しよう。

白玉や虹色幼女と最近どうにも性能を発揮出来ていない『隠者』くんであるが、これでもかつてはバグ性能とまで言われたつよつよユニークスキルなのだ。

気配どころか所有者の存在を完全に隠蔽し、あの『死神』の腕を切り落とした最大の功労者であるコイツがユニークスキル(笑)とか言われたら我慢ならない。

そういう訳で俺は今日、隠者を使い一度も戦闘せずに風の都に行こうというわけである。



「ボスの討伐なしで風の都に行けるってのは証明されてるらしいからな」



なんだっけ、花菱…花火…花火職人さんって配信者がそれをやったらしい。なんでもフォレストスネークを相手に脱兎の如く逃走し、風の都の門に入ったとか。

面白い事をするヤツもいるもんだ。

というわけで『隠者』を使用する。



「さて、それじゃあ最短距離で歩いて行こうか」


《歩くんですかい?【蛮刀斎】》


《ここから歩きだとどれだけ掛かるんだろうね【月見大福】》



だってアビリティ使ったらここら辺のモンスターって絶対追いつけないだろうし。

のんびり行こう、のんびりと。

ゆるりと歩き出して、近くにいるモンスターの横を通り過ぎる。

うん、無反応。

目の前で手を振ってみても我関せずと草を食べている。



「名前は、スモールボアか」


《時々群れで行動する猪だよ【月見大福】》


《ヒュージボアは刃くんが最初狩ってたモンスターだね【八千代】》


《あれを初日にソロ狩りってよく考えたら意味わからねえ行動してるなぁ【HaYaSE】》


《訓練の賜物だ『100000マニー』【刃狼】》



訓練って何?俺達とは別の世界で生きてるの?

ボアを放置し先に進む。ここで狩ってしまうと、隠者の効果が切れる。取り敢えず草を食べてるところでも撮っておくか。

『隠者』って使い易いんだけど、リキャストが12時間なんだよね。

ユニークスキルのアビリティは基本的にリキャストが長い。刃狼の『復讐の剣』だったり、俺の『新月』だったりは例外だけど。


辺りを見渡しながら示される方向に歩くと、また見た事のないモンスター。

赤い体色をしたトカゲが日光を浴びながら寝ている。



「こいつフレアリザードだろ」


《リクがよく使う魔石だね【月見大福】》


《口から火を噴くけど、射程が短い【凱歌】》


《経験値は美味しいよ!【八千代】》



へぇ、経験値美味いんだ。

近付いてみると、ちょっと可愛いな。

短い手足を仕舞い込み熟睡する姿はトカゲでも可愛い。コイツもスクショ撮っておこう。



《戦場カメラマンみたいだね【月見大福】》


《認識されないなら天職じゃね?【凱歌】》



カメラマンね、ちょっと良いかも。

こういうモンスターの日常風景を取るのも楽しいもんだと、再び歩き出す。

まだ見ぬモンスターが俺を待ってるぜ!








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「飽きてきた」


《だろうなぁ【HaYaSE】》



あのね、誰も俺に気付いてくれないの。

結局『隠者』はナーフなどされていなかったという事か、ここら辺に生息するモンスターは粗方スクショに収めたしなんなら新規っぽいプレイヤーの一団ともすれ違った。

誰も彼もが無反応。プレイヤーなんて後ろでピースしてるのにずっと談笑している。

そんな調子で進む事二時間。

コメント欄を見て雑談しながら歩いていたから良いものの、一人じゃ途中で島に帰るぞ。



「今どれ位歩いたんだろう」


《大体半分来たんじゃないかな【月見大福】》


《戦闘がないとこんなに早いんですかい【蛮刀斎】》


《普通は何日か野営して行く所だしなぁ【HaYaSE】》



半分位ね。ここから後二時間か。



「アビリティ解禁していい?」


《面倒臭がってる~【八千代】》


《フォレストスネークまでなら良いんじゃない?【月見大福】》


《俺も賛成【凱歌】》



よし、許可取ったし走り抜けるか。

少し体を動かし、アビリティを使用しようとしたその時だった。


キャーーーー


叫び声が聞こえる。



「なんの音?」


《悲鳴?【八千代】》


《首領、四時方向森の中だ【軍師カンペイ】》



四時方向?

後ろの森、まあうちの島よりは格段に狭いが森。

ああ、さっきのプレイヤー達がいた所ね。

悲鳴かぁ、なんだろう。ヒュージボアにでも遭遇したのかな。



「ちょっと野次馬しに行っていい?」



日本人たるもの野次馬根性が染みついているらしい。めっちゃ面白そうだから見に行きたい。

俺がそういうと、クラメン達も大いに盛り上がっている。



《行っちゃおう【月見大福】》


《良いね、行こう行こう!【八千代】》


《面白そうな事起きたなぁ!【HaYaSE】》


《獲物はなんだ人か!モンスターか!【凱歌】》



そう我ら元はPKクラン。

こういう面白そうな事にはノリノリで参加しちゃうのだ。いつも冷静な月見大福すらも乗り気である。

アビリティを使い森までダッシュ。



「『月歩』『新月』」



ぴょんからぴょんから兎の如く跳ね走り、数分も掛からず森の中へ。

見れば数人の男プレイヤーが三人のプレイヤーを囲っている。さっきの一団だな。

数人の方は頭の上に赤文字で名前が書いてある。

ヒャッフー、悲鳴の先はここかぁ!

PKだ、PKだな?トレインでもなく普通のPKだな!?

木の上に飛び乗り様子を観察する。

声が聞こえてきた。



「おー睨んでる。怖いなぁ」


「こんな罠に簡単に掛かるとは思わなかったな」


「ヒヒッ、新規なんだから当たり前だろ」


「おいおいコイツら泣いちゃいそうだぞ」



ギャハギャハと笑う男プレイヤー。

おお、古典的なPKだ。ちょっと面白い。



《あの装備、牙鮫の防具だね【月見大福】》


《わざわざアルトメルンから遠路遥々新規狩りかぁ?【HaYaSE】》


《新人さんかぁ、強い人と戦わないとつまんないのに【八千代】》


《そりゃ八千代は生粋の戦闘狂…【凱歌】》


《歌くんなんか言った?【八千代】》


《地雷踏みやがった…【蛮刀斎】》


《いえ、なんでもナイデス【凱歌】》



へえ、風の都から来てるのかあいつ等。

というか何でまだ残してるんだろう、喋ってないでとっととやればいいのに。

不思議に思っていると、男の一人が喋った。



「ホント可哀想だよな、俺達首狩道化に目を付けられるなんてよぉ」



なに?






次回『迫る狂刃』

どっちが被害者かは、お分かりですね?

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