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小屋作り

エフトラとイムラウが欲しかったのに、周年当日のガチャが怖くて引けなかった男は私だよ。

なんであの時引いておかなかったんだろう。10000バリア超欲しい。

そもそも厄ネタとはなんぞ。

なんて事を最近考え出している俺は今日は釣り場の近くに掘っ建て小屋を作っていた。

いやだってさ、謎のフラグばっかり立てるとはいっても俺全く冒険とかしてないし、もしかしたら他のプレイヤーだって気づいてる可能性も無きにしも非ずな訳で。

だから俺がいちいち悩むのもお門違いだと思うのよ。

トンカントンカンと木の板を無造作に打ちながら、そんな事を考えている後ろでは鹿が悠々と寛ぎながら俺を見ていた。

最近は俺が一人でいる時はどこからともなく姿を現して遊んだりしている。

白玉?鹿の上で寝てるよ。



「ミュー」


「忙しいから後でな」



ほら、よく見ればどこにでもいる鹿じゃん。

寂しがりやの鹿に頭を悩ませるなんて馬鹿な話だと思わないか。

さて、造形もへったくれもない小屋を何故俺が作ってるかと言えば、ここにも転移場所を設定できないかと考えた。

ベッドを置きさえすれば出来るかもしれないけど、それじゃあ味気ない。

漁師小屋とはいかないが、最低限テーブルとイス位は置いておきたいし。

完成までもう少し、後は屋根を打ち合わせれば完璧なんだけどどうやって登るか。

『月歩』は空中で止まる事は出来ないしなぁ。



「梯子でも作るか?」


「ミュ?」



どうにかして上に登る事が出来ないかと考えてる俺の横に鹿が来ていた。

遊んで欲しいならもう少し待ってなさい。今度フリスビーでも作ってあげるから。

鹿ってフリスビーするのかね。



「なあ、お前ならどうこの上に登る?」


「ミュー」



流石に無理だろうなぁ。

そう思っていると、急に鹿が発光し出した。

何か悪い物でも食べた?

突然光り出した鹿は前足で一度大地を蹴る。

あ、白玉が跳ね起きて俺に飛びついた。

するとどうした事だろう。さっきまでただの地面だったその場所から木が生える。木が、生えた。



「え?」


「ミューーー!」



その木は、成長速度という概念を度外視した速さで育っていく。

根を生やし、枝を伸ばし、猛スピードで高さを増す木はやがて小屋を越す程となって静止した。

茫然とした俺の横から鹿が枝に飛び乗る。

ああ、成程。お前はそう登るのね。

鹿に続く様にして俺も枝に飛び乗ると、なんとも丁度良い高さ。

これなら角材を組んで屋根を作れそうだ。

こちらを見て気持ち嬉しそうな鹿を一撫でし、感謝の印として好物となったらしい魔魚の刺身を進呈する。



「よし、日が暮れる前には終わらせるぞ!」


「ミューン」


「キュキュ…」



ごめんな、白玉。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「そうして完成したのがこの小屋ってわけ」


《ああ、またやったのね【月見大福】》


《中々どうして味のある小屋じゃのう【ゴドー2号】》


《植物を操る魔術なんてあったかぁ?【HaYaSE】》


《まあ、首領ですから【ハートの女王】》


《なんで皆慣れてるのよ!?【メルティ・スイート】》


《なんだ新入りか、力抜けよぉ【HaYaSE】》


《メルティ、慣れた方が、いいよ【BB】》


《メルちゃん頑張って!【八千代】》


《小屋完成記念『200000マニー』【刃狼】》



なんとか夜前に仕上げた小屋の完成試写会として配信を付けると、皆からの温かいコメントが流れて来る。メルティは頑張って慣れて欲しい、俺は諦めたから。

悟りって、諦めることが大事だと思うの。

地面に座る俺の足の上に頭を乗せて来る鹿を撫でる。



《そういえばリク、その子はテイムしないの?【月見大福】》


《それ思った!【八千代】》


「一応ちょっと前に試してみたんだよ」



テイム出来なかったんだよね。

改めてもう一度鹿の頭に手を置き、アビリティを使用する。



「『テイム』」


《条件を満たしていない為、契約に失敗しました》



これである。

白玉の時はすんなりと成功したから正直俺も驚いた。

こんなに顔を擦り付けてくるって事は、懐いてはいると思うんだけどな。



《何かトリガーがあるのかもしれないね【月見大福】》



トリガーねぇ。

『聖域』がなくなったら出て来たし、もしかして全部のフィールドの聖域を壊さなきゃないとか?

まあ、今考えても仕方ないか。



「もうお前の名前は考えてるんだけどな」


《なぬ?【†災星†】》


《セイちゃん早かったね【八千代】》



あ、ちょっと嬉しそう。

心なしか擦り付ける強さが増した気がする。よしよし、ここかここが良いのか。

大丈夫だ、今回は白玉と一緒に決めたから俺の独断じゃない。

そうだよな白玉?おい、顔を背けるな。



「キュキュ…」



呆れた声を出す白玉さんを力強めに撫でつける。



「まあ、名前はコイツをテイムするまでのお楽しみって事で」


《案外そのタイミングはすぐに来たりして【月見大福】》


《そういえば兄上。かの宴の件、皆が集まれそうな日が決まったぞ【†災星†】》


「お、ホントに?」



なんでも俺がメッセージを送った後セイちゃんと女王が集計してくれていたようでビッシリと内容が書かれたメッセージが届く。

二人ともこういうの得意だからなぁ。

クランのトップとしてはアレだけど、本当に助かる。

どれどれと内容を読む事数秒。



「三日後か。随分と早かったな」


《皆楽しみにしてましたもの。社畜などはいつでも有休を取れるようにしていたようですわ【ハートの女王】》


《朱雀も参加出来るそうだぞ【†災星†】》



龍狩るのに忙しそうだったけど、良かった。

最近また訳の分からない素材が送られてきてたから、その件についても問いたださないと。


「なら明後日位にメルティの調理室を借りる事になるかな」


《待ってるわリーダー【メルティ・スイート】》


《メルティちゃんニヤニヤしてる【桜吹雪鱈】》


《そこは言わなくても良いと思うの!【メルティ・スイート】》



わちゃわちゃと騒ぎ出したコメント欄に笑ってしまう。皆楽しそうで、俺はうれしいよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鹿さんは果たしてどんな厄ネタを持ってきてくれるのでしょう( ◜ᴗ◝ ) [一言] 前書きを見て久方ぶりにログインしたアイギスの英傑黒チケでユージェンを被らせた悲しみを背負ってください(唐突…
[良い点] 主人公は相変わらずの厄ネタ&イカれたメンバーホイホイ
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