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思わぬ釣りの成果

朝起きてランキング見たら日間2位に入ってて思わず宇宙猫の顔になった私です。

こんな駄文を読んでくれてる皆、愛してるわ。

ネタ切れ起こすまで付き合ってね。

メルティがCCに加入する事になり、俺は彼女の調理室を借りられるようになったのだが、日取りが決まるまで手の付けようがないんのでお開きとなった。

まさか入団希望とは思わなかったよね。

正直適当に金銭握らせて黙らせようと思った自分が浅ましい。反省はしてないけど。


解散した後はクランの皆にそれぞれ日取りはいつにするかとメッセージを送り、その後は特にやる事がないので現在釣り中。白玉もまだ帰ってきてないから完全に一人。

釣り仙人の気分である。



「なんか面白い物釣れないかなぁ」



まあこの湖、未だに魔魚以外釣れた事ないんだけどさ。種類は豊富なんだけどね、種類は。

マスやらアユやら、何故かサケまで入ってたな。

塩焼きだけだと流石に飽きてくるから時々刺身にしてやってるが、レパートリー少なすぎる。

どっかに醤油売ってないかな、塩で食べる刺身とか味気なさすぎるよなぁ。



「ん?」


ぼへぇっと水面と竿を見ていると、後ろから気配を感じる。敵意はないので剣に手は掛けない。俺も成長しているという事か…。

さてとなんだと後ろを見ればそこには、鹿。

鹿?え、鹿?



「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」



思わず顔を見合わせてしまう。

第二原住民発見。もしかして十六夜が言ってた視線ってコイツの事?

此方を見つめるまま微動だにしない鹿。

角は汚れの無い白色、目が緑の宝石のように綺麗だ。

何を考えているのか分からない目で俺を見つめているが、ああもしかして水でも飲みに来たのか?

NPCとは言っても、高度なAIを組み込んでいる為その行動はリアルだ。

だったら鹿も水を飲みにくるなんて当たり前か。



「来いよ、水飲みに来たんだろ?」



俺の言葉を聞くと、鹿が隣に歩いてくる。

近くで見ると改めて分かるが、本当に綺麗な鹿だ。野生なのに毛は整ってるし、目は翠の如き輝きを放っている。

隣で腰を下ろした鹿は、一度躊躇いがちに俺を見た後、湖に小口を近づけ飲み始めた。


コクコク、コクコクと水を飲むのを止めない。随分と喉が渇いていたらしい。

もしかして、仲間達が絶えず釣りをしに来てたから警戒して飲めなかったのかな。



「俺がいる時は気にせずに水を飲みに来ると良いよ」



いない時には好きに飲めばいいし、俺が釣りをしてる時は気にせずくればいい。

そう意味を込めて鹿に語り掛けると、どうやら喉が潤ったようでこちらを見ながら頷いている。

鹿も、可愛いな。

思わず体を撫でようとして手を伸ばすが、特に抵抗は示さない。人に慣れてる設定なのかね。

あまり力を込めず流すようにして撫でる。



「ミューン…」



お前鳴き声そんな感じなんだ。

気持ちよさそうな声を出して俺の脇腹に頭を摺り寄せて来る鹿。

アイテムボックスから魔魚の刺身を取り、差し出してみる。



「ミュ?」



最初は小首を傾げて俺をみた鹿は、少しすると細々と食べ始める。

どこかの本で鹿は雑食と書いてあったし、まあゲームの世界だから大丈夫だろ。

それにしてもどこぞの幻獣の食べ方とは豪い違いだ。

なんか品がある食べ方だね、白玉は直ぐにがっつくから。

鹿を横目に釣り竿を見るが、随分食いつきが悪いな。未だヒットなし。



「食いつかねえなぁ」


「ミュー」



俺の言葉に相槌を打つ鹿。

静かな湖面の様子を眺め鹿を撫でる事数分、二人揃って竿の先を見ている時だった。



キュキューーーーーーー



遠くで白玉の声が聞こえる。なんだろう遠吠えの練習でもしてるのか?

訝しむ俺を他所に、鹿がスクリと体を置き上がらせた。どうやらもう行くらしい。



「もう行くのか?」


「ミューン」



コクリと頷き一度俺に頭を擦り付けてくる。

懐かれたのかね。お返しとばかりに俺も撫で返すと鹿は踵を返し、森の中へ入っていった。



「変な鹿だったな」



急に現れて急に森に帰っていく。いや、野生動物って基本的にあんなものかね。

再び竿に目を向けるようとすると、森を駆け抜け白玉が飛び出してきた。



「キュキュ!!」


「お、白玉おかえり。用事終わった?」


「キュキュ」



頷きながらこちらに近付いてくる白玉を捕まえ、頭を撫でる。鹿も良いけど、このモフモフも良い。

塩焼きを出して白玉に渡して、またさっきの場所に座り込む。



「キュウ?」


「どうした?」



白玉が何か見つけたらしい。それは先程まで鹿が座っていた場所。

そこに、緑の宝石が嵌め込まれた指輪が落ちている。



「なんだこりゃ」



鑑定。


『純緑石の指輪』

独りを嫌い、豊穣を齎す彼女が友好を示した証。

彼女は人を愛していた。彼女は世界を愛していた。

それでも世界は彼女を愛さなかった。

…どうかお願い、あの子を拒絶しないであげて。



テキスト文のみのアイテム。分類は装飾品らしいが効果は一切ない。

なのになんだろうこの香しい程の厄ネタの匂い。

またスケールの大きな話してる。

この島、今から天空島じゃなくて厄ネタ島に変えない?

指輪を持ち、黙り込んでいた白玉が俺に指輪を差し出してくる。

ああ、俺が持ってろって事?。うん、わかった。

指に嵌めた指輪はしっかりと馴染んでいる。



「今度は別のもんでも食わせてやろうか」



もうここまで頻繁に起こると慣れてくる。受け入れるって大事だね。

竿を引く魚の気配を感じながら俺は思考を放棄した。

鹿、可愛いよね鹿。

別に何の変哲もない鹿だよ、ナカヨクシテネ。

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