【閑話】現実の兄妹
続きを書く度にほのぼのが遠ざかっていく。
と言うか、シリアスパートを書く時だけ何故か異様に文量が増える…。
ナニコレ。
あとアイギス様はとっとと石配りやがれ下さい。
運命くんはテュフォンちゃんを実装しないで下さい。
色々あったルディエ観光から一夜明けた今日。俺は手作りのガトーショコラをセイちゃんと楽しんでいた。
え、朱雀の龍狩り?知らん知らん。アイツが運んできた厄ネタだ、俺は当事者じゃないから関係ない。
取り敢えず『頑張れ!』って送って置いたよ。アイツだけなんか世界観光してない?
「それで兄上よ、物資は足りておるか?」
「充分過ぎる程足りてるよ。というかほぼ毎日誰かが俺の島に置いて行ってるんだから尽きることがない」
一緒にガトーショコラをハムハムと食べてる黒髪の女の子がセイちゃんだ。俺の義妹で、一年前から邪気眼が発症したらしく今は右目に赤いカラコンを付けてる。
なんでこんな小動物みたいな子が発症しちゃったんだろう。いや現実逃避は止めよう、俺のせいだ。
俺がクロノスでフィーバーしていた時に、なんの感銘を受けたのか同じく発症してしまった。
俺のせいだ…俺の…
「そうだ、最近俺の家を誰かが掃除して帰ってるみたいなんだけどセイちゃん知らない?」
「持ち回りでしているみたいだぞ。発端はチヨちゃんと十六夜だが、いつの間にかほぼ全員でするようになっていた」
まさかの犯人全員だった。ついでにチヨちゃんは八千代の事だ。この二人は年が近い事もあって仲がいい。
十六夜も主犯かぁ。絶対『ボスの部屋を掃除するのは部下の務めっス』とか言ったんだろうなぁ。
プライバシーもへったくれもあったもんじゃない。
「家以外は立ち寄ってないようだから安心するが良い兄上」
セイちゃんが俺を慰めるように頭を撫でて来る。なんで中学二年生に成人男性が母性を感じてるんだろう。邪気眼なのに。
「皆は今どんな感じなの?」
「ふむ、拠点の話ならば皆風の都に到着しておる。レベルは平均で30前後と言った所だな。一部の戦闘狂いは40を超えたらしい」
ああ、うちの戦闘狂筆頭。
きっと昼夜問わずボスかレアモンスターに特攻かましてるんだろう。
最近投げてくるマニーが10万超えてる時がある訳だ。
というか、それを言ったら朱雀とか今レベル幾つなんだろう。なんかよく分からない素材とか運んできてたし。釈放されたみたいだし後で聞いてみるか。
「それで兄上は、今度は一体何を見つけたのだ?」
「…というと?」
「BBから兄上の様子が少しおかしいと昨日文が飛んできた。BBは勘が鋭いからの」
ああ、バレちゃってたか。まあ先にセイちゃんには言っといてもいいかな。
ここ数日で起きた出来事を洗いざらい話す。果実の事はサプライズなので黙っていたが。
「代償無しの蘇生アイテムに、新しいユニークスキルか…」
「なんでこんなに俺に厄ネタが舞い込んでくるんだろうねぇ」
「それは兄上の悪運であろうな」
取り付く島もない。
それで納得する辺りうちのクランはおかしい。
「まあだが、それは兄上が行動を起こさずとも良いだろう。兄上はスローライフを楽しめば良い」
「俺もそのつもりだよ。クランの皆には言うつもりだけど、他のプレイヤーには秘匿で良いね」
別に情報独占を気取るつもりはないが、それでグダグダ言われるのは面倒だ。出る杭は打たれるというし、これは俺の信頼する仲間達で止めて置くべきだろう。
「それが良かろう。我らは皆、兄上が楽しそうに遊ぶ姿が好きなのだから」
何度も言われた言葉だが、やはり面と向かって言われると照れる。そんなに気にしなくていいのにな。
「そういえば、セイちゃんはそろそろ時空魔術使えるようになった?」
「うむ、他の魔術はMP不足だが短縮転移は使えるようになったぞ」
それは良かった。セイちゃんの時空魔術は万能だ。なんだっけ、昔始祖の魔法使いとか言うNPCに会って教わったんだったかな。
ガトーショコラを食べ終え、紅茶を飲み干すとセイちゃんが立ち上がる。
「では兄上。我は先にアルテマに行っているぞ」
「了解。俺も仕事を少し片づけてからそっちに行くよ」
「分かった。今日は配信は付けるのか?」
「さっきの説明もしたいし、今日はちょっとやりたい事があるからね」
「やりたい事とな?」
釣りがしたい。
実は昨日街を回っている時に釣り竿を見つけてつい購入してしまったんだ。
あの島は空の上にあるみたいだけど、木々は常に青々としている。それはつまり水脈があるかもしれないという事。
「だから今日は湖でも探そうと思ってさ」
「兄上らしいな」
セイちゃんが笑う。まあ、スローライフの一つと言えば何も考えず竿を垂らす事も含まれるだろう。
「あ」
「どうした?」
そうだ、釣りに際して一つやらなきゃいけない事があった。
「白玉に『聖域』切って貰わなきゃ」
自分のマイルームにモンスターって出てくるのかな?