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【閑話】かつての戦場では

ごめん、書いてたら興が乗って割とヤバいキャラ作っちゃったからもしかしたら、ほのぼのカテゴリーが消滅します。

主にこの話でちょろっと出て来るヤツ。

何度夜を越えてもあの日の記憶を思い出す。

クロノスの後継作が発表された日から数日後、俺

達は最後の道化狩りに臨み何度目かの大敗を期した。

準備は万全だったはずだ。

最前線の攻略組で組まれた大規模混合部隊。ユニーク持ちだって何人もいたその部隊は、一時間も経たずに全員ロストした。


最初に後衛組が潰された。時空魔術、彼らのクランメンバーの一人が持つユニークマジック。アンチマジックが機能していなかった。


次に前衛組が潰された。複数のデバフに侵され、思うように動かない体に夜叉達が素早く首に刃を滑り込ませ消えていく。


最後にユニーク持ちが潰された。たった一人だ。その男が姿を現すと同時、半数以上のユニーク持ちが既に事切れていた。事前に対策などを練り合わせても、彼らではダメだったらしい。

男は止まらない。

踏み込んだ瞬間姿が掻き消え、目の前のプレイヤーの首を狩る。確実に迅速に、一言も発さずに狩り続ける様を見てコイツだけジャンル間違えてないか?と思う。

まあ勝敗の理由なぞすぐに分かる。そもそも舞台が違うのだ。

俺達はPvE、彼らはPvPでのし上がった。プレイヤーの隙や癖だって簡単に見抜けるのだろう。

手に持つ大剣を下げると、既に戦場には俺一人しか残っていないらしい。

髪を引っ掴まれ強引に地面に投げ飛ばされる。


「…手癖が悪いなリク」


「うるせぇ、エセ騎士野郎」


今日初めて口を開いた敵に軽く笑ってしまう。さっきまで熟練の暗殺者のような雰囲気だったのに、一言口を開けば三文役者のように小物臭い。

周囲に集まる道化のメンバーは既に武器を持っていない。


「残念だったねジークくん」


「いつもより連携が取れてなかったのですが、もしや他クランとの連合ですの?」


「幾ら粒揃いだろうとアレではただの雑兵よな」


「同意」


「手厳しいな…」


黒髪糸目、赤髪縦ロール、金髪オッドアイ、赤メッシュ武士。

幹部と呼ばれる者達が俺に言う。

最後の道化狩りをやろうと企画したら、銀竜以外にも多くのプレイヤーが集まった。結果はこの通りだが。



「道化狩りって言ってもまだ一回も俺達の事狩れてないじゃん」


「ウグッ…!」


「それでよく最前線とか名乗れるよな」


「カハッ…」


「正直恥ずかしくないの攻略組。お前ら少し前『死神』にもカモられてたじゃん」


「ウッ…ウウッ…」


「待ってリク。ジークくん本当に泣いちゃう」


糸目が止めてくれねば俺は今泣き崩れていた。

返す言葉が見つからないとはこの事か。PKのトップクランにキル率独占一位のPK。この7年俺達は一度も彼等に勝った事がない。

道化達には奇襲や罠、モンスタートレイン。死神に至っては多対一で一方的に蹂躙された。

何だこのリアルチートモンスター共。


「まあいいや。パーティもまだ途中だし早く終わらせよう」


「このリア充が…!」


「銀竜にも女の子いるじゃん…」


そういう問題ではない、この聖夜の為に俺達がどれだけ時間を費やしたと思っている。俺だってパーティがしたかった!

目を見開き心からの叫びを口にしていると、リクが使い古した直剣を構える。

芝居掛かった口調でにやけ笑いを浮かべ俺に語りかける。



「辞世の句でも聞いとこうか、騎士様?」


「次は必ず貴様の首を貰うぞ、道化師」



ログアウトしたらチキンでも温めよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルファシア王国南部 竜鳴きの山脈



「それで、道化共の主の情報はどうなっている?」


『移行から約二週間、未だ音沙汰がありません』



コールから聞こえる副官の力ない声に頷く。

アルテマ・オンラインの初日以降ヤツの顔を知る者達に片端から尋ねてみたが一切情報が掴めなかった。



「一体どこに行ったというんだ…」


「団長、かの首領はもう引退したのでは?」



絶えず増え続けるアルテマの人口だが、元のプレイヤーが皆口を揃えて移行に乗り気だったといえば、決してそうではない。掛けた時間が全て泡となる、そういった理由から引退を宣言するプレイヤーも少なくなかった。

だが、ヤツはまだこの世界にいる。



「あの『夜叉』や『狼』。それに幹部達までこの世界にいるんだ。アイツが引退していれば、全員揃って引退する」



確信があった。

あの道化達は統率が取れているが、それは一重にリクという基盤があったからこそ。

彼が引退でもすれば、そもそも残る者はいない。

今銀竜騎士団の遠征中だ。街の様子を常に把握する事は出来ない。



「遠征が終了次第、俺もルディエに戻る。引き続き頼んだぞ副官」


「了解しました」



コールを切り、俺は目の前に聳える山脈を見る。

一般のプレイヤーは既に北へ進み二つ目の街を拠点にしているようだが、俺達は南へと進んだ。

推定レベル50。最初のレベルキャップまで進み、この先を見るために。

気付けば銀竜の仲間達は俺を見ている。



「これより竜鳴きの谷の攻略を開始する。俺達は最前線、攻略組だ。困難を友とし先に進もう!」


『おおーー!!』



待っていろリク。今度こそ必ず俺が勝つ。

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― 新着の感想 ―
[一言] この騎士くんも道化がモチベになってて草
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