表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/156

定期謝罪配信5

お前、何回謝罪すれば気が済むねん。

「首領悪くないです。今回に関しては絶対に、断固として首領は何も悪くないと誓えます。慈悲を下さい、憐れんでください、よしよしして下さい」


《うむ【†災星†】》

《ヨシヨシ【八千代】》

《元気を出してくれ、首領。『100000マニー』【刃狼】》

《首領が悪かった事なんて一度だってありません!『50000マニー』【軍師カンペイ】》

《謝罪偉い『50000マニー』【白椿】》

《『10000マニー』【メルティ・スイート】》

《まあ、うん。今回は悪くないと思うよ【月見大福】》

《首領が、私の為に、作ってくれたのなら、嬉しい【BB】》



 今日だけで何度連行されれば気が済むのだろう。

 天空島の自室、後ろに張り付く三人の視線を感じながら俺は地面に頭を擦り付けていた。

 首領としての、クラマスとしての威厳が……死んでいる。



《正直、測りかねているってのが現状だよね。色災、人類罪禍、今回に関しては…なんだっけ、惑星外の何か?【月見大福】》

《それがただのテキストだけならまだしも、干渉してきていたのだろう。明らかにクロノスとは違い過ぎる、我らも領主館の書物を漁っておるが、さっぱり分からん【†災星†】》

《今回はノーギルティで良いでしょう、貰い事故も良い所ですわ【ハートの女王】》

《異議なし【朱雀】》


「皆……!」



 俺は信じてた。

 愛する仲間達ならば、きっと理解してくれると信じていた。



《まあ、情報が増えた後で処せば良いからの【†災星†】》



 駄目そうだ。

 凡そ俺には全人類に与えられるべき人権と言う奴が剥奪されているらしい。



「あ、それと昨日ばったりジーク君に会ったから煽り散らかしておいたよ。ついでにフレンドになった」

「ちょっと待って下さい首領、それは聞いてません」

「白状しようか、キリキリと」


《なんて?【月見大福】》

《なにゆえ?【†災星†】》

《意味が分かりませんが?【ハートの女王】》



 黙っていても後々しこりが出そうだから、ゲロっておく事にした。昨日街端で遭遇した事や素材を見せびらかして煽り散らかした事、それから『天剣』の動向を知れればとフレンド登録をした事。



《帝都連合かぁ、あんまり重要でも無さそうだから流してたけど……ジーク君なら悪くないかな【月見大福】》



 帝都連合。似非騎士が言っていた連中の事は、ウチの情報屋の耳にも入って来ていたらしい。

 アルテマ移行後に増え続けるクラン…その中でも大所帯で統率の取れたクランが新規を増やす為、そして攻略の為に協定を結ぶ。


 

《名前だけなら掲示板で良く見るの。女性プレイヤーしか入団を許さぬ百花繚乱、何でもクラマスが潔癖のきらいがあり、流星の剣と仲が悪いとか【†災星†】》

《流星って、あれだろ。ハーレム野郎がトップに居るクランだろ【凱歌】》 

《困ってる女の子を助けて回ってたら、いつの間にかクランが出来上がったらしいな。何処の主人公だよぉ【HaYaSE】》

《いけ好かねえ、いけ好かねえなあオイッ!【源氏小僧】》

《僻むな、馬鹿【シモン】》



 ハーレム野郎…ろくでなしの匂いがする。

 やだやだ、関わり合いにならないで置こう。



《新規増加ねぇ、道理でババアが熱心に勧誘して来た訳だ。入んなくて良かったわ、マジで【真竺】》

《あの人の場合は自分の趣味優先っしょ【flowerdrop】》

《クロノスもそうだったけど、やけに人生エンジョイしてるご老体多くない?【桜吹雪鱈】》

《儂の事かの?【ゴドー2号】》

《お爺ちゃんも鍛冶してる時は子供っぽいよ!【八千代】》

《確かに【白椿】》

《ほほ、照れちゃうのう【ゴドー2号】》



 人生エンジョイ勢が照れてら。

 


「フラワー&スノーなら知ってるっスよ、配信者の女の子二人が立ち上げたクラン…まあ、親衛隊って奴っスね。私も時々動画見るっス」

「へぇ、面白いの?」

「リアクション芸人を見てる気分になるっスね」



 何か、思っていたのと違う回答。

 普通配信者の女って、もっとチヤホヤ蝶よ花よと愛でられる物じゃないのか。

 


《花菱ちゃんと、雪風ちゃん、だね【BB】》

《ああ、大分前にビビちゃんと手伝った子だっけ【桜吹雪鱈】》

《うん、私も誘われた、よ。直ぐに断った、けど【BB】》


「戦争か」

「待った、首領落ち着いて」

「目が怖いっス、目が戻ってるっス」

「どうどう、ほら此処に白玉が居ますよ。吸って下さい」

「キュキュ!?」



 スゥーーーーーーーウ(深い深呼吸)

 冷却(クールダウン)冷却(クールダウン)


 前脚でテシテシと俺の頭を叩く白玉を吸う事一分、どうにか冷静さを取り戻した。

 危うく、配信者クランの殲滅作戦を開始しそうになってしまった。

 やっぱり、荒んだ心にはもっふもふの小動物が沁みるぜ。


 

「その下手人…もとい配信者はどうでも良い。二度と名前を聞く事も無いし、後で脱獄した『死神』を嗾けるとして…もう一つのクランは?」

「今凄い事言わなかったっスか?」

「流石にやらないでしょ……多分」



 いや、冗談三割なんだけど。

 クランの引き抜き行為ってルール違反だし。

 嫌いなんだよね、そう言う連中…脳内ブラックリストに入れとこ。

 


《凶楽天ね、凶楽天……うん、あそこは【月見大福】》

《ある意味で、あそこも親衛隊と言えようか【†災星†】》



 珍しく月見大福が言い淀んでいる。

 名前からも何か良くない感じがするし、もしかして…裏と繋がりがあるクランなのでは。



《親衛隊、と言うかファンクラブ、いや捜索隊かな【月見大福】》



 シン、と何故か静まり返るコメント欄。

 後ろの三人の顔を見ても、露骨に眼を逸らすか苦笑を浮かべるだけ。


 あれ、なんか嫌な予感がしてきた。



《落ち着いて聞いて欲しいんだけど、リク…彼らはCC、いや……首狩道化の捜索隊だ【月見大福】》

《名目上は首狩道化の動向を探る善良なプレイヤー…だが、その実態は隠れ狂信者の集団である【†災星†】》

《邪教ですわね【ハートの女王】》

《あいつ等、隠してすら居ねえけどなぁ【HaYaSE】》


 

 うわぁ…うわぁ……こわぁ。

 思わぬ所で地獄のような情報が出てきた。

 


《彼らのクラマス、ソロモン公ってプレイヤーがね。キミの熱心な信者なんだけど…クラン、立ち上げちゃったらしいんだよね【月見大福】》

《総勢50人強の古参揃いであるな【†災星†】》



 何だそりゃあ!?


 聞けばどうにも、帝国のあちこちで首狩道化だった頃の悪行を聖書顔負けの演説で吹聴して回ってるとか。

 アンチじゃないか、アンチじゃないのか?

 寧ろ首狩道化のアンチだと言ってくれ、頼むから。



「もうやだ、帝国絶対行かない」

「キュ……キュキュ…キュウ……」

「ボス、そろそろ白玉ちゃん離してやって欲しいっス。死んじゃいそうなんで」


《ヴァロット君もさ、アレは流石に引くって言ってたよ【月見大福】》



 一か月位マイルームに引き籠ろうかな。

 鍛冶とか料理の研究とかやる事も山ほどあるし、モフモフと戯れて惰眠を貪るのも良いかも。

 そうだ、世界樹の末葉を乾かして葉巻とか作ってみよう。

 白玉にバレたら飛び蹴りを喰らいそうだが、集めて来たのはコイツだし、怒らないよね。

 禁煙補助の商品にあるし、医療用具だよ、うん。



「ああ、ボスが萎れて……これもアリっスね」

「十六夜ってさ、割と歪んでるよね」

「今更でしょう」

「何だぁ、やるっスか?今からバトるっスかぁ?」

 

 

 後ろでガンを飛ばし合うの止めようよ、首領は皆仲良くするのが良いと思うの。

 白玉を抱き抱え、ベッドに転がり込む俺の視界には満面の笑みで剣の柄に手を当てる十六夜の姿。

 


「見なよ白玉、十六夜の背中に鬼がいる……そういやオニユリ元気かな。この頃メッセージ来てねえや」



 鬼関連で思い出したが、最近あの本の虫から長文の読書感想文が届かなくなった。

 最後に来たのは何時だったか、確かアレは数週間前。



「まあ、いっか」

「首領、寝っ転がってないで十六夜を止めるの手伝ってよー」

「武器は置きましょう、話せばわかります」


《良いねぇ、盛り上がって来たぁ【HaYaSE】》

《観戦席は首領の部屋だ、お前等集まれ!!【凱歌】》

《せめて本がない場所でやろうね【月見大福】》



 止めてくれ、ここは闘技場じゃないんだぞ。

 


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
> ハーレム野郎…ろくでなしの匂いがする。 あんたは老若男女全員垂らすから格が違うんだよなぁ!?
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 仲間に手を出されると簡単にたがが緩みますね 相手は、引き抜きとか意識してなさそうだなぁ あえてやっていたら?死神と天剣を嗾けましょう
>ハーレム野郎…ろくでなしの匂いがする。 おや、首領? 同病相憐れむかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ