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【閑話】道行く者よ

閑話が続くよ。


現ファン…素晴らしい響きです。

只管メモ帳に溜まった物を何時か放出したい。


あ、それと…今回は若干胸糞?があるかも。


「うえええええええ、ここどこぉぉぉぉ」



鬱蒼と茂る森の中、子供の泣き声が響き渡る。

アルファシアより更に西、そこは未だ発見されていない…ある種族の領地だった。



「いたぞ、こっちだ!」


「人間が、一体どうやって我らの地に足を踏み入れた!」



少年の周りに集う武器を携えた者達の耳には、熊や犬のような耳が生えている。

獣人族…人族よりも優れたステータスを持つ彼らの多くは、人間に友好的ではない。

それが例え子供であろうと、彼らの凶刃は容易く牙を向く。



「ねえここどこなの?僕、道に迷ったんだけど」


「なんだよこの餓鬼、うるせぇ奴だな」



涙混じりに獣人に道を尋ねるどこか少女を思わせる容姿の少年に、彼らは不思議に思った。先程から追われているのに、槍を突き付けられているのに、彼は平然と道を尋ねるのだ。



「この地は獣王陛下の治める獣王国デルトエンデ。貴様ら人間が易々と入っていい場所ではない」


「だからどこだよぉ。名前を言われたって分かる訳ないじゃん!」



駄々を捏ねる少年に、獣人達は怒りを浮かべ始める。元より人族を嫌う彼らにとって、その子供は嫌悪の対象。


武器を持つ手に力を込めて、少年に近寄る。

その小さな命を奪うために。



「リク兄どこぉ、リク兄ぃ」



少年が呼ぶ名前は肉親の物か、その姿を鼻で笑う。



「悪いが、子供だろうと獣王国に足を踏み入れた人間は殺める事を認められている」



獣人は冷酷で、残酷だ。

泣き喚く少年に向けて彼らは、その槍を突き刺した、



「……は?」



はずだった。確かに槍は少年に触れ…そして、粉々に砕ける。

少年の鳴き声がぴたりと止まった。



「チッ、なんだよ。使えない偽畜生じゃん」



舌打ちと共に、少年の雰囲気が変わる。

少女然とした可愛らしい顔を憎たらしく歪め、獣人達を睨み付けるのだ。



「ホント、可愛くもないし最悪。ゲームなんだからもう少し動物に寄せても良いじゃん」


「なっ…!?」


「貴様ッ!」


「うるせぇよ、気持ち悪いよ、口開くなよ」



次から次へと息を吸う様に吐き出される暴言。次いで少年は彼らに向けてひらりと手を振る。



「『愚者』」



突如襲う倦怠感に、獣人達は槍を手放した。

手足は震え出し一人一人と足を地面に付けて…最後に立つのは少年のみ。



「最悪、最悪最悪最悪。これで獣人を名乗ってるのが一番最悪」



その目に灯るのは憎悪一点。

近くに転がった犬の獣人の元へと近寄り、腹を蹴り出す。



「ねえ、もう一回聞くけど。ここどこ?」


「獣王、国…デルト」


「だから、名前言っても分かんねえっつってんだろうがっ!!」



顔と胴を執拗に蹴りつけ、少年は懐から一本のナイフを取り出した。犬の獣人の髪を掴み上げ、犬耳にナイフを滑らせる。



「がああああああッ」


「リク兄が言ってたんだ、物分かりが悪い奴には罰を与えるんだって」



教えた本人も、まさかこんな事をしてるとは思ってないと思う。


情けも容赦もなく、二本の耳を切り落とす。

だが、それでも少年の怒りは収まらない。

猫の獣人を仰向け投げ捨て、次に狙った物は…その尾。



「よいしょっと」


「ッ……………。」


「あれ、猫のお姉さんもう終わり?」



最早言葉も出ず、猫の獣人は事切れる。



「ふう、うん!」



満足げに笑う少年の姿に…誰も言葉を出せない。目の前で行われた残虐、同族の断末魔に怒ろうにも体は言う事を聞かず。

彼らの心を占めている物は、絡みつくような恐怖だ。



「もういいや、飽きちゃった」



ナイフを仕舞いながら、なんて事ないように言う。その言葉に安堵を覚え、獣人達は己を恥じた。

誇り高き獣人が、人族の子供に怯え…安堵さえ浮かべたのかと。



「あーあ、リク兄にフレコ聞いとけば良かったなぁ」



最後にもう一度息絶えた獣人を蹴り、少年は森の中に歩き出す。



「あ、そだ」



不意にその足が止まり、クルリと獣人達の方を向き直る。その顔には最初に見た時のような少女のように可愛らしい顔。



「最後にちょっと遊んじゃお」



無邪気に手を振り、



「『自由への簒奪』」



瞬間、地面から飛び出した紅い荊が獣人達を貫く。脚や腕…四肢に突き刺さる荊は。



「何分耐えられるかな」



荊から、何かが吸われている。

それは生命力だろうか。

吸い上げ、強度を増し…一人目が力を失う。



「あ、あ……ぐっ」


「犬のお兄さんリタイア!」



どさりと落ちた獣人の首に荊が巻き付き、再び宙に浮く。それはまるで空に吊られるような生き物として冒涜的な光景。

狂的な状況をケタケタと笑う少年。


獣人達の心は、折れた。続々と宙吊りになる仲間達を見ながら、熊の獣人は一人思う。


何だこれは、俺達は今…何に遊ばれているのだ…と。

少年の瞳に浮かぶ物は、愉悦と悪意。



「はい五分!凄いね、熊のお兄さん。

でも残念、耐えちゃったね」


「……は?」



いつの間にか、その手の中に握られていた懐中時計を見て、楽しそうに、悲しそうに呟きながら。



「良いよ、マリア」


「あ」



熊の獣人は、深紅の中に消える。


一体何時からそこにあったのだろう。

最後に彼が見た物は白い太陽と巨大な三つ首の犬、異形の怪物だった。








最後まで名前が出ない子。

まあ、お披露目と言うかなんというか…時々名前が出てた『放浪者』くんです。


PKでもないし、何ならプレイヤーの間ではマスコット扱いされる基本的に無害な子。

獣人ガチ勢(耳と尻尾だけは獣人じゃないと宣うガチケモナー過激派)


あ、敵じゃないです。多分。


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― 新着の感想 ―
(っ’ヮ’c)ワア
[良い点] ケモナー過激派のショタくんかいいな... 動物に寄ってる方がいいのわかる
[一言] …まぁ、殺しにかかったら返り討ちに遭っても仕方ないよなぁ。
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