定期謝罪配信4
学マス楽しい(脳死)
全ての事象において、完全と言う物は存在しない。それは不測の事態、あり得ない結果、予期せぬ交錯。
ならばもし、この電脳世界でそれを決定付ける事が出来るのならば、それはきっとこの世界の神のみしか言いようがない。
だから、きっとこれも全ては…。
「運営が悪いと思うんです」
《言いたい事はそれだけか?【†災星†】》
《とうとう運営に濡れ衣着せる気だぞ、ウチの頭【凱歌】》
《そうは行きやせんって【蛮刀斎】》
《今回も大豊作だね、リク【月見大福】》
《ボスの土下座も見慣れて来たじゃん【flowerdrop】》
《儂は慣れたくないのう…【ゴドー二号】》
王国から帰還し、一夜明けた。
自室のベッドに頭を埋め、渾身の土下座を披露している俺が居る。
…あの後、割と真面目に羅刹丸から説教を受けて参ったね。まあ、あの時はまだ許されたから良かったんだけど。
《首領、良くない【BB】》
《これで何人目~?【桜吹雪鱈】》
《八千代も良くないと思う!【八千代】》
《鬼娘を数えて良いなら、二人目っスね【十六夜】》
《クロノスから数えるべきでは?【ハートの女王】》
《乙女心を玩ぶのは良くないわ【メルティ・スイート】》
《…駄目【白椿】》
これである。
おかしいな、俺は仲間達の安寧と楽しみの為に取引を行ったはずなんだが…一体どうして怒られているのだろう。
珍しく白椿までそっち側で参戦してるし。
首領…皆から虐められて胸が痛い。
そもそも相手はNPC…別に良くない?
「HaYaSEが教えてくれました」
《首領…それは不味いぃ!【HaYaSE】》
《ああ…お嬢がHaYaSEを殴りに…【蛮刀斎】》
《とは言え結果は良好です。流石ですね首領【最終社畜V】》
《俺達の為にやってくれた訳だしね~【ハンペン騎士】》
《流石は俺達の首領です【軍師カンペイ】》
《…首領は良くやっている【刃狼】》
評価は半々だが…まあ大体いつも通り。
ここは、気付かれないように、かつ迅速に話題を切り替えるしかない。
軽く咳払いをして…と。
「取り敢えず、ルディウス王から依頼が入ったら個人の裁量に任せるよ。
多少は吹っ掛けても良いが、穏便にな」
《そこら辺はボクが後で王城で話を付けてこようか【月見大福】》
《私も手伝いますわ【ハートの女王】》
「なら頼んだ。もし怪しい依頼が入ってたら…羅刹丸、姫様に伝言よろしく」
「御意にござる!」
お前はそこから返事するんだ。
「それと真竺の件だが、俺は引き込む方が有益だと思ってる。口は軽いが、アイツの事はお前らも多少理解してるだろ」
《首領の決定なら俺に文句はないぜぇ。なんかやったらぶん殴るし【HaYaSE】》
《同じく【刃狼】》
《あの爆発魔ですか【最終社畜V】》
《良いんじゃない?拾ってきなよ【ハンペン騎士】》
《新しい人が来るのね【メルティ・スイート】》
それから各々意見を言ったが、特に異論はないらしい。よし、大体こんな感じで良いだろう…何とかスムーズに話を逸らせた。
「それじゃあ、今日はここまで」
《首領【BB】》
《まだ話は終わって無いっス【十六夜】》
《逃げちゃダメ!【八千代】》
ああ、ダメだったか。
…仕方ない、これもクラマスの務めだろう。
甘んじてこの地獄を受け止めてやるさ。
その後、仲間達からの説教は…日が下がるまで続いたと言っておこう。
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災難を乗り越え疲れ果てた現在。
街の酒場で卓を囲んでカードを広げる者が六人。
「大変だったね、リク」
「まさかあんなに怒られるとは思わなかった…」
「アレは首領が悪いでしょう。所構わず女性を引っ掛けるのは悪い癖ですわよ」
「俺ぁ面白かったから良いけどな」
「兄上はもう少し自分の言動を振り返るべきだ」
「…うむ」
なんで俺が女癖の悪い駄目男みたいな扱いを受けてるのか是非とも聞きたい。
俺は!仲間の為を思って!行動したのに!
…さて、今俺達が何をやってるのか。
このアルテマの世界にも、カードゲームは存在する…まあ古き良きトランプをクロノス風にアレンジした代物なのだが。
「それで、その星遺物…ラプラスの聖櫃だっけ。詳しい情報は今も見えないの?」
「ずっと文字化けしたままなんだな、これが」
「エラーアイテム…いや、未だ実装していないアイテムではないのか?」
「その割に、起動しちゃったんだよ」
そもそも翠玉の時点で実装してちゃいけない存在だろうし…運営が仕込んだ賑やかしとかは、ないだろうな。
おっと、猛獣種が揃った。
ちょっと冒険しちゃおうかな。
「…運営からの音沙汰はないのか、首領」
「全然ない。そう簡単に動くような連中でもないし…凱歌、もう一枚」
「OK、チャレンジャー」
ゲッ、死霊種。
やらかしたな、挽回出来るか。
「首領も良く色んな物を引いて来ますわね。
何かに愛されてるか…もしくは嫌われてますの?私はこのままで結構です」
「兄上を嫌う者なぞクロノスでは山のようにいたではないか。最も兄上が…と言うより我ら道化が、ではあるがな。
凱歌、我にももう一枚」
「…そのままだ」
「あいよー」
にしても凱歌、ディーラーの似合う男である。顔まで伸びた刺青とスキンヘッドって…怖い所のお兄さんかな。
「まあ、この島自体謎しかないんだけどね。北と西の奥はまだ行けてないんでしょ?
あ、ボクはこのままで」
「北は門が開かないし、西は白玉が拒んでくるからな」
「キュキュ」
俺の膝の上で丸くなっている白玉が、顔を上げ…再び眠りにつく。
何時になったら解放してくれるのかね。
「まだその時ではない、と。
ツーペア…引きが悪いな」
いつも乗りに乗ると運に見放されてしまう。
「兄上には勝ったな、スリーカードだ」
「フラッシュ…まあ、こんな物でしょう」
「フォーカードだね」
「…ストレートだ」
ほらこの通り。
月見大福の総取りか。運命の女神に嫌われてるんじゃねえのか、俺。
「相変わらず弱ぇなぁボス」
「リクに賭け事はやらせられないからね」
「懐かしいですわね、金庫襲撃事件」
…そういや、昔カジノで大損した事があったな。その時は既に赤文字だったから、凄く怖そうなプレイヤーの裏カジノ。
有り金全部取られて、腹が立ったから金庫襲撃して根こそぎ奪い取ってやった。
この世界ではまだ見ないけど、あるのかなカジノ。
「お前もとっとと開けよ凱歌。
どうせ、勝ってんだろ?」
「OK」
何でもない事のようにカードを投げ広げる。
竜種で揃えられた五枚の札、配点としては最上位。
まあ、分かりやすく言えば…ロイヤルフラッシュ。
「イカサマは?」
「誓って」
「だろうな、お前も人の事言えないわ」
運、全て運。
別にスキルを発動した訳でもなく、自前の運でこの役を揃えた。
天運、生粋のギャンブラー…正直カジノが見つかったら俺の金を全部をコイツに預けたい。多分三倍にして帰ってくる。
「流石に凱歌には勝てないね」
「てか月見の兄さん、ヤッてただろ」
「あ、バレちゃった?」
「は?」
今、聞き捨てならない事言わなかった?
机の下を指差す月見大福、その先を確認してみれば…カードが張り付いてる。
そういえば、これを最初に始めようと言ったのもコイツ…。
「テメェ謀りやがったな!?」
「リクは目が良いのに、なんでこういうのには弱いのかな」
「それが首領の可愛い所でしょう」
「兄上、我も気付いていたぞ?」
「…某もな」
嘘、もしかして俺だけ…?
打ち拉がれる俺の様子を皆が笑い、凱歌が再びカードを配り直す。
夜が更けるまで、俺は勝てなかった。
色んなジャンルに手を出し過ぎて進捗が…書かねば。