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『報酬』

はい、報酬回?です。

「我が国の英雄殿は…何か欲しい物とかないのかい?」


「…ないんだよなぁ」



姫様達が退出してから彼此数時間は経過したか。初めは赤騎士とか緑騎士が適当に見繕ったアイテムをくれるのかと思ってたんですよ。



『宝物庫の中から、キミの好きな物を一つ与えよう』



そしてあれよあれよと宝物庫。

こんな事を言いださなければ、割とすぐ終わったと思うんだ。いや、最初は俺も欲しい物を言ったよ…良い酒と食材、もしくは金が欲しいって。

貯めこんで置けるし、仲間達からの吊し上げ対策にも最適だ。そしたら、



『王国を救った英雄への報酬が金銭と食材だけなんて、王として傷がつくだろう!』



って、どうやら食品類は別枠らしい。

凄く質の良い蒸留酒、上品な香りと喉に放り付く感覚は素晴らしいの一言だった。

チーズとかウインナーとか、酒とベストマッチで…もうこれだけで良いよ。



アハハ………ハァ。



「なあ、これまだ続くの?」


「それをキミが言うのか!?」



だって武器も防具も装備出来るような物はないし、華美な工芸品とか貰っても置く場所もない。魔導書の類も…セイちゃんにあげれば喜ぶかな?

…と言う様に、どれもこれも俺には不要な代物ばかり。装飾品?気に入る物がない。



「どうするかなぁ…」


「キュキュ?」



もうこうなれば適当に選んで適当に売り捌こうか…そんな事を考えている時だった。

不機嫌なまま胸元に姿を隠していた白玉が、急にニョキリと生えてくる。



「どうした白玉」


「おや、その子は?」


「俺の相棒だ」



もう一度あの自己紹介でもやろうか。

白玉を抱き抱えようとすると…流れるようにスルリと胸元から抜け出し、小さな御足で数ある宝物の中を歩き出した。



「キュ」



付いて来い、なんて言う様に首を此方に向ける。

…どうやら白玉は俺が悩んでいるのを察して自ら報酬を選んでくれようとしているらしい。なんて相棒想いな小動物、折角のコイツの好意…受け入れるしかあるまい。



「キュキュ」



トテトテと擬音が付きそうな歩行は、やがて机に乗せられた一つの小箱の前で止まる。

他の宝物には目もくれず、最初からソレを目指していたかのように。



「それが、お前のおススメなのか?」


「キュウ、キュ」



手に取ると、異様に軽い。

金属質なはずの箱の重量も、中に入っている何かの重量も感じない。



「ルディウス王、これは?」


「…こんな箱、宝物庫にあったかな?」



顔を蓋を開ける。



「…指輪だ」



中に入っていた物は、指輪。

黒い金属箱を台座のようにして入っている一つの白銀の指輪。

花冠の意匠が施されたとても高価そうな指輪。

…いや、また指輪かよ。



「白玉さん、俺指輪にはちょっと嫌な思い出があると言うか…主にバカデカい食い意地の張った骸骨の化け物なんだけど」


『…ソレハ我ノ事デハナイダロウナ、主』



オメェの事だよ食い意地骸骨幼女。

幾ら最近多少好感度が上がったとはいえ、ワンアクションで人を乗っ取りに来たの忘れてないからな、この野郎。



「キュウ!キュキュ、キュ!」



嫌そうな顔をする俺に、何時になく饒舌な白玉が「良いから嵌めろ」と促してくる。



「…嵌めなきゃ駄目?」


「キュキュ!!」



凄い推すじゃん…分かった、嵌めるよ。


恐る恐る台座から取り出し、白玉激推しの指輪を俺の薬指へ宛がう。



「…………うん、何も起きないな」



別段指輪が震え出したり、禍々しいオーラを発する事もない。試しに手を振り回し、指輪を小突いてみたが特に反応なし。

紫玉のような危ない代物ではないかもしれない。ステータスを確認するが、上昇した数値は見受けられない。

ステータスを上げる物ではないのか。



「『鑑定』」



ならばアイテムの情報を直接見るのみ。

自作アイテムとは違い、レベル故に詳しく見る事は出来ないが…名前を見れば何か分かるかもしれない。


数秒の後に映し出されたウインドウに目を向ける。



『繝ゥ繝励Λ繧ケ縺ョ閨匁ォ』

譏滄⊆迚ゥ縲。

諠第弌繝輔Μ繝舌せ繧医j鬟帶擂縺励◆髦イ陦幄」?スョ縺ョ荳?縺、縲

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莉翫b閨匁ォ??荳ュ縺ァ逵?繧玖???窶ヲ菴墓凾菴墓凾蜃コ繧?k縲







「文字化けしてる?」


《外部からのアクセスを確認しました》


「…え?」



急に指輪から発せられた、いつものアナウンスではない別の機械音声。俺の疑問を置き去りに、声は止まる事無く響き続ける。



《ユニークスキル『銀月の寵愛』を確認。

ヒトゲノムの詳細情報を参照、月の遺伝子を確認。承認しました》


《外星反応を検知》


《内部情報『クロノスの連鎖』を確認。

天蓋書庫を参照、星見の司書(ビブリオン)の介入が発生。拒絶により否認されました。

再度、天蓋書庫を参照、星視の司書の介入が発生。拒絶により否認されました》


《上位者の干渉が発生。

外星機構による権利の制限を確認。

階位の枷の発動を確認》


《一時的に階位上昇が制限されます》


《上位者の干渉が発生。

管理者による制限の緩和を確認》


《経験値の貯蔵が解放されました》


《上位者の干渉が発生。

当機並びに管理者の権限により棄却します》


《棄却、棄却、棄却》


《付与概念『壊星』の停止を確認》


《起動準備完了》


《星遺物『ラプラスの聖櫃』起動します》


《こんにちは、遠き星の子。

初めまして、私のマスター。

ラプラスはいつも貴方と共に》



鳴り止む機械音声、痛み出す頭。



「──ナニコレ」


「どうかしたかい?」


「なあルディウス王、俺今…何のゲームしてるんだっけ」


「げーむ?」


「ああ、いやなんでもない」



NPCにそんな知識はない。

だが、そんな事よりも、剣と魔法と神話の世界はどこに行った?今明らかにファンタジーとは掛け離れたおかしな文章の羅列があったような気がするんだけど。


…ちょっと待て。

あまりの状況に脳内が渋滞現象起こしたけど、聞き捨てならない事言ってなかったか?


再度ステータスを開き、俺はある項目に目を向ける。


レベルの数値が赤い。

それに次のレベルまでの経験値量が消えている。



「あー、えー…マジ?」



待ってほしい。

確かに少し前、何の気なしに俺はレベルなんて上げなくて良いかと言った記憶はある。

でもさ、でもダメじゃん。

だって…。



「レベル上がらなくなっちゃったよ」


「キュキュ!?」



俺の肩に上がり、頬を撫でていた白玉が驚いたように声を上げる。どうやらコイツ自身今俺に起こった状況が想定外らしい。



「今からコレ外せば色々戻ったりしない?」


《不可能です、マスター》


「ああ、そう…お前喋れるんだ」


《肯定します。

星遺物『ラプラスの聖櫃』の所有権は既にマスターへ移譲されました》


「そっか…そっかぁ…」



痛む頭に続いて、胃がキリキリしてきた。

どうするのコレ…まだ人類罪禍までは耐えた、耐えたけど…もう許容範囲が軽くオーバーしてるんだわ。

外星、天蓋書庫、星遺物って何よ。


遺物なら分かる、ダンジョンで手に入る外付けの強化アイテムだ。

なんで頭に星が付いてるの?


もうファンタジーがユニバースしてるんだよ。クロノスはまともだったじゃん…ちゃんとファンタジーだったじゃん。俺こっちでは悪い事してないじゃん。


指輪を外そうとしても、薬指に張り付くようにピクリとも動かない。

呪いのアクセサリーだ、これ。



「…ルディウス王、これ貰ってくよ」


「ああ、うん…大丈夫かい?顔色が酷い事になってるけど」


「大丈夫…じゃないかも。

ちょっと外の風に当たってくる」


「行ってらっしゃい?」



いっそこれ秘匿情報として頭から消せば良いんじゃないかな。いや、十六夜に報酬を貰いに行った事知られてるし無理かも。



「羅刹丸」


「…ござる」



影の中から声が聞こえる。


はい、終了。


なんでセイちゃんのお土産に魔導書選ばなかったんだろう。数分前の自分を今から全力で止めに行く事って…出来ないか。

いつもキラキラ俺の守護天使の笑顔がちらつく。




…絶対ブチ切れるだろうな守護天使。

お前レベル上げ禁止な?

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― 新着の感想 ―
爆笑した。主人公の不憫で今日も飯が美味いwww
[一言] こんな風にシステム的にあっさり制限できるあたり、このゲームのレベルって上位者からすると実はあんまり大したことないのかな…? レベルカンストしてても階位が上がってないと瞬殺されるとかありそう
[一言] 外星機構は、階位に枷を嵌めてくるあたり、かなり敵対的姿勢? 管理者は、全部は解除しないあたり、単にできないだけの味方か、ややマシ程度or段階的容認姿勢? 星見の司書は、アクセス拒否してるだ…
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