書物を捲れば
はい、石柱に突撃しデスポンしましたリクです。
いやまさか熱を上げ過ぎて目の前が疎かになるなんて不覚ですね。ええ、戻ってきましたよ。
目的地で白玉さんが待機しててくれましたからカーソル目掛けて全力疾走です。
白玉さんが向けてくる無言の圧は素晴らしかったですね。すみませんでした。
というわけで現在東エリアの入り口にいるんだけども。
《これ、荒野っていうより【八千代】》
《廃れた街って感じだね【月見大福】》
《今北産業【最終社畜V】》
《来たぞ兄上【†災星†】》
《首領 東の街 なう【flowerdrop】》
《把握【最終社畜V】》
「ホントに把握したのそれ?」
把握する要素皆無だと思うんだけど。いつの間にかフードに入っていた白玉が俺の後頭部をぺしぺし叩く。
ごめんって…。
でも、これは凄いな。
石柱が所々に立ち並んだり倒れたりしている。見た目は、どんな感じって言えば良いんだろう。ギリシャ神話とかに登場する街?
他にもポツリポツリとレンガ造りの建築物が建っているが、どれも人の気配がしない。やはり無人か。
「雨風は凌げそうだけど、どこも風化してる」
「キュキュー」
こら白玉、フードの中でゴロゴロするんじゃない。ちょっと重いんだから。
手ごろな家の中に入ってみると、これまた古い。
ベッドやテーブルには埃が積もり本棚の本は年月による影響かボロボロだ。テーブルに置かれた食器なんて割れている。なんで食器が出てんの?
《リク、本とか読めるかい?【月見大福】》
「試してみるか」
月見大福に促されるまま本棚においてあった本を一冊手に取る。
劣化が酷いな。所々虫食いで何が書かれてるのかさっぱりだ。紙も張り付いてる箇所が多いし。
あ、ちょっと読めそうな所がある。
「これ、見えるか?」
《どれどれ【月見大福】》
《ほうほう【†災星†】》
何となく読めそうな箇所を読んでみる。
『月と太陽はその身を削り 色災を封ず』
なんだこりゃ、中二病罹患者か?
他の箇所は破れたり擦れたりしているからか、この一文だけが妙に目に付く。
《月と太陽、色災…?【月見大福】》
《さっぱり分からん【†災星†】》
この二人が分からないなら俺も分からないわ、取り敢えずアイテムボックスにしまっておこう。
他にも何かないかと探しながら俺はベッドに腰掛ける。
《転移位置が追加されました》
「え?」
《転移?【八千代】》
マップを確認してみると、現在地に赤いマーカーが付いている。それともう一つ、ここは…スタート地点か。
試しに押してみると。
《転移を開始します》
数舜の後に視界が暗転、俺はあの平原に戻っていた。
「おお、転移だ」
《移動が楽になったね【月見大福】》
《我だって出来るぞ兄上!MPは足りないが!【†災星†】》
《セイちゃんなんで張り合ってるの?【八千代】》
《セイち、レベル上げがんば!【flowerdrop】》
再度先程の遺跡群に転移する。今度はさっきの民家に戻ってきたらしい。
「条件は、ベッドか?」
《宿屋と同じなのかもしれませんね【最終鬼畜V】》
宿屋か。でもあれってリスポン地点の更新じゃなかった?
まあ嬉しい誤算に変わりはないし、ここを拠点にして開拓するのも良いな。
「まずはベッドを新調したい…」
《埃酷いからなぁ【HaYaSE】》
《家具作成スキルでも取っちゃう?【八千代】》
《ゴドーの旦那がいりゃあ良いんですがねぇ、今日はログインしてやせんね【蛮刀斎】》
ああ、そういやゴドーは生産職に移ったんだっけ。生産系は手を付けた事ないし、今度聞いてみるか。