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爆弾

イド、クリアしました。

正直原稿用紙一枚分の感想を書きたい所ですが、一つだけ。


悪い、やっぱ辛ぇわ

成り行きで死神を倒し王国を解放したらしい俺は、現在ベッドの上で五体投地と共に世の無常を恨みながら呪詛を巻き散らしていた。



「キュイ!」


「いたい…」


「最近ダラけてるからじゃない?」



まあ、そんな事はしていないのだが。

色々な意味で忙しかった数日間、その影響だろうかここ最近俺は特にやる事もなく鍛冶をしたり釣りをしたりダラダラと時を過ごしている。

スローライフさいこう。



「ほらリク、外套はちゃんと外さないと皺になるよ」


「頼んだー」


「完全に力が抜けちゃってる…」


「キュキュ…」



もう疲れちゃってぇ。

運営から監視されてそうだから動けなくてぇ…。


俺から外套を外させ、丁寧に畳みながら脇に置くのは月見大福。そのすぐ傍には山のように積まれた書籍。

コイツ、王国でも本を回収していたらしい。

ロールバックで押収したアイテムは消滅しなかったのか。



「取り敢えず報告だけど、王国は無事にロールバックが完了したみたいだよ。

倒壊した家屋は元通り、NPCの様子も特に変わりはないらしい」


「そりゃ何より」


「それから、一部のNPCが救国の英雄様を探してるらしい。リクが王国に行くのは少し避けた方が良いかもね」


「救国…ああ、あの称号か」


「他のプレイヤーが王国に着く前には一度行った方がいいかな。

クエスト報酬貰ってないでしょ?」


「了解、暇を見て行く」



プレイヤーの到達とは言ってもまだ先だろうから、折を見て王国に行こう。

報酬の未回収、ダメ絶対。



「あとは聖国を目指すプレイヤーも増えたみたいだ」


「ユニークでも探せばいいのに」



絶賛ユニーク祭りの俺が言う事ではないか。



「グランドの情報は今の所なし?」


「みたいだね」



王国解放後に更新されたグランドクエスト。

人の罪を証明し、人の罪を越えろ…みたいな事が書かれていたそうだ。


というのも、俺はチュートリアルを進めてすらいないのでグランドが更新されてない。

情報は全て月見大福経由。



「人の罪の証明ねぇ…大層な事で」


「ユニークかそれに類するクエストだろうけど、先駆者が現れるのを待つ感じかな」


「俺達の誰かが自発したりしてな」



流石にそんな簡単にはいかないだろうけど。

ただ、こんな事を言っていると本当に誰かが背負いこんで来そう。

…ないか。



『主ヨ』


「ん?」



ふと指輪の一つから響く声の主は骨、もとい最近命名した紫玉だ。

紫の煙と共にその姿を現し変な顔をして俺を見ている。



「まだ飯の時間じゃねえぞ?」


「主が…不思議な事を…言ってる…からな」


「不思議な事?」


「主は…既に一つ目の罪を…越えている」


「…なぬ?」


「我が業…飢餓を…主は既に…踏破している」



おう、ちょっと待てや骸骨幼女。

お前今爆弾投げ込んでる事自覚してる?

すぐさま横の月見大福に視線を向ければ、俺の方を見ながら手をバツの形にしている。



「月見大福先生、これは…」


「アウトかな」


「俺は悪く…」


「アウトだね」


「二言を許さぬ回答拒否!?」



待て、そもそも俺がアズマでコイツを手に入れた時はグランドの情報は出てなかった。

情状酌量の余地が多少なりともあるんじゃないですか!?



「流石にこれは、ボクも擁護のしようがないかな…」


「待って!見捨てないで!」


「まあ冗談は置いといて、情報とか聞けたりしない?」


「ある程度ブロック掛かってるんじゃねえか」



いや、でもルナーティアは情報ポロポロ零してたような…。

また謝罪配信のパターンかな、そろそろ準レギュラー化しそうな勢いなんだけど。

仕方ない、これは記憶の片隅にでもポイしておこう。



「へい紫玉、情報寄越せ」


「人類の咎…人が存在する限り…途絶えぬ…六の呪い…故に…人類罪禍」


「人類罪禍…」


「それだけ…だ」


「…それだけ?」


「我らは…それぞれを…知らぬ」


「六つの呪いねぇ」



腕を組み替え俺と月見大福は思考を巡らせる。


ーー成程…さっぱり分からん。


聞いたは良いが、こういうのを考えるのは俺の分野ではない。適材適所と言うヤツだ、月見大福に丸投げしよう。

仲間がいるって素晴らしい。



「では主…供物を…」


「よく抜け抜けと言ったな、このガキ」


「…痛いぞ、主」



渾身のアイアンクロー。

頭を抑え俺を恨めし気に見る紫玉に適当な食い物を取り出し、与えておく。

手で食うな、スプーン使え。



「甘いねぇリク」


「うるせぇ…おい馬鹿骨、ベッドの上で食うな」


「うむ」



トテトテとテーブルに座り再び食い始める紫玉を見ながら溜息を零す。

いつから俺の島は託児所になったんだ。

これじゃあ元PK最大手の名が形無しだよ…。



「苦労が絶えないね」


「平和なだけマシだけどな」



この平和が続けばいいのにと、願わずには居られない俺だった。








「グランドと紫玉の事は後で皆に言いなよ?」


「めんどうくせぇ…」



折角忘れようと思ってたのに…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新再開嬉しいです! p.s. 亡国の王子ノ●ティスネタかなと邪推しちゃいました [気になる点] 王国民のNPCが一度死んだ過去を覚えてないのは仕方ないとは思いますが…歓迎される展開なしで…
[良い点] 次回が謝罪配信待ったなしなこと [気になる点] ストックは十分ですか?
[良い点]  首領への判定……ギルティ。  なお当人は不可抗力、運営の罠だと申し開きをしそうな感じですが、ギルティ。  そういえば王国の報酬回収で、ガブリエルちゃんがオッカケになりそうだと以前に漏ら…
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