【閑話】虚の獄にて
開拓者生活が楽しすぎてフィーバーしてたら書き掛けのデータがロストして阿鼻叫喚の私です。
蛍ちゃん…全てにおいて私の癖に刺さります、可愛いですね。
「まさか、彼女まで動くなんて…やっぱりアナタは巻き込まれる」
光が閉ざされた、黒一色の監獄の中で私は笑う。
自分のお気に入りが運命の渦に巻き込まれる事を憐れむように…それを俯瞰し楽しむように。
面倒事を嫌う癖にいつの間にかその中心で戦う彼はとても喜劇的で美しい。
「それに…罪禍を越えてしまった」
人の罪により産み落とされた星の堕とし子。
それを手中に収め剰え手駒の一つとして用いるなんて…とても欲深く傲慢だ。
ーーだが、それで良い。
人とは本来強い生き物だから。
「きっと私達がいなくても乗り越えられる。
…まあ、今更そんな事言ったって仕方ないけど」
この虚の中から出来る事なんて精々お気に入りの観察位しかないなぁ…などと誰に言うでもなく一人ごちる。
「…そうだ、暇だしちょっと加護を弄っちゃおう」
使用魔力の半減とかどうだろう、いっその事自動魔力障壁とかも増やしちゃおうかな。
力の殆どを失ってるとは言え、真神舐めるんじゃない。
やる気と共に神気を改変しようとする…と。
「ダメですよルナーティア」
「ゲッ…」
目の前から掛かる声につい呻き声を上げてしまう。
いつの間に姿を現したのだろう、彼女はヤレヤレと言った動作をする。
「貴女、自分が幽閉されている事を忘れていませんか?」
「良いじゃない、私の数少ない楽しみなんだから!」
「そんな無暗やたらに力を与えるんじゃありません」
「だって、私のリクがピンチだったんだよ!?」
「貴女のではないでしょう…」
まさかこんなタイミングで彼女がくるなんて…神なのに運がない。
いや、そもそも神と言うカテゴリに分類された私にはどうやっても手を出せない。
「何しに来たの管理者」
「貴女が要らぬ事をしないよう監視に」
「相変わらず暇人だね」
「これでも忙しい身なのですが?」
「私も今忙しいんだけど?」
忠告なんて知った事か。
うねる神気を集束させ、加護の改変を行う。
「…ここに、特異点の記録情報があります」
「今日だけだからね」
その手を止めて映し出された記録情報を読み取る。水鏡は遠目からの観測は出来るが間近を映せない事が難点だ。
ああ、良いね…とても良い。
彼の要所を良く押さえられている。
「それで、キミはなんでこんな物を持ってるの?」
「…管理者ですから」
そうかそうか…どうして目を逸らすんだい?
「ここがおススメです」
「隠す気すらないよね?」
本当に良く撮れてる。
でもさ、仮にも私を罰した天の主が公私混同して一異邦人の情報を漁ってるってどうなの?何しても良いとか思ってるの?
「…まあ、今回はこれで手を打つよ」
「そうしなさい」
何故この女は満足そうな顔をしているのだろうか。そう思いながら記録情報を閉じようとした時だ。
…そういえば、私この後見てなかったっけ。
彼の雄姿を堪能し、丁度水鏡が閉じた後の出来事。これ幸いとその先の記録をみれば…。
「…ねえ、リクが管理者に監視されてるって落ち込んでるんだけど」
「……」
「ねえ」
「…私のせいではありません」
「でもこれキミの部下だよね?」
「…今日はここまでとしましょう」
「ねえ」
深く問いただそうと再び声を掛けると、目の前に居た管理者は既に姿を消していた。
あの管理者が責任から逃れるように忽然と姿を消した。
可愛そうなリク…あんなにプルプル震えて。
いや…違う、あれは抱き締められて身動きの取れない白玉だね。
「…良いなぁ」
管理者は今度また改めて詰めるとして、今はこの光景を甘受する私だった。
…今度白玉のフリをして抱き着こうかな。
獄中でも楽しそうな神様。