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死神は謳い、道化は踊る13

ストックが そろそろ 切れる!

種明かしと言う程でもないのだけど。

ガブリエルを蘇生させ、いざ王城へ…と乗り込む前に俺は羅刹丸に指示を出した。


この無法忍者、アズマの時もそうだったがマーカーを付けた相手の影ならば解放していない場所にも出現出来るらしい。なんとも便利な魔術。


これ幸いと配信を通して仲間達にある提案をしたのだ。


『皆で死神倒そうぜ』


コイツ等も死神への恨み辛みは溜まっている。

そこからは簡単だ。ミカエルと俺が時間を稼いでる間に王国の転移石の確保。

そして無人となった王都で火事場泥…装備を整え万全の状態で登場。



「最高の筋書きだと思わないか?」



麻痺で動けない死神の腹から毒小剣・改を引き抜き、蹴り飛ばす。



「レディを足蹴にする物じゃないわ。

道化の子達は、聖国にいるんじゃなかったのかしら?」


「ウチのメンバーは優秀なんでな。

俺が呼べば必ず来る」


「意味が分からないのだけど」


「手札をバラす訳ないだろ」


「じゃあもう一つ、私の『死神』が消えてしまった方は?」



まあそっちは良いか。


特典アイテムは、クロノスで手に入れたユニークスキルの文字通りアイテム化。

魔導書や指南書のように所有するだけで効果を齎す物もあれば装備アイテムとして着用できる物もある。

ならもし、その特典を手放せばどうなるか。

実は一度検証してみた事がある。俺の隠者の外套を俺以外の誰かが装備すればどうなるのかって。


答えはスキルの取得は出来ない。


それはそうだ、大なり小なりユニークスキルは特異性を持つスキル。そう易々と他人の手に渡る訳がない。

ただその検証の中で一つだけ面白い事が分かった。



「特典アイテムを所有者が手放せば、一時的にそのスキルを失うらしい」


「…なるほどねぇ」



正直な話これに関しては賭けだった。

死神は上位プレイヤー。事前に理解している事も考えたが、杞憂だったらしい。



「それじゃ、そろそろ終わりにしよう」



勝敗は結したような物、多少の大物感を出す為に徐に指を弾く。

俺の言葉と同時に、仲間達が動き出す。



「『パワーブラスト』『アクセルブースト』」


「支援する…『戦場支援』」


「八千代いっちばーん!」


「負け、ない」



強化を施された前衛組は各々の得物を振るう。

刀が飛び、槍が射貫き、散開した仲間達は全方位から命を刈り取りに駆ける。



「もうサプライズはお腹いっぱいだわ!」


「…もっとある、『トリプルショット』」


「ついでにアタシも入れちゃおう、『フレアバースト』」



戦斧を操りながら猛攻を退ける死神に白椿が三の矢を、桜吹雪鱈が爆炎を放つ。

まかり間違っても室内で使用する魔術ではないが、まあ俺達しかいないし良いか。


大きく体を逸らして躱す死神だが、爆風の中を正確に矢が貫く。

あれ、狙いは手動操作だし動きながらだと更に当てずらいんだよ。相変わらず良く当てる。


肩、足、腕の三カ所に突き刺さる矢をそのままに死神が構えた。



「先にそっちの子達を狙った方が良いかしら」


「余所見とは舐められたモノだ」


「貴方も厄介なのよね!」



間髪入れずに朱雀の大太刀が迫る。

両手で振られた太刀と片腕の戦斧が嫌な金属音と火花を散らし鍔ぜり合う。

…朱雀の刀が徐々に戦斧を侵し腐食させる、成程ある程度の破壊は可能と。




「まだ…まだ!」


「ぬっ」



戦斧をかち上げ後ろへ下がり、見覚えのあるアビリティの動作を取った。



「『断」


「セイちゃん、蛮刀斎」


「行けやす」


「『テレポート』」



断裁…飛ぶ黒撃を放つ前に、眼前の八千代と蛮刀斎の位置を入れ替える。



「裁』」


「付与入れとくぜぇ…『アストロガード』」


「『フォートレス』!」



二枚の大盾を構え、蛮刀斎が黒撃を一心に耐える。



「『ドレッドカウンター』」


「きゃあ!」



更にもう一発。

盾系統のアビリティ、受けたと同時に相手にその威力を打ち返す…だったかな?

発動時間が滅茶苦茶短いから使うヤツは、それこそ攻略組しか見た事が無い。

蛮刀斎の右の大盾を正面から受け、死神が吹っ飛ぶ。そこから後ろに控えた源氏小僧。



「俺様必殺パーンチ!」


「うぐっ、ネーミング雑ねぇ!」


「俺も居るぜ~『剛拳』」


「『フレイムバレッド』」


「『スナイプショット』」



戦斧で凌ぐ死神だが、余裕の表情が徐々に剥がれてきている。

隙を与えない同レベル帯の連携、間髪入れずに飛んでくる魔法と矢の応酬。


元のレベルならいざ知らず、今の状態でこの人数を相手にするのは骨が折れる所の話ではないだろう。

腕を捥がれ、死神の能力を失い、追い打ちに俺の弱点付与を胴にぶち込んだ。



「『ハイヒール』」


「甘いっスよ」


「隙、だらけ」



双剣と槍を巧みに動かし、回復した傍から十六夜とBBがダメージを入れる。


BBは完璧な脳筋型、逆に十六夜は万能型。器用貧乏を突き詰めた天才と言っても良い彼女だが、その本職は近接。

常に二本の短剣を自由に遊ばせ、その短いリーチで確実に敵を刈り取る。そして剣の扱いが上手い。

コイツが自分の得物を破壊した事なんて一度しか見た事がない。


リアルでも動く事の多いこの二人の戦い方はどこか演舞のような美しさがあるな。役得役得。



「皆HP考えずに殴りすぎじゃん。

『エリアヒール』」


「装備の消耗も考えて欲しいのう」



うちで唯一の回復役と職人枠がボヤいてるよ。

そんな事言ってゴドーも槌構えて殴ってるじゃん。



「八千代が一番貰う!」


「譲れ、ない」


「今大事な時っスよ~」


「・・・・・・・!」


「刃の兄貴が滅茶苦茶殺気立ってんぞ!?」


「凱歌ぁ逃げた方良いぜぇ」



混戦状態。

FFが発生しないのは流石我がクランの仲間達なのだが、これでは実況が追いつかない。





さて、俺もそろそろ行こうか。

回復ポーションをがぶ飲みし、俺の横に並ぶ月見大福に声を掛ける。



「合わせろ月見大福」


「キミの好きなように」



そう言いながら自身の投擲武器に指を這わせると、刀身が次第に黄色く変色する。

コイツのユニークスキルだ。


並走と共に剣を抜き、死神を狙う。



「息付く暇もないわね!

『レイジアックス』」


「『一閃』」


「首領が来るぞ、道開けろ!」



周囲に飛び退く仲間達を尻目に速度を速める。

戦斧を受け止める朱雀の背を飛び、『月歩』を駆使して空中を蹴り出すと



「『千薬万毒』」



飛来する短剣が俺の両足に突き刺さる。

AGI上昇の薬液、最高だ。



「『月歩』」



もう一歩。空気を足場に加速。

頭上より狙いを定めて、その開いた背中に毒小剣・改を振り下ろす。



「はぁぁぁぁ!」



しぶとい。

俺の着地と共に力任せに横に薙ぎ迫る凶刃。

当たればお陀仏、そんな物杞憂だが。



「『影縛り』」


良い仕事するじゃねえか羅刹丸。

横薙ぎは死神の影から伸びた影の荊によって拒まれる。

拘束された死神は数秒の後に硬直。麻痺80%を舐めるな。



「まずっ…!」


「次はもっと強いお前と戦いたいもんだ」



先程の意趣返しを兼ねて一言。

現状俺の方が弱い?友情パワー最高。


停止した隙を朱雀が見逃すはずがない。

躊躇なくその刃を振るい、戦斧を持つ右腕を捥ぎ取る。

気持ち…麻痺の通りが良くなってる気がするな。



「幕引きだ」



両腕の欠損と明後日の方向に飛んだ戦斧を確認し剣を首元に掛け、死神を見据える。



「遺言は?」


「とっても悔しい!」


「ざまぁ」


「でもリクくんと遊べたから良いわ。

負けた役者は舞台から降りなくちゃ、ね?」


「出来れば一生表舞台から退いて欲しいんだけど」


「ごめんなさい、それは無理!」



そんな良い笑顔で言われても俺としては二度と関わりたくない。

まあ、面倒だけどこの女の性分は変わりはしないだろう。



「バイバイ、脱獄したらまた会いに行くわね」


「死ね」



万感の思いなぞなく、俺は死神の首を刎ねた。

死神編、思った以上に長かったな。

さて、ほのぼのほのぼの。



心底嫌ってはいるし遭遇したくはないけど、首領って死神には口数が多い。

同族だからかな。

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― 新着の感想 ―
シンパシー感じちゃってるんですねわかります(わからない)。
[一言] イラついてるのに遺言を聞く首領はさぁ…そういうところやぞ
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 同族嫌悪ってやつですね
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