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死神は謳い、道化は踊る6

アイギス神は私をお見捨てになった…エリエリレマサバクタニ。


もう諭吉パワー使えないんだよぉ…。

『生命の末葉』

龍脈より流れる星の息吹を吸い、成長した神木の末端。

死者に使用する事で、その葉が砕け落ちHPを回復する。

それはかつて月が作り出した一本の木。最愛の太陽を想い描いた姿は、宝珠の如き美しさを誇る。



白玉が拾ってきた蘇生アイテムで、別名アイテムボックスの肥やし。葉っぱなんだから肥やしとは中々俺も冗句が上手いみたいだ。

取り出し太陽に透かすと日光を吸収し薄く輝いている。これでステンドグラスでも作れば盛り上がるだろうか。

龍脈がうんたらはこの際放っておくとして、目を向けるのは二文目の死者に使用する事で…この騎士の場合は死亡判定も余裕でクリアだ。首落ちてるし。



「あれ?」


《何も起きないね【八千代】》



葉を騎士に翳しても特に変化がない。

使い方が悪かったのかな、もしくはNPCに効果はないとか。試しに葉を乗っけてみても効果なし。



《首をくっ付けてみたら?【月見大福】》


《足もやってみやしょう【蛮刀斎】》


「了解」



二人に促されるままに首を拾い上げ元の位置に固定する。葉を持ってるから足は無理だな。

尚も騎士の近くでプルプルしてる精霊に頼むか。



「足持ってくれる?」


「・・・・!」



俺と精霊でそれぞれ部位を持ち上げ、葉を近づけるが効果なし。

次は葉を置いて…。



「あ」


「・・・!・・・!」


「グル!?」



効果ありだ。

葉が枯れ出し、騎士の体に光が集まる。

白、いや銀の光は次第にその色を濃く変えていき次第に騎士にも変化が生じる。

首と足、その端と端に現れた細い繊維のようなナニカが結びつき、徐々に引き寄せられている。



「これが人体の神秘か」


《絶対違うと思う【flowerdrop】》



ファンタジーってすげぇ。

リレイズとかの蘇生系って斬ってもすぐくっ付くから味気ないんだよ。

そんな下らない事を考えている間に、騎士の体は結合を終わらせていた。



「すげぇな、この葉っぱ。

絶対他のプレイヤーに流せねえ」


「グルァ…グル?グラァアァ!」


「どうした桜玉」



粉々に散り、光の残滓となって風に溶ける末葉に目を向けていると桜玉が鳴きだす。

首をブンブンと降り、前見ろ前!とでも言う様に視線を動かす。


前から手が伸びて来た。



「あ…の…」


「え、何コワイ」



反射的に伸びてきた手を払い目を向けると、復活を果たした騎士が俺を見ている。

ゾンビじゃないよね?生きてるよね?



「わ…たし…いきてる…?」


「まあ、首はくっ付いてるから生きてるんじゃない?」



良かった、ちゃんと生き返ってる。

アンデッド系のモンスターは色々と処理が面倒だから少し安心する。

徐々に状況を理解してきたのか目に涙を浮かべ周囲を見回す騎士。



「みん…な…は…」


「さあ、俺はコイツに連れてこられたからアンタを蘇生させてみただけだし」



風の精霊を指差し告げる。

別に嘘は言っていない。ただアイテムボックスを圧迫する末葉を使ってみたかったとは言わぬが華だろう。

ここは善人ぶっておこう。いや、行動的には割と善人では?



「あ…ああ…」


「おめでとう、ラッキーだったな」



正直復活する保障なんて無い訳で、俺は末葉を試せてこの騎士は生き返った。

良い等価交換だ、ラッキーだと思えば良い。

俺の全交渉スキル(リアル)をフル活用し言葉を重ねていると、精霊に抱き付かれていた騎士が動き出す。



「え…」



飛びつかれた。

立ち上がると思っていたから急な行動に動けなかった。もしかして、俺かなり鈍ってる?

そんな俺の様子を無視してコメント欄が動き出す。



《あーあ【凱歌】》


《またなんですの?【ハートの女王】》


《兄上…【†災星†】》


《リッくん、後で八千代もやる!【八千代】》


《ほいほい女の子を引っ掛けるねぇ【月見大福】》


「違う、俺は悪くない!」



何がどうしてこうなった。

人の首を絞めながら泣きだす騎士に動揺する俺と尚も加速し続ける仲間達。


ーーー助けて桜玉!


横を見れば、少しだけ後ろに下がり俺を見る桜玉。

アイツさり気なく距離を取ってやがる…!

四面楚歌とはこの事だ。

誰も救いの手を差し伸べずに傍観を決め込んでやがる。


あ、待って死ぬ。

謎の既視感と共に微小ながら減っていくHPバーを見る。ああ…これ、桜玉が生まれた時と一緒だ。

締め上げる力が増していく毎に、俺の意識が途切れそうになる。


もうどうにでもなれ。







「それでアンタは死神…ペイルライダーに斬られたわけだ」


「ええ、手も足も出なかった。

逃れようとした所を斧で…」


「容赦ねぇな」



あの後、俺の異変を察知した桜玉が止めに入り何とか事なきを得た。NPCに抱きしめられてロストとか後世にすら語り継げる程汚点になっただろう。

いや、もっと早く止めろよお前。



「貴方も異邦人なのよね?」


「敵対する気はないから攻撃しないでくれよ」



両手を上げてコワクナイヨーと意思表示。

一瞬だけ細めた目で俺を見た騎士…ガブリエルだが、それを直ぐに切り替える。



「ごめんなさい。

命の恩人に向ける目じゃなかった」


「まあ、こんな事になったばかりだし」


《酷い状況だものね【メルティ・スイート】》



彼女が蘇ったのは良いけど、別に現状が変わる訳でもなし。崩壊した街と死んだNPCが戻るなんてそれこそ絵物語だ。この世界ゲームだけど。

かなり有用だと知れた末葉を全員に使ってやる気はない。どうせ事が落ち着けばNPCの補充あるだろ。



「…貴方はこれからどうするの?」


「どうするかな」



正直な話、俺はただ促されるままにこの国に来ただけだ。死神と戦うのは避けたい所だけど、桜玉の手前一発入れなきゃダメかな。

その前に火事場泥棒とかやっていい?

…アイテムボックスもう入らないんだったわ。



「…火事場泥棒」


「え?」


「なんでもない」


《なんか不穏な事言い出して草【凱歌】》


《素材、足りない?【BB】》


《もっと送ろっか?【八千代】》



いかん、要らない事を言ったら仲間達が反応してしまった。これ以上俺のヒモ具合を増強する訳にはいかない。

何とか路線を変更しないと…そう考えようとした時だ。

爆発音が響く。



「なに?」


「王城から!?」



ガブリエルが目を向けた先、領主館など比ではない大きさを持つ建造物。

正しく王城から火の手が上がっている。



「ミカが、戦ってる」


「ミカ…ああ、あの赤い騎士」



そうか、ミラエルじゃなくてミカエルだ。

他人の名前覚えるのって面倒なんだよ。


さて王城を見上げて数舜、どうにも目の前の騎士は何かを決意したような顔をしている。



「…異邦の人、お願いがあるの」


「嫌な予感しかしないから断っていい?」



ああ、厄ネタ…それも俺が最も嫌いな類の予感。



「私と一緒に、王城に行って欲しい」


《ユニーククエスト《王都事変》が開始されました》


《流石、我々の首領だ【軍師カンペイ】》


《リクはPKを辞めてもユニークを乱立するんだね【月見大福】》



訂正、話を聞かなくても面倒に巻き込まれた。

もうどうやっても無理じゃんこんなの。


首領「だって、取れそうなアイテムいっぱい転がってるんだもん」


自称ほのぼの系で火事場泥しようとする主人公お前位だよ。

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― 新着の感想 ―
自称ほのぼの系…自称だったんですか!?信じてたのに!(大嘘) まぁそれはそれとして火事場泥棒はするよねっていう感
[一言] こういうところで断れない当たり小説だなと思う…
[気になる点] いっそ生き残りの王国民すべてとサーバント契約すればこれ以上被害ないんじゃ
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