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死神は謳い、道化は踊る5

一方その頃。


星四とか言う魔窟を引こうか迷い中。

時遡る事、龍の上。



桜玉に乗り王国入りをする事になってしまった俺だが、絶賛命の危機に瀕していた。



「待って、これ死ぬ」


「グルァァァァァ♪」



楽しそうに声を上げ、俺を乗せて咆哮を上げる桜玉だが今はそんな余裕もない。

大地を駆ける事とは訳が違うのだ。

安定しない足場に俺を押し出さんとする風圧。

幾らパルクールモドキが得意な俺でも、空を飛行するのは初めてだよ。

全身に力を入れて捕まらないと絶対に落下死を迎えてしまう。



《珍しいねぇ【月見大福】》


《兄上が涙目だ【†災星†】》


《リッくん頑張って!【八千代】》


《録画中じゃねえですか、お嬢【蛮刀斎】》



先程まで盛大に騒いだ影響だろうか、既に無の領域に達している俺の精神。

飛行系のテイムモンスターって良いなぁ。

この子が居ればどこへ行くにも飛べばいい。

どれだけ竜血解放が続くのかは分からないが、彼此一時間は飛んでるだろうか。


ヤバい、酔ってきた。



「ぎもぢわるい…」


「グルァァァァ!?」



既に王城らしき物は見えているのだけど、その前に降りなければ俺の尊厳とかその他諸々が全て消し飛んでしまいそうだ。

なんていうんだっけ、尊厳破壊?

流血表現は年齢層的に実装されてないけど、何でか嘔吐は規制されてないんだよね。

毒とか受けると新規は吐くらしいよ。



「桜玉…近くで降りて…」


「グルゥゥ!」



合点とばかりに頷く桜玉の頭を撫でて何とか平然を保とうとするが、持つかなコレ。

ああ、三途の川の先で青い服を着た骸骨が踊ってる、ウチの骨少女とは違って随分と可愛らしい外見だね。

俺の決意は足りないようで、とうとう幻覚が見え始めた。



「グルゥゥゥゥ!」


「あ…」



定着位置を見つけたようで全力で桜玉が旋回行動を始めた。待って、今それは…。



《あーあ【HaYaSE】》


《持たなかったのう【ゴドー2号】》


《ご愁傷様です、首領【最終社畜V】》



盛大にぶちまけた。







「さてと、ここどこ?」


「グル?」



桜玉が下りた場所はどうにも市街地のようで、周囲には住宅があるのだが…凄い壊れてる。

周りに散らばるNPCの残骸を見るに、ここで死神が暴れたみたいだ。

NPCの死体って残るのか、不思議。



「取り敢えず王城でも目指してみる?」


《目印には、良いかも【BB】》


《国家転覆とか企んでるんスか?【十六夜】》


《国の滅亡じゃね?【凱歌】》


《この光景は無視なの!?【メルティ・スイート】》



慣れた物、というかクロノスではよく見た光景だし。

何度他人の屍を越えたか覚えてない。あれはNPCじゃなくてプレイヤーだったけどね。



「まあ、仕方ないだろ」



プレイヤーの行動でいつも割を食うのはNPCなのだから。ゲームなんてそんなもんだ。

王城に向けて歩く俺と、空を浮遊する桜玉。

見るも地獄、歩くも地獄とはこの事か。地面に転がるNPCを避けて歩くのが面倒臭い。

桜玉に乗ろうかな…ちょっとまだ怖い。



「ん?」


「グル?」



ナニカが俺達を見ている。

どこから見ているのかはわからないけど、数は一つ。



『主…右ダ』


「ナイス骨」



アイテムボックスから数本の短剣を取り出し、投擲。

そろそろ『投擲』スキルとか身についてもいいと思うんだけどな。

一本目、二本目と空を切り、三本目が家屋の壁に突き刺さった時、何かが姿を現した。



「・・・・!・・・!」



薄緑色の小人のような物。

…どっかで見た事がある気がする。



「ああ、精霊」


「・・・・・!」



コクコクと首のような箇所を動かし、全身を使って意思疎通を図ろうとする薄緑の精霊。

ミ…ミラエル?が召喚してた赤い精霊と似ている。



《可愛いな【†災星†】》


《可愛いねぇ【八千代】》



ちびっ子センサーには割と好印象らしい。

俺達を観察するように見ている緑精霊だったが、何を思ったのか急激に距離を縮めてくる。


ーーーやる気か?


手を剣の柄に置き、常に動けるように構えるが精霊は両手を上げて俺の目の前で停止する。



「・・・・?」



小首を傾げられても困る。

敵意はないようなので、取り敢えず剣から手を離すと…素早く動いた精霊が俺の右手を掴んで引く。

反応に遅れた。



「え、何…え?」


「グル?」


《ファンタジーじゃん【ハンペン騎士】》


《状況はバイオレンス極まりないけどな【凱歌】》



精霊に手を引かれ、着いた場所は大通り?

先程の街中よりも損壊が酷い。

本来噴水だったのだろうソレは、切り倒され水が漏れ出している。散らばった残骸の数も多いし、ここで派手にドンパチやったのか。


不意に、俺の手を引いていた精霊が一つのNPCの元へ向かった。

薄緑の鎧を着た首と右足のない騎士。

他のNPC達よりも念入りに痛めつけられたのか、所々鎧が抉れている。

酷い事するもんだな。流石死神、趣味が悪い。



「これを俺に見せてどうしろと?」


「グルゥ」



しきりに俺を見る精霊。

大方この騎士はこの精霊の契約者なのだろうけど、NPCはプレイヤーと違い復活する事はない。

復活…復活?

そういえばボックスの肥やしになってるヤツあったな。



「どうやら、実験の時間が来たらしい」


《ああ、アレ【月見大福】》


《そもそもNPCに使えますの?【ハートの女王】》



知らん。

でも、丁度良い素体なら今目の前に転がってるじゃないか。どうせもう既に面倒事の渦中、ならこの状況を有効活用させて貰おう。

アイテムボックスから件の物を取り出し、俺は笑う。


善行って大事だなぁ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 精霊も真に頼る相手は誰か理解できてるんだな… いやまあその龍に乗ってる時点で頼りになるどころかヤバい奴なのは分かるか
[良い点]  面倒とは思ってもNPCの死体は避けて通る、首領。  なおプレイヤーの馘で、サッカーはしました。 [気になる点]  たぶん吐しゃ物にはモザイクがかかっているんじゃないんでしょうか……? …
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