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勇者と魔王と後、神様も  作者: 鈴木りんご
四章 「勇者と魔王と後、神様も」
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第49話 神様、語る



 人間と魔族の創造。


 神はそれ以前に一度、全てを滅ぼしていた。この星、神の手の中に在る命の全てを握りつぶし、葬り去った。


 そもそも神とはこの星の心であり手足。星そのもの。


 神がこの星に生命を創造した。その中でも一番愛したのが自分に似せて創造した人間たちだった。


 神は何千年も彼らを見守ってきた。


 彼らが越えることのできない困難にぶつかれば奇跡を与えて救った。たった一人の人間のために奇跡を与えたこともある。そうやって神は人間に惜しみない愛を与えてきた。


 しかし長い年月を経て文明が進んでくると、神にも解決の難しい問題が起きるようになった。


 それは戦争。人間がより世界を快適なものにするために生み出した科学という力を使った人間同士による大きな争いだった。


 一方が完全な悪であるならば神の力で解決することもできたが、そんな簡単な問題ではなかった。


 どちらにも正義があった。戦わねばならぬ理由があった。神は双方の想いを理解できた。


 神にも人間の心までは操ることはできない。


 だから見守るしかなかった。


 ただこの戦争が少しでも早く終わることを願って神は見守った。


 しかし戦いは終わることはなかった。


 戦うに至った理由すらも忘れて人間たちは戦い続けた。


 戦いは戦いの生んだ多くの悲劇と憎しみを抱いて肥大していった。そしていつしか星を二分して人間は戦い続けていた。


 その頃の人間たちは神の大好きな笑顔を浮かべることなんてほとんどなかった。もし笑ったとしても、それは敵を殺して浮かべる禍々しい笑み。


 神はついに我慢できず地上に降り立った。


 戦争を終わらせるために。また人間たちが幸せに笑みを浮かべられるときがくることを願って……


 神はその圧倒的な力を行使して無理やりに戦いを終わらせた。しかし神はどれだけ大きな力を使おうと、誰一人殺すことはなかった。


 神は自分の生み出した人間を等しく愛していたから。


 だが……戦いは終わらなかった。


 あろうことか人間は手を取り合って、その刃を神に向けた。


 そして人間は神を討つためにバベルという名の塔を建造した。


 人間は知ったのだ。神を殺すには星を破壊するしかないことを。しかし星を砕けば、人間もまた生きることができなくなる。だから人間はバベルを築き、その力で神を異空間に閉じ込めようとした。


 神は絶望した。


 そこに怒りや、憎しみはない。ただ純粋に悲しみだけがあった。


 神が人間を創造した。神は人間を愛していた。神は人間のためにその姿を現し、戦争を終わらせようとした。


 それなのに人間は神を何もない無の空間へと永遠に閉じ込めようとしていた。


 神は孤独に耐えられず、人間を創造したというのに……


 神は人間を滅ぼした。愛していた人間を自らの手で滅ぼした。


 そして初めからやり直すことにした。


 二度とこんなことが起きることのないように、神は二種類の種族を創造した。


 それが人間と魔族。


 神は互いの言葉を分けて敵対させた。


 しかし戦いは神の望むものではない。だから二百年に一度、大きなイベントを用意することで戦いが頻繁に起こることを抑止した。


 そして神は双方に力を貸すことによって、どちらからも愛された。


「それが……この世界の真実だ」


 そう言って神は振り返ると、ジアを見据えて言葉を続ける。


「だから僕は……」


「もういい」


 その言葉と共に神はジアに抱きしめられていた。


「わかったから、もういいよ。そんな泣きながら説明しなくていい。もう充分わかったから」


 そう言われて、神は初めて自分が涙を流していることを知った。


 頬を伝う涙も抱きしめられた体もとても温かい。


 初めてだった。涙を流すのも、自分以外の誰かに触れられるのも……


「僕は……どうすればよかった?」


 意識することなく、言葉が溢れた。


「どうすればよかったかじゃなくて、これからどうするかを考えよう。大丈夫。みんなで一緒に考えよう。神様もみんなも一緒に幸せになれるように」


 神を抱くジアの腕に少し力が加わった。しかしそれは不快ではない。むしろ神はそれがとても心地よかった。


「いっしょに……考えてくれるの?」


「うん。一緒に考えよう」


 神の目を見つめ、ジアは優しい笑顔でそう答えてくれた。


「ありがとう」


 そう言って神は自分を優しく抱きしめていてくれるジアの体を強く抱き返し……泣いた。大きな声で、嗚咽を漏らしながら子供のように大粒の涙を流した。



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