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勇者と魔王と後、神様も  作者: 鈴木りんご
二章「人類と魔族」
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第22話 クロエ、驚愕する



 ジアとルルがイージスに加わってから一週間。


 クロエはこの一週間で二人の人となりと実力はだいたい把握した。


 ジアはレミから聞いていた通りのとても優しい青年だ。クロエの考えではジア自身は誰かに優しくしようなどとは考えてはいない。ただジアは自分より他人を優先しているだけ。彼にとってはそれが当たり前なのだ。


 そしてそれ以上に警戒するべきスキルをジアは所有している。ジアは簡単に人の内側へと入り込んでくる。クロエ自身も初めて一対一で長く話したとき、気が付くといつの間にかイージスのリーダーとしての苦労を愚痴っていた。


 そんなジアの実力は……


 圧倒的だった。隻腕であることがハンデにならないくらいにジアは強い。


 きっとレミが本気で戦ったとしてもジアには勝てないだろう。


 それほどまでに勇者の力、神剣の力は絶大だった。


 そしてルル。


 ルルは当初の印象とは違って、比較的に物静かで内向的な性格の持ち主。誰にでも敬語で話すがジアにだけはタメ口だ。それに少し天然。本人曰く、どこぞのお嬢様らしく子供でも知っているような当たり前のことを知らなかったりする。


 そして実力……


 こちらも想像以上だった。初めはジアのおまけ程度に考えていたがクロエもそのセンスには驚かされた。


 元々魔法は同時に使うことはできない。だから空を飛びながら攻撃魔法を使うことはできないし、身体能力を高めながら攻撃魔法を使うこともできない。そのため普通は得意分野に特化することになる。クロエの場合は攻撃魔法。レミの場合は身体能力強化という具合に。そもそも扱いの難しい身体能力強化系の魔法を使うものは魔力持ちには稀有な存在だ。


 しかし、ルルは違う。戦いながらその時々に合わせて魔法を使い分ける。その切り替えも一瞬でこなしてしまう。魔力自体はそれほど高くないようだが扱いがとてもうまい。充分にイージスの戦力として計算できた。


 そんな感じで、クロエは二人の性格と実力を理解した。


 これで問題なく、二人を新たに組み込んでイージスとしてのミッションに当たれる。


 そんなことを訓練の休憩時間に考えていたクロエの前で喧嘩が始まった。


 ほぼ毎日のことなのでクロエもいい加減慣れた。


 喧嘩の理由はいつも同じ。レミがジアに何かしらのアプローチを仕掛け、それに気が付いたルルが怒るという形だ。


 今回はレミがジアを買い物に誘ったのが、ルルには気に入らないらしい。


「あー、むかつく。駄目って言ったら駄目なんです。ジアは買い物には行かないんです」


「ジアはついてきてくれるって言ったのに、何でルルが駄目って言うの?」


「それは……とにかく私が駄目って言ったら駄目なんです」


「それじゃあ、意味がわからない」


「ジアの腕は私のせいだから、私はジアと一緒にいないとならないんです。ジアは私が守るって決めたんです。だからずっと一緒にいないといけないんです」


「大丈夫。買い物ときは私が守る。私の方がルルより強いと思うし」


「そんなことはありません。私の方が強いです」


「じゃあ、試合でもしてみればいいんじゃない?」


 二人の喧嘩にエリナが割ってはいる。


「それでもしレミが勝ったら、レミはジアと二人で買い物に行く。ルルが勝ったら三人で行けばいいんじゃない?」


「それじゃあ、不公平です。私が勝ったら、私もジアと二人で買い物に行きます」


「わかった。じゃあ、レミもそれでいい?」


「うん」


「ルールはどうする?」


「後で文句を言われても困りますから、聖剣もあの変な服も着て結構ですよ」


「じゃあ、何でもありの実践方式で。それでも相手に怪我を負わせて場合はそっちの負けになるから、怪我はさせないようにね」


「わかりました」


「うん」


 どうやら二人で試合をすることになったらしい。ジアとの買い物を賭けて。


 景品であるところのジアはどこにいるのかとクロエが辺りを見回すと、アルベルトとマクシムによって押さえつけられていた。何やら猿ぐつわまでされてふがふが言っている。


 クロエとしても訓練でなく実践方式で戦うルルには興味があったので口を挟まず見守ることにした。


 それでもクロエは勝つのは間違いなくレミだと考えている。


 ルルも善戦はするかもしれない。それでも勝てるわけがない。ルルはただの魔力持ちだ。銀の髪と目を持ったクロエ自身でさえレミには勝てない。もしクロエが二人いたとしても勝てないだろう。


 だからルルに勝てるわけがないのだ。


 そしてエリナを審判として二人の戦いが始まった。


 まず仕掛けて行ったのはレミ。


 かなり加減をしたと思われる体術の連撃。その攻撃を簡単にかわしながらルルは言う。


「手加減なんて必要ありません。聖剣の力もフルに使っていただいて結構です」


 そう言った瞬間、火柱が二人を包んだ。


 そして爆音。


 火柱の中からレミが吹き飛ばされる。なんとか着地をとったレミに、ルルはそのまま殴りかかる。レミがその攻撃を受け止めた瞬間、爆発。それはまるでレミの戦術を模倣すうような戦い方。


 また後ろに吹き飛ぶレミ。それでも今度は簡単に着地すると、レミは攻撃を仕掛ける。


 ほとんど本気と思われるスピードの連撃。


 ルルは防戦一方だ。


 それにレミは結局、聖剣の力を使ってはいない。


 だからやっぱり勝つのはレミ。クロエがそう思ったとき、ルルが叫んだ。


「負けられない。ジアは私が守る。そう決めたんだ。だから絶対に負けられないの!」


 クロエは悪寒を感じた。


 体中に鳥肌が立つ。震えが止まらない。気持ち悪い。


 クロエの体を巡る魔力が全て吸い上げられていくような感覚。


 ――絶句した。


 今、レミと対峙しているのは金糸の髪の少女。


 その少女から発せられる、圧倒的な魔力……


 伝説には記されている。


 金色の髪と瞳を持つ魔族こそが人類最大の敵、魔王であると。



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