櫻花
お久しぶりです。最近Vtuberとしても活動を始めたマジメクズ系一般留年大学生こと、シラスよいちです。原神、八重神子ピックアップですね(金欠のため作者は引けない)、代わりに引いておいてください。
ということで、春も近いので原神の八重神子にも縁がある桜について小説を書きました。
お楽しみいただけると幸いです。
遠くに見える飛び立つ飛行機の辺りは昔、予科練つまり海軍飛行予行練習生の訓練所があったという。今の「社会で生き残る」ための教育ではなく、「国のために死ぬ」教育が行われていた。
平日の昼に近所を散歩している最中、昔を思う僕を通行人の怪訝な目が現実へと戻した。
まだ高校生ともあろう少年が、制服のまま閑静な住宅街をふらふらと歩いていたら誰だっていぶかしむ。現に何回か職務質問もされた。
「貴様と俺とは、同期の櫻。同じ兵學校の庭に咲く」
亡くなった祖父が良く口ずさんでいたフレーズを口の中で転がす。
「おい若造」
横からの声に驚き、顔を上げる。
見ると車いすの老人が屋敷の玄関からこちらへゆっくりと向かってくる。
「すみません、僕急いでいるので失礼します」
会釈して足早に立ち去ろうと足を動かす。
「待て若造、わしは浮浪を咎めようとしている訳ではない」
静かでお世辞にも大きいと言えずとも謎の威圧感のある老人の声に、僕は足を止めて振り返ってしまう。
「僕に何か用でしたか?」
嫌な汗が流れるのを感じる。老人はどこか疲れ切った顔をしていたが、同時にどこか威厳のある鋭い目をしていた。
「なぜ同期の櫻なぞ歌っておった?」
「…はい?」
「さっき歌っておった歌じゃ」
「あ、あぁあ、ああれですか。えっと、あの歌は祖父が、よよ良く歌っていたものです。」
それを聞くと、心なしか老人の表情が少しだけ緩んだ。
「若造、祖父の名は何という?」
「えっと、○○ ○○ですけど」
「いえ、僕が小学生のうちに亡くなりました」
「そうか、一度話してみたかったが残念なことじゃな。…戦時中の話など聞いたことはあるか、若造よ」
「いえ、元々祖父は寡黙な人だったので」
「…わしは終戦間際の頃、学生時代予科練に入っておった。あの飛行場に集められたわしらは、来たる本土決戦に備えて戦闘機を動かす訓練をしておってな」
朗々とした老人の声と白い尾を引く飛行機が作り出すリアリティが、僕を聞き入らせていた。
「今の世は、誰でも生き方を選べるんじゃよ、若造。…同時に死ぬ理由も自分で探すしかなくなった、難儀なものじゃな」
一気にしゃべって疲れたのか、老人は度息を入れる
「若造にはまだ時間がある。仕事でも恋愛でも趣味でも、なんでもいい。生きるに値する、あるいは死ぬに値する何かを見つけることじゃ」
「そうできればいいんですけどね」
苦笑して返す僕に、老人は言った。
「そりゃあ櫻だってものによって咲く時期も散る時期も違うじゃろう。まだ見つからんだけのことよ」
――僕にも、見つかるのかな。まだ学校生活、やり直せるかな
青春の謳歌、そんな幻想を抱きながら老人と別れた僕は櫻並木を歩いた。
いかがだったでしょうか。普段はキャラ文芸やライトノベルに近いものを書いているので、老人との会話など話の流れを作るのに苦戦しました。一応の形はまとまったと思います。
感想などありましたら気軽にお寄せ下さい。お待ちしております。
また次回作のネタが思いついたら筆を取ろうと思っています。それでは!