[短編]ヤンデレ妻のお味噌汁
『[短編]ハットトリックを決めたチームメイトがリア充と発覚したので爆破』
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こちらに登場したサッカー部顧問が主人公になります。
どうしてこうなった。
結婚相談所で49連敗をした後、俺は運命の人と出会った。
彼女は優しい人で、高校でサッカー部の顧問をしている俺の体を心配して、毎日お弁当を作ってくれた。
その優しさに惚れて、俺は彼女にプロポーズした。
『毎日俺の味噌汁を作ってくれ』
ありきたりで、今の時代には合わないかもしれない。だが、そんな俺のプロポーズに、彼女は頬を染めて、『うん』と答えてくれた。
あれから1年。
毎日妻は俺のために味噌汁を作ってくれる。
今まで料理をしてこなかったのに、俺の弁当のために料理を覚えたと知ったのは、結婚してから。
「また絆創膏が。大丈夫か?無理しなくていいんだぞ」
「てへへ。心配かけてごめんね。でも、あなたには私のご飯を食べて欲しいの」
そう言って笑う妻は、とびきり可愛い。
ある晩のピロートークの時、妻に聞いた。
「どうしてそんなに料理を頑張るんだ?たまにはスーパーの惣菜でも俺は構わないのに」
すると妻はうっとりとした顔で俺の肌を撫でながら、言った。
「だって、あたしの作った料理であなたの細胞が作られていくのよ。その悦びを思えば毎日の料理なんて苦じゃないわ」
俺はその後、妻をめちゃくちゃ可愛がった。
ある朝、味噌汁をよそおうと、お玉を動かすと固いものに当たった。鉄の塊?
不思議に思って妻に尋ねると、指先に絆創膏を貼りながら、妻が答えた。
「鉄分摂取に鋳物を入れることにしたの。私の貧血とあなたの健康にいいと思って」
俺の妻はなんて出来た妻なんだ。
俺は出勤前に妻を愛した。
妻は可愛い。
妻は素敵だ。
妻はいつも言う。
「あなたの髪も目もその唇も、すべてあたしのものなの。あなたの細胞をあたしが毎日栄養を与えて作っているの」
そう言ってうっとりと笑う妻は、とても美しい。
毎日の味噌汁で妻は俺に鉄分を摂取させてくれる。
俺は幸せだ。
朝、起きると妻は水を入れた鍋を火にかける。
鰹節、昆布。日によって、干し椎茸や煮干しも入れて味噌汁の出汁をとる。
たくさんの野菜を入れてくつくつと煮る。
鋳物と味噌を入れて、最後に指先を切って妻は自分の血液を混ぜる。
そうやって妻は俺の細胞を作るための材料に自分の血液を使っている。
その時の妻の恍惚とした表情を台所に設置した隠しカメラで撮影し、布団の中でスマホ画面から見るのが毎日の日課だ。
ああ、もう少ししたら、妻が起こしに来てくれる。
今日の絆創膏はキャラものか。
そんなところまで可愛いと思える妻は最高だ。
俺はうっとりと微笑んだ。