第3話 今日から俺が魔王です!
ーーー魔王幹部の奴らは俺の隙を伺っているようだが、
無駄な話だ。
何度も言うが、俺にはどんな攻撃も効かない。
透明化によりどこにいるかもわからないようだしな。
「貴様…魔王様と会って何をするつもりだ…」
アバドンが不安そうに俺に尋ねる。
「お前らは黙って俺の言うことを聞いてればいい…」
「うがぁぁ!!お前!いい加減にしろ!!このジャバウォック様が許さんぞ!!」
「ヒュドドド…正々堂々と俺たちと戦いやがれ!!」
「正々堂々だと?ふっ…いいぞ?【インビジブル】を解いてやるよ」
そう言うと俺は、【インビジブル】を解き、魔王幹部らに姿を現す。
現れたと同時に、ジャバウォックとヒュドラが俺に飛びかかってきた。
「ガァァッ!!死ねぇぇえ!!」
「ヒュドドド…お前の敗因はその傲慢さよ!」
『ズシャァッ!』
『ドリュゥンッ!』
ジャバウォックの鋭い爪と、ヒュドラのドリルのような尻尾が命中する……そう…アバドンに……。
「グフッ…な、何が起きたのだ…」
アバドンの美しい長い髪の毛がヒラヒラと地面に落ちていく。
そして、ヒュドラの尻尾が俺含めアバドンの腹に大きな風穴をあける。
「ア、アバドン様…ウガァァアッ!お前!卑怯だ!!全然正々堂々じゃない!!」
「ヒュ、ヒュドドッ……アバドン様ぁ〜申し訳ございません…」
「…………もういいでしょう…その人には私達でさえ、敵わないわ…」
どうやらウロボロスに関しては見る目があるようで、俺の言うことを素直に受け止めているらしい。
「卑怯もなにも、俺はスキルを解いたぞ…1つだけな」
俺のユニークスキル【インビジブル】は、少し他とは違うことがある。
透明化のスキルと、すり抜けのスキル2つを掛け合わせたスキルによって、別々に使うことも可能なのだ。
「もうわかっただろ、誰も俺にかすり傷1つさえつけることはできないってな…」
俺はウエストウェザーバッグに入れておいた、最高級のポーションをアバドンに振りかけた。
その瞬間、腹に風穴が空いていた箇所は、みるみるうちに塞がっていき、毒によるダメージも全て無かったことになっていた。
「き、貴様…私に情けをかけるつもりか…」
「情けか、情けと言ったら情けになるのだろう…何故なら今日からお前らは俺の配下として働いてもらうからな…」
俺の一言に、魔王幹部らは言葉を失う。
しかし、アバドンは何を言っているのかわからないといった表情で俺に殺意をむき出しにしてくる。
「貴様の配下だと?なにを言っている人間風情が!」
「まあ、俺がなにをしたいのかは後々わかるさ…お前らにもメリットのある話だ…しかしまぁなんだ、魔王の右腕となるお前にだけは今話をつけておこうじゃないか」
俺はアバドンの耳元で、今後の方針について囁く。
「なっ……き、貴様正気か?!そんなことをすればどうなるか………!!」
ああわかってるさ。
こんな正気じゃないことは、正気ではないこの俺と、魔物達にしかできないことだ。
「ふんっ…悪い話ではないが、魔王様を侮るなよ人間…もし貴様が敗れるようなことがあれば貴様は地獄を見ることになる…」
地獄ならもう見てきた。
俺を蔑み追い出した勇者パーティー。
さらには自分たちの身の安全のためならばと、小さな村に魔物をけしかけた国の奴ら。
そんな人間の【非道さ】
人間の【邪悪さ】
人間の【愚かさ】
人間の【強欲さ】
そして、そんな人間の欲につけ込み、おもちゃかのようにか弱い者達を無惨に殺す奴ら。
そんな魔物の【非道さ】
魔物の【邪悪さ】
魔物の【愚かさ】
魔物の【強欲さ】
なんだ……よく考えたら2種族とも全く同じじゃないか。
だから俺は決めたのだ。
魔王となり、人間も魔物も全て屈服させると。
「地獄ならもう見てきたさ…お前らもこれから見ることができるさ、地獄という名の希望をな…」
「ほぅ〜言うではないか…」
魔王幹部らはアバドンを除き、ただ呆然と俺を見つめていた。
ーーーそして今、俺の目の前には魔王の姿が目に映る。
「アバドンよ…それはどういうことか説明してもらおうか…そしてウロボロス…貴様もだ…」
アバドンとウロボロスは魔王に向かって究極魔法の詠唱を唱え始めていた。
周りの幹部の奴らはそれを見て、魔王の盾になろうと前に出る。
「ヒュ、ヒュドドッ!アバドン様!これはどういうことですか!その人間になにを吹き込まれたのですか!それにウロボロス!貴様ぁぁあ!!」
「ウガァァアッ!アバドン様でもこれは許すまじ行為だ!!」
「あんたら、今はあいつらは敵とみなしなさい!!」
アバドンには俺のしたいことを話したからこっち側に付くのはなんとなくわかるが……
「魔王様……わたくしはこの人間に敗北し、そして屈服されてしまいました…そしてこの方の野望はとてもとても……おっと、わたくしからはここまでしか…」
アバドンの性格なんかさっきと変わってないか?
ま、まあいい。
しかしウロボロスに関しては俺は何もしてないぞ?
「私は……ただこの男に惚れただけ…ごめんなさい魔王様……そしてさよなら…」
モテる男は辛い、なんだか歯痒いな…まあこれが人間だったらよかったんだが…
俺はすかさずアバドンとウロボロスの前に出る。
「まあ落ち着け2人とも、魔王は俺が殺さなくては意味がない2人にはあっちの雑魚を頼む…」
黙って頷く2人は、詠唱をし終えた究極魔法を魔王幹部らに向けて解き放つ。
『デッド・エンド・インフェルノ』
『ボロス・インダ・ライボルト』
凄まじい勢いの炎と雷の究極魔法が俺の体を貫通し、幹部らに押し寄せる。
(おい…俺に攻撃が喰らわないからって…どういう神経していやがる…)
「まあ、これで正々堂々1対1の勝負ができるな!魔王様よぅ〜」
そう言うと、魔王は重い腰を上げると間髪入れずに詠唱もなしに究極魔法を俺に放つ。
『デス・ランス』
黒い槍のようなものが俺の腹をすり抜ける。
すると、アバドンの究極魔法ですらびくともしなかった魔王城の壁が、粉々になって消え失せた。
「へ〜流石は魔王様だな…桁違いの威力だ…」
「ほぅ〜それが噂に聞く【インビジブル】か実に良いスキルだな」
俺に攻撃が効かないことに対して、さほど驚いてはいないようだ。
なにか、余裕のある表情をしているようだが…
「そのスキル…我輩が貰い受けようではないか!!このユニークスキル!【暴食】でなーー!!」
その瞬間魔王の姿はスライムのような形に変わり、俺を飲み込もうと大口を開ける。
魔王ってスライムだったのか…俺と同じユニークスキル持ちか。
考えてるのも束の間、魔王ことスライムは俺の全身を包み込んでいた。
「流石の貴様でもこの【暴食】を防ぐことは………!!」
どうやら気付いたようだな。
俺にそんなものは効かない。
暴食のスキルもまた攻撃の概念だからな。
「どうした?俺のこの【インビジブル】が欲しいんじゃないのか?」
「お、おのれぇーーーー!!!」
『フィニシャ・マ・グランド』
『ドガァァーン‼︎』
自暴自棄になって遂には自爆攻撃か。
哀れな魔王様だ……
♢♦︎♢♦︎♢
ーーーアバドンとウロボロスはどうやら決着が付いたようだ。
流石は魔王の右腕と、死と再生の不死者だ。
ポルターガイストとジャバウォックそしてヒュドラとヒュドラの分身は、見事にボロボロで戦意喪失している。
そしてこっちも終わりだ。
「はぁはぁ…な、なにが欲しい!貴様が欲しいものは全て!!」
『グサッ…』
俺は魔王の額に、魔王が所持していた暗黒の剣を突き刺す。
「俺が欲しいのはお前の魔王の地位…それだけだ…じゃあな」
こうして、魔王幹部を全員屈服させ、魔王を殺した俺は
新しい魔王として君臨するのであった。
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