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第1話 変態扱いされパーティからも国からも追放されました

「きゃぁぁぁあ!!最低!!変態!!死ね!!」


 宿屋の一室で突如、女の悲鳴が聞こえてきた。


 悲鳴を上げているこの女の名前は『ハンナ』上級職の賢者の職業を授かっている。

 どうやら俺のバッグにハンナの下着が入っていたようで、俺に罵声を浴びせる。


 もちろん俺に身に覚えはない。


「おい、『ライト』流石にそこまで変態な野郎だとは思わなかったよ……これはれっきとした窃盗犯罪だぞ?」


 俺の名前を呼ぶこいつは、このパーティーのリーダーで勇者の職業を授かった『エディン』という男。


「俺じゃない!そもそもーーー!!」


「言い訳はもういい!見苦しいぞ貴様!」


 俺の話を(さえぎ)り、怒鳴り声をあげるこいつの名前は『アイアン』

 上級職のパラディンの職業を授かっている。



「今まであたしの下着がなくなってたのもあんたの仕業だったのね!あんたのその変なスキルで!!」


 こいつの名前は………もういいか……。


 こいつらの名前なんてどうでもいい……。


 俺のこの能力【インビジブル】というユニークスキルのせいで

 俺は今まさに犯人扱いをされている。


 ユニークスキルとは、職業を授かる代わりに特別にもらえる権能のようなものだ。


 俺はこの力で透明になることができ、物理攻撃も、魔法攻撃も全ての攻撃という概念(がいねん)をすり抜けさせることができる。

 言わば無敵の能力だ。

 そのおかげで俺はこの勇者パーティに入ることができたのだが、無敵のスキルが気に入らなかったのか、

 こいつらは何かあれば俺の仕業だと、犯人扱い。


 今までもそうだ。


 お風呂で誰かに覗かれてると、勝手な被害妄想で俺のせいにしてくる始末。


 その時は俺にもアリバイがあり、住民の証言でことなきを得たが。


 今回に至っては俺のアリバイを知る奴らは『エディン』と『アイアン』しかいない。



 宿屋の男部屋で3人で寝泊まりをしていたはずなのに、俺が下着を盗むスキマなどないのだが。


「お前には心底呆れたよライト…部屋で何かゴソゴソしていると思ったらこれか…」


「そうだなエディンよ!あの時、吾輩達も止めればよかったのだが、よもや下着を盗んでいようとは……」


「お前らーーー!!」


 こいつらがグルだということに気付き、俺は反論しようとするが、またも話を(さえぎ)られ。


「もういい!お前はもう俺らのパーティーから出て行ってくれ!2度と顔を見せるな!さあ、ハンナおいで…奴にはこの俺の攻撃でさえも効かない…これで許してくれ……」


「うん…わかったよエディン…ほんと昔からキモいやつだったわ……」


 ハンナは涙を流しながら俺を睨めつけ、捨て台詞を吐いてエディン達と共に宿屋を後にした。


 宿屋の周りには、沢山の人だかりがあり、冤罪(えんざい)の俺に対して国の奴らときたら。


「おいてめぇ!聞いたぞ!ハンナちゃんの下着を盗んだらしいじゃねぇか!気持ち悪い!人でなしが!!」


「あんた!それでも勇者様の仲間なの?!これだから変態は!」


「この国から出て行けぇぇえ!!」


「お前なんかそのスキルのように一生消えてしまえばいいんだ!!」


「「「き!え!ろ!」」」


「「「き!え!ろ!」」」


「「「き!え!ろ!」」」


 俺は本当に何もしていないのに。

 どうしてこうなったんだ……

 思えばこんなスキルを手にしたのが間違いだったんだ。


 だったら本当に消えてやるよ…このスキルごとな!!


 俺は国の人達の罵倒罵声(ばとうばせい)に耐えられなくなり【インビジブル】を発動し、透明になる。


 「ははは!おい!本当に消えやがったぞ!よかったな!スキルのおかげで俺らがお前に手を出せなくて!恥をかいて1人でくたばっちまえ!」


「お前も道連れにしてやるよ…」


 俺はそいつの耳元で、殺気を放って囁く。


 するとそいつの顔は真っ青になり、慌ててどこかに消えてしまった。


 ははっ…最後にいいもん見れたよ……


 こんなスケベなスキルとはもう…お別れだ。



♢♦︎♢♦︎♢



ーーー俺は死に場所を探し国を離れ、少し離れた小さな村にたどり着く。

 しかし、その村は魔王軍の大群に襲われたばかりらしく。

 廃村(はいそん)に成り果てようとしていた。


 そんな中、生き残った人々は襲撃によって命を落とした人たちに素朴(そぼく)な墓をいくつも作っているようだった。


 その中に、まだ10歳にもなっていないほどの、幼い女の子の姿があった。


 その子は1つの墓をジーッと見つめながら微動(びどう)だにしない。

 よく見ると、下唇を噛み締め、涙を(こら)えているようだった。唇からは噛み締めすぎたのか、真っ赤な血が滴り落ちていた。


 すると、それに気付いた1人の男性がその子に


 「君は強い……その強い心はきっと神様が見ているよ…

さぁおいで……」


 優しく手を引っ張り、どこかに行ってしまった。


 その子が見ていたお墓を見ると、そこには


『ママ』


 の、2文字があった。


 俺の死に場所は、この瞬間決まった。


 いざ!魔王城へ!!



♢♦︎♢♦︎♢



ーーーと、その前に…


 魔王を倒すにも、流石に武器なしでは勝てるものも勝てない。


 だから俺はまたここに訪れた………。

 俺のことを(さげす)み追い出したこの国に。


 一文(いちもん)なしの今の俺には、武器や食料を買う金がない。

 ちょっとした復讐劇をこれからお見舞いしてやるよ。



ギィィーー………


「いらっしゃい〜残念だが今はもう店終いだよ!

ん?なんだ……だれもいないじゃねぇか…このドアもそろそろ取り替えか?」


 突然ドアが開き、独り言を呟く武器屋の店主。


 俺はそんな店主を無視して、武器の物色をする。


『ポイズンタガーナイフ』


 目当ての代物を見つけた俺は、それに手を触れる。


 すると一瞬で透明になる。


 俺の能力は触れたものにも、同じ付加をつけることができる。


 防戦一方の能力と思われがちだが、実は一方的に攻撃することができる最強の能力なのだ。


 まあしかし、攻撃力は武器依存になってしまうのがこのスキルの弱点かな…。


 だから俺はこの『ポイズンタガーナイフ』を選んだ。


 こいつのいいところは、どんなに状態異常耐性がある奴にでも、必ず0.1秒間は毒状態にすることができる。


 他の奴にとってはたいした武器ではないのだが……。

 まあいい…次だ。


ギィィーー


 「なんでい!!またかよ!!このオンボロが!」


 中で店主が吠えている…

 フンッ…アホヅラが眺めることができて満足だ。




ーーー次に俺が向かったのは道具屋。


 道具屋と言っても、今はバザーのようなイベントが開催されていて、俺はそこに立ち寄ることにした。


 『ウエスト・ウィザー・バッグ』


 俺は目が釘付けになった。

 小さいウエストバッグにも関わらず、中には何種類ものアイテムが入るという代物。


 (こいつはいい、このバッグは俺がもらっておこう)


 さっきの武器屋と同じことをやってみせ、俺はこのウエストバッグを身に付ける。


 (これでよしっと、いいバッグも手に入ったし手当たり次第この辺にあるもん貰っちまうか)


 俺はバザーに参加している奴らの商品をこれでもかとバッグの中に詰め込む。


 流石に商品が少なくなってくるのに気付いた1人が


「お、おい!俺の商品がいつの間にか無くなってるぞ!

テメェが盗んだ野郎は!!」


「お、おれじゃねぇよ!ふざけんな!!勝手に犯人扱いしてんじゃねぇ!!」


 2人の店主が怒鳴り合い、殴り合いの大喧嘩をおっぱじめやがった。


 俺もエディン達に1発ぐらいお見舞いすれば良かったかな

なんて少し後悔した。



 ーーーその日、この国では大量の窃盗事件が多発し


「あいつだ!あいつが戻ってきたんだ!みんな警戒しろ!」


 兵士達は警戒体制に入っていたが、その姿を俺は嘲笑いながら、1人魔王城に向かうのだった。



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また、同じくブックマークを押してくれるととてもありがたいです。


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