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聖女の存在

ロルフさんのプロフィールを追加しました。詳しくは登場人物で。

ロルフさんには、本当のことを言おうと、 私は口を開いた。



確かに私は、 魔法学園に通っている最中、 セレーネの行動を何度か注意したことはある。


女子生徒の目の前で、 その婚約者である男子生徒に、 過剰なボディタッチをしたり。


定例である社交ダンスの場では、 大衆の面前で、 私の元婚約者 ツェリオをダンスに誘ったり。

(ダンスは女性から男性、まして婚約者がいる男性を誘うのは、 社交界の場では一番やってはいけないマナー違反)


庶民である一般生徒の、 足をわざわざ引っ掛けて嫌がらせしたり。etc.....



これらを注意したのが、 嫌がらせの部類に入るかは、 ロルフさんの判断に任せよう。


長いこと話をして、 暫くの間沈黙したロルフさんは、 大きなため息をついた。



私の肩がビクリと揺れる。 やはり、私が悪かったのだろうか。

いくらマナー違反とはいえ、 見ず知らずの令嬢に注意する、 それ自体がマナー違反だったのだろうか。


間違ったことは、 言っていないと思う。

でもそれは、あくまで私の価値観で、 他から見たら、 間違った行為だったのかもしれない。



私が、 そんなことをぐるぐる考えていると、ロルフさんが口を開いた。


「色々やらかしてるんだなぁ… その、セレーネって嬢さんは。

庶民で孤児になった所を、 ライオネル侯爵に引き取られたってのぁ知ってたが、 それだってもう10年も前の話だ。庶民上がりだから、 社交界のルールをよく知らないって言い訳は通用しねぇ。 それを注意されたのが面白くねぇってのか。呆れたもんだ。」



「しっかし、元庶民が庶民をいじめるなんざ、 いいご身分だな。 ライオネル侯爵はどんな教育をしてきたんだか。」


腕組みをして、椅子の背もたれに寄りかかるロルフさん。


背もたれがミシミシいってるけど、大丈夫?


先程とは違う心配をしている私をよそに、 ロルフさんは話を進める。


「にしても、そんなことをしてて、 なんでお嬢が悪だってのを、 周りの連中が簡単に信じちまうんだ? 上手くやったってボロが出て、 すぐバレるだろう。」


「たし…かに。」


言われてみれば、確かに違和感はあった。


両親は、 警戒心が強いので、 目で見て確かめて、 吟味してから物事を信じるほど、慎重な人間だ。

こんな曖昧な情報を信じ、私を見放すとは思えない。

それに、私が国外追放になったのに、家はなんにもお咎めなし。それもおかしなものだ。



それに、 嫌がらせされた庶民の子。 その子達は泣きながら、私が犯人だと指を指し迷いなく言った。

誰かに脅された様子もなく、 まるで、私を恐れるかのように、 泣きじゃくっていた。



極めつけは、 ツェリオ。

最初は、寧ろセレーネを毛嫌いしていた。

公式HPにも載っていたが彼は、 自分の容姿や、権力に近寄ってくる女が大嫌い。

王族という自分の立場上、無下にできないため、 表面上は仲良く装っていてもセレーネに対して好感は持っていなかっただろう。これは、 恐らく間違いないと思う。 最初は、 セレーネのことも私に愚痴ってた。


それが、卒業式の直後を境に、全て変わった。


彼は、 いきなりセレーネを溺愛し、 彼女をいじめるな、 傷付けるなと私を目の敵にし始めた。


どうして私は今までそれに気づかなかったの?


何か…重要なことを忘れている気がしてならない。

そしてそれが、 このゲームの、世界の…一番重要な鍵になっているはず。



「もしかしたら、 あの嬢ちゃんは大魔法使いなのかもな。 魅了の魔法を上手く使って、周りをトリコにしちまう。大魔法使い…なんてな!がははは!」



大魔法使い…?……そういえば…確か彼女は…聖魔法使い…聖………聖女……



聖……女?



「あぁぁぁぁ!!」


「うわぁ!どうしたんだお嬢!急に大声出して!気でも狂ったか!?」


「失礼な!そんなんじゃないわ!」



そう!そうだ、思い出した!


セレーネは、生まれながらに類稀なる魔法の力を持っていた。

学園内に、 巨大魔獣が出てきて、 主人公を護るべく攻略対象が闘い、 命の危機!って時に、 光の祝福という大魔法を発動させる。


光の祝福は、 世界中に光のシャワーが降り注ぎ、幸福をもたらし、 悪を滅するという効果がある。


そして、 その大魔法は、 1000年に1度だけ産まれると言われる、 奇跡の大魔法使い…聖女にしか発動できない。



つまり主人公…セレーネは聖女。


……あれ?


「でも、 学園で、 あんなに大きな魔獣、出てこなかったわよね?」


もう学園は卒業しているが、 学園生活でそんな大きな魔獣は出て来てないし、 光の祝福すらまだ発動していない。



「おーい、お嬢ー? 嗚呼、駄目だ。お嬢はこうなると周りの声がてんで聞こえなくなっちまう…茶でも淹れるかぁ…」



もしも、ロルフさんが立てた仮説が正しければ、 セレーネが、 光の祝福を発動させるだけの魔力は、 今現在すべて魅了魔法に使われている可能性がある。


そうすれば、盲目的に皆がセレーネを信じる理由も頷ける。



「なんてこった…私じゃどうしようも出来ないわ。」


そう、それだけの魅了魔法を相手にするなんて、 大魔法使いでも無理。魅了魔法を使われている人物が使用者…つまりセレーネから離れれば自然と魔法は解けるけれど、同じ聖女でもなければその魔法に太刀打ちすることは出来ない




「ほらお嬢、お茶でも飲んで一旦落ち着…どわぁぁ!」


悩んでいたところに、テーブルを出して、 お茶を出してくれたロルフさん。

先程の椅子に腰をかけ、 背もたれに寄りかかると同時に


バキッ!


物凄い音がして背もたれが壊れ、 後ろに転倒するロルフさんを見て、 私は慌てて駆け寄り苦笑いをうかべる。


ロルフさんを起こすのを手伝っていると、 話したことによって私の中でなにかが吹っ切れたようで…


まぁ、 もういいや。私は国外追放されたし、 これからの生活をなんとか、 楽しくやっていこう。



そう思えるようになったのだった。



「ありがとう、ロルフさん。」


「いてて…なんだかよくわかんねぇが、こちらこそ起こしてくれてありがとうよ、お嬢」

ロルフさんが転倒した時、かったい筋肉のおかげで、木片が刺さることはなく、打撲程度で済みました。

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