30話 海
ボランティア部の皆で海へ行く当日。
昼前に茅秋のプライベートビーチに到着し、荷物を置きにコテージに来たのだが……
「ねぇ……ここ日本だよね……?」
絵本に出てきそうな、木々に囲まれた煙突のある木造の大きなコテージに皆が驚いている。
「皆どうしたの? 遠慮しないで入って良いよ」
茅秋が俺達が動かないのを見て、見当違いな言葉を投げ掛けてくる。
キョトンとした彼女の表情を見るに、本当に分かっていないのだろう……。こういう気取らない所も彼女の長所なのだが……
中に入ると、いくつもの扉がある廊下の先に海が一望出来る開放的なリビングが俺達を出迎えてくれた。大きなテレビに、三人掛けの大きなソファが2つ、アイランドキッチンがあるのにも関わらず、窮屈さを一片も感じさせられない。それでいて壁一面の木目の暖かみが安心感を与えてくれる。
「……もう驚かない。大体の予想はついてたから」
「ああ……」
そう語る夏恋と涼の瞳には光が無かった。
まあ俺も多少は驚いたが……二人はほど分かりやすくリアクションは取らない。同じく、滝野と伊深さんもリアクションはそこまで大きい方では無いが、一応「へぇ~」とか「凄いわね……」などと感嘆の声を漏らしている。
「部屋は一人一部屋あるからね。あ、でもあんまり広くないから期待しないでね……?」
「「「「 一人一部屋!!? 」」」」
ノーリアクション女王の滝野以外の全員が茅秋の発した言葉に思わず目を見開く。
随分と廊下に扉があるとは思っていたが……狭いとはいえ六部屋も……ということは6LKのコテージかよ! 聞いたことないぞ。
外のウッドデッキには木製の大きなテーブルと長椅子。海に沈んでいく太陽を背景にバーベキューなんてしたら最高だな。
「早く着替えて海に行こうよ~!」
目に写るもの全てに驚いている俺達を茅秋が急かす。
完全に忘れていたが本来の目的は海だ。折角来たのだから少しでも長く楽しまなくては!
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その後、俺達は各部屋で服の中に水着を来て海に向かった。
そして目の前に広がるのは白い砂浜、透き通っていて底の見える海。間違いなく日本に居るはずなのに、まるで海外のリゾート地に来ているかのようだ。
青春系の漫画などでは大体、「イエーーイ!! 海だぁ~!!」みたいなことを言って砂浜を全力で走り、海に入ったら互いに水を掛け合うのだろうが、俺の目に写っている光景は違う。
砂浜に来るなり、目の前で茅秋と夏恋が羽織っていたパーカーを脱ぎ、隠していた肌と水着を見せ付けてきた。
「悠くん、どう? 似合うかな……?」
「あ、ああ……似合ってるよ」
茅秋が身に付けているのはハイビスカスのイラストが描かれたオレンジ色のビキニである。大きめのフリルが特徴的だ。モデル体型の彼女に良く似合っている。
「ねぇ! 悠! 私は!?」
「うん、似合ってるよ。この前買ったやつ?」
「そうだよ!」
夏恋は水色のヒラヒラとしたフリルの付いたオフショルのビキニとショートパンツ型の水着だ。元気な夏恋の雰囲気に合っているし、爽やかな色合いが俺好みだ。
褒められた二人は照れたように笑っていた。
夏恋が照れているのを誤魔化すように話し出す。
「それにしても綺麗なところね。毎年来たいくらい」
「皆なら全然良いよ。あ、来年も来ようよ!」
「それは目一杯遊んだ後に言うべき事じゃないか?」
「確かにそうだね」
そう言って茅秋が笑う。
白い肌が太陽に照らされて、笑顔がより眩しく見える。
この時、頬と耳が少し熱くなるのを感じた。鼓動も速まっている。なぜかこの前から、茅秋のふとした表情にドキドキしてしまう。
「悠くん、どうしたの? 顔赤いけど……」
「き、気のせいだろ?」
「あ、もしかして……!」
俺がドキドキしているのがバレたのかと思い、茅秋が次に何を言うのかが気になって、合わせていた視線を反らせなくなる。
「日焼け止め塗ってないでしょ!?」
「……へ?」
予想外過ぎる彼女の発言に思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「男の子だからって塗らないからそうなるんだよ? 塗ってあげるからこっち来て?」
俺の手を引き、日陰に置いた荷物の所へと歩き始める。
茅秋が鈍感で助かった……
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