0話 さよなら
これは俺・宮原悠がまだ5歳の時の話。
庭で一つ下の妹・澪とおままごとをして遊んでいたとき、我が家と隣の家を隔てる垣根から同じくらいの年の少女が羨ましそうにこちらを見ていた。それに気付いた俺は
「一緒にやる?」
と聞いた。すると彼女は笑顔で頷き、可愛らしい白のワンピースをヒラヒラ揺らしながら駆け寄ってきた。
その日以来、毎日のように一緒に彼女と遊んだ。彼女はいつもヒラヒラしたワンピースを着ていたので俺はヒラリちゃんというあだ名をつけた。
彼女とは小学校に入学してからも放課後に近くの山まで行き、二人だけの秘密基地を作ったり、お互いの家にお泊まりしたりなど片時も離れない日があるほど仲が良かった。
───そして、小学二年生に進級した春。二人っきりの秘密基地でヒラリちゃんは大きくなったら俺と結婚したいと言ってきた。最初は突然おままごとを始めたのかと思ったが、彼女が顔を俯かせ、頬を赤く染めていたので本気だということ気付いた。そんな彼女を見て、初めて異性として意識し、彼女への好きな気持ちに気付いた。そして俺達は将来を誓い合った。
しかし、別れはあまりにも突然だった。二年生の秋。学校に行くと、先に行ったと思っていたヒラリちゃんはいなかった。最初は寝坊をしたのかと思っていたが違ったのだ。
予鈴が鳴り、担任の先生が教師に入って来るなり悲しい表情で口を開いた。
「○○ちゃんはご両親のお仕事の関係で転校してしまいました。」
この言葉を聞いて愕然とした。
今の俺はその日から小学校を卒業するまで何をしたのかほとんど覚えていない。ただ、ヒラリちゃんのいない世界はひどく色褪せて、つまらなかった。
唯一はっきりと覚えていることといえば、三年生の夏頃に久し振りに澪を連れて秘密基地に行くと、見覚えのない小さなお菓子の缶が置いてあった。開けると手紙と1枚の写真が入っていた。
「なかよくしてくれてありがとう。ばいばい。」
写真には公園で手を繋ぎピースしている俺とヒラリちゃん、俺の隣には澪が写っていた。
それを見た日、俺はヒラリちゃんがいなくなってから始めて泣いた。男の子は泣いてはいけないと母に耳にたこができるほど言われてきたが耐えることができなかった。
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そして、ヒラリちゃんがいなくなってから約八年。彼女の本名を忘れてしまった俺は高校生になろうとしていた。
はじめまして、五十嵐バスクです!
前からラブコメ小説を書きたいと思っていたので満を持して投稿しました!
気まぐれ投稿なので不定期です。
感想・アドバイスなんでも言って下さい!作品作りの参考にさせていただきます!