会話する日陰者
「ファイヤーボール!」
「ギィィィィィ!!!」
スワイの放った火球により息を根を止めたゴブリンと呼ばれている異形に近づく。
………さっきから魔法を撃つときに何か言ってるがそれが普通なのか?前衛に何を撃つか知らせているのかと思ったけど普段この3人で戦っているのなら事前に話し合いしておくだけで良いしな。俺も魔法を使う時は何か言っておくか。
「どうしたスガイ。ゴブリンに近づいて。」
「剥ぎ取りとかはお姉ちゃん達に任せて良いわよ。」
「分かった!」
「子供は元気だな。」
「無邪気にゴブリンの死体に近づく子供ってのもおかしい気がするんだが…」
「森暮らしっぽいし仕方ないだろ。」
「ねえお兄ちゃん!」
「どうした?」
「冒険者って何?」
「(………こりゃ随分と小さい頃に捨てられたのか?)………冒険者ってのは街の外の魔物を倒したり街の外にある普通の人には取りに行けないものとかを代わりに取りに行ったりする人達のことだ。」
「誰でもなれるの?」
「ああ、年齢制限は無いし資格も必要ない。ただ冒険者になる前に冒険者ギルドってのがあるんだがそこの試験官と戦ってその時の強さでランクってのが決まる。ランクが最低のGになると教官役が付き、その教官の下でしか仕事ができない。教官役が十分だと判断したらランクがFになって一人でも働ける。まあ、ランクによってできる仕事が決められてるから全部が全部自由じゃないけどな。」
「ランクを嘘ついたりする人はいないの?」
「冒険者になる時にカードが作られるんだがそのカードにランクが書かれている。仕事を受ける時はそのカードを提出しなきゃならない。他人のカードを出そうと思ってもカードを作るときに魔力の波がカードに登録される。魔力の波が違うとカードには何も写らないからそこでバレる。」
魔力の波でバレるのか………影写しで成りすましはできないと。
「なあスガイ君。」
「なーに?」
「もしかしてあの森には君以外に人が、大人が居るんじゃないかい?」
「どうしてー?」
「冒険者を知らないって事は随分と君が小さい頃に森に住み始めたはずだ。だけれど君はさっきの説明が分かることから知識は豊富なようだ。最低でも言葉の知識はな。そうなってくるとそれを教えてくれた人が居ると思うんだ。その人に俺らの事を伝えておかなくて大丈夫か?」
………まあそうなるか。あの説明は少し内容が足りなかった。鎌をかけられるのは分かってたがどう答えるか………
「僕あの森で倒れてたの。そこで色々教えてくれた人が居たんだけどその人は最近居なくなっちゃったんだ。」
ええ、随分と不親切な説明で終わらせた人がね………
「………そうだったか。ごめんな。辛い事を話させて。」
「ううん、大丈夫だよ。」
少し重くなった雰囲気の中4人は歩いていく。
「あ、そうだ。街って本がいっぱい置いてる場所があるんでしょ?僕そこに行ってみたかったんだ。」
「あ、ああ。図書館の事だな。今はイワンという街の西門に向かって歩いている。図書館は南門…門を通って真っ直ぐ進んだ所の噴水のある広場で右に曲がるとある。」
「因みに、あたし達が働いてる冒険者ギルドはその噴水のある広場にある剣と杖と盾のマークの看板の建物だから何かあったらそこに行って私達の名前を言ってね。」
「分かった!お姉ちゃん!」
「まあ一回報告の為にスガイ君にはギルドに来てもらうんだけどな。」
「それもそうだったわね。」
「「「アハハハハハハ。」」」
(空気変えたかったんだなぁ…)
この中で真面目なクラフは流れに乗り切れなかった。
「お、お前ら。イワンだ。」
へえ………あれが。
「………楽しみだな。」
「ん?そうかいそうかい。そりゃ良かった。」
ああ、本当に未知を知れるってのは楽しみだ。
 




