表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/35

これが日常

魔王ルストによるケイオス住民強制転移事件。

この件で万を超す人が死んだ。だが、強制転移させられた全員が帰ってきた。最後の一人が試練を終えた後、教会の前に何千人もの死体が折り重なり山となったものが現れたそうだ。まさに死屍累々。教会の人総出で頑張って全員蘇生場まで運んだらしい。その日の教会はとても大忙しだったわけだけど、一番忙しかったのは、何万人も蘇生したイーリスじゃないかと思う。

 今回は今までのに比べて大規模だったが、こういうの年一回あるらしい。来年はケイオスを離れて別の町に旅行に行こうかな。


 魔王と戦ったのが昨日のことでも、日をまたげば日常は戻ってくるものである。

 よく晴れた昼頃、俺は庭で寝転がっていた。昨日死ぬほど頑張ったから今日は休みだ。というか数日は休みでもいいと思う。

 結局昨日の儲けはゼロだ。大量の虐殺人形を倒したが、あれに討伐依頼は出ていない。あと、アジ・ダハーカを倒したが分体なので勿論報酬はない。苦労した分の報酬はあってもいいと思う。

 寝返りをうつと、庭の隅にある畑に魔法で水をやっているミラがいるのが見える。

 エクレが育てている畑から離れたところにあるそこの世話を任せられているみたいだ。

 ミラは土がドロドロになるほど大量の水をやり、雷を落とし、火を放って……

「って、なにしてんだ!?」

「ん? レイジどうしたの?」

 自分のしている事がさも当然かのように、不思議そうに首を傾げるミラ。

「どうしたじゃねぇよ、お前こそどうしたんだ!? 野菜を殺す気か!?」

「そんなわけないじゃない。ちゃんとエクレが貸してくれた本の通り育てているよ」

 そう言って、一冊の古びた本を見せてくる。

 字がかすれて読みにくいがタイトルに、「究極最強野菜の育成方法」と書いてある。

 タイトルを見ただけで嫌な感じがする。さらにこれをエクレが自分でやらないでミラにやらせていることに、嫌な感じが増す。そんな俺の感を裏付けるように、畑から音がした。

 畑を見ると、少し萎れた緑の葉っぱが育っている。

 ……おかしい。さっき雷や火を放っていたのになんで燃え尽きていないんだ。なんで少し萎れる程度ですんでいるんだ。あと、土が盛り上がってきている。まるで何かが出てこようとしているみたいだ。

 次の瞬間、土を撒き散らして何かが飛び出してくる。

「わっ……」

こっちにも何かが伸びてくるので、ミラを抱えて飛び退いた。

 完全に土の中から出てきたそいつは雄叫びを上げる。

「ジャガアアアアアアーーッ!」

 巨大なジャガイモが根を振り回している。

 野菜の枠超えている。化物と呼んだほうがいいんじゃないか。

「ありがとう、レイジ」

「いや……、はっ。しまった……っ!」

「え、どうしたの?」

「放っておいたら、ミラが根に絡め取られるところが見れたのに……っ!」

「…………あははっ」

「ミラが反応に困っているではないですか。己の欲望に忠実すぎるのも考えものですよ」

 今まで屋敷の掃除をしていたのだろう、布巾を持ったエクレが来た。

 エクレは巨大ジャガイモを見上げて、

「それにしても、随分と立派に育ちましたね。やはりミラに任せたのは正解でしたね」

「えへへっ、そうかな」

 エクレに褒められて、嬉しそうに顔をほころばせる。

「はぁー、仕方ない、収穫してやるか!」

 ケイオスの街の一角がたちどころに騒がしくなる。

 この街にとって日常の光景が今日も起こるのだった。


最後までお読みいただきありがとうございました。


次は、「ゴブリンを倒しただけなのに英雄と呼ばれるようになったんだけど?」を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ