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楽して強くなる

最近思うのだが、強敵ばかり相手にしている気がする。もっと自分の身の丈にあった手頃な強さのモンスターを倒してお金を稼ぐってのが冒険者じゃないのかな。なんで毎度格上相手に冒険しないといけないんだ。おかしくないか。もうこれはなんかに呪われているんじゃないか。

まあ、いくら嘆いたところでどうせこの先も理不尽な目に会うのだろう。なら、危険渦巻く外に出ないで家に引き籠もるか……、無駄だろうなあ。たぶん隕石でも降ってくるんじゃないかな。

死んでも生き返るからいいじゃないかと思うかもしれないが、痛みもなく一瞬で死ねるならともかく。実際にはめっちゃ痛い。早く殺してこの苦痛から解放してほしいと思うほどだ。それに蘇生するのに金貨一枚かかるし、地味に痛い出費だ。金貨一枚っていったら贅沢しなければ一ヶ月暮らせる額だからな。

それを日常的に払えるケイオスの冒険者たちは結構稼げているといえる。俺もケイオスの冒険者としてクエストや賭け事で結構稼いでいる。持つだけで簡単に強くなれる聖剣や魔剣などの良い装備が欲しいが、そういったものはとても高い。ちょっと手が出せないぐらいだ。それを手に入れるために危険なクエストを受けて痛い目を見るんじゃ、本末転倒もいいところだ。

だが、俺の天才的な頭脳はお金もかからず、強くなれる画期的な方法を思いついた。

そのためにイーリスに相談しにいった。危険だと渋られたが最後には聞き入れてくれた。

そして今日、手配してもらったものを受け取りに教会まで足を運んでいた。

待っていたマリアに普段人が入ることのない地下に案内された。

天上と壁から伸びる鎖によって縛られている武器の数々、その下には魔方陣が描かれている。近づくと風の吹かない地下なのにジャラジャラと鎖が鳴る。

 ここにある武器は全部呪われたものだ。

 呪われた道具を手に入れれば普通は教会に持っていき、浄化してもらうものである。しかし、中には呪いが強力すぎて浄化することができず、封印されるものもある。

 それがここにある武器だ。俺なら問題なく使えるので、貸出させてもらうことにしたのだ。というかこういうのあるなら、最初から言ってくれればいいものを。そうしたら、無駄に大変な目にあうこともなかったのに。まあ、過ぎたことは仕方ない。これで大幅に強くなれるのだからいいか。

 事前にどれを貸りるか決めていたので、五本の剣を受け取って帰る。これで、元の一本と合わせて、計六本だ。


「どうよ!」

特注の剣帯に三本ずつ腰の後ろで交差するように剣を吊るしている姿をミラとエクレに見せびらかす。

「どうって……えーと、かっこいい?」

「馬鹿に見えますね。武器をたくさん持てば強くなると勘違いしているのですか」

「ふっ、この凄さがわからないとはまだまだだな。いいだろう、ただかっこいいだけじゃないところを見せてやろう! その目にしかと焼き付けるんだな!」

 帰り道溢れ出しそうになる力を奮いたいのを我慢してここまで来た。それもミラたちに披露して驚かせてやるためだ。

 足に力を込め一瞬で背後にまわって驚かせて――

「――ぶっ」

 顔面から屋敷の外壁にぶつかった。気付いた時には目の前に壁があって止まることができなかった。

「レイジ!? だ、大丈夫?」

「言われた通り、レイジさんの間抜けぶりを一部始終しかと記録しました。これは永久保存ものですね」

 目の前がチカチカして顔の感覚がないが、手で触ってみて無事だとわかった。

「ああ、大丈夫みたいだ――ぁ?」

「え? ――きゃあ」

 また力加減を間違え身体が飛ぶ。そして、駆け寄ってくるミラを巻き込んで派手に転ぶ。

「……うっ」

 近くから聞こえるミラの声に上に乗っているのに気づき、慌てて退こうと地面に手をついて……。

「ひゃあっ……」

 地面にしてはやけに柔らかい。この感触にはどこか覚えがある。

あれは確か異世界に来た二日目の朝、寝てたから記憶がなかったが俺の手は確かに覚えている。

「な、な、な……」

 顔を真っ赤に染めたミラが目を白黒させている。

「わざとじゃない、これは事故なんだ」

「ミラを押し倒し、胸を触って興奮のあまり鼻血を出しておきながら事故というんですか」

 弁明する俺の逃げ場を断つように容赦ない援護射撃をエクレがしてきた。

 マジで鼻血出てるし。これはさっき壁にぶつかったから出たもので、決して疾しい理由ではない。ないはずだ。

 今回は本当に事故とはいえ、悪いのは俺だ。なら甘んじて罰を受けるべきだろう。……だけど、いい思いをしたとはいえやっぱ事故で罰を受けるのはどうかなーと思うわけで。どうせ痛い目見るのが決定しているんだ。なら、事故じゃなく故意で罰を受けようじゃないか。というわけで……。

「んっ……」

 ミラが色っぽい息を吐く。

「うわっ、最低ですね」

俺の所業を見たエクレが冷ややかな視線を向けてくるが気にはしない。俺は俺がやったことに後悔などしていない。

羞恥に顔を真っ赤にしたミラがわなわなと震えたかと思うと、

「なにをしているのっ、この《馬鹿あぁぁぁぁぁぁーー》!」

 暴風が吹き荒れ、俺の身体は空高く打ち上げられた。

 上昇が止まり、緩やかに落下が始まったが身体をくるりと回し華麗に着地する。だが、すぐさま雷電が牙を剥き襲いかかってきた。

「ぎぃやああああああーーっ!」

 黒焦げになって倒れる俺を一瞥することもなくミラは屋敷に戻っていく。


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