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ジェロム・クレベルソン

 プロエアリアルレース協会ツアーレース第11節、公認グレードB(メジャーツアー)・ツアーファイナル準決勝がやって来ていた。

 実は、同時期に地球と月では個人リーグ戦が行われており、この日が最終日となっている。火星と木星圏では選抜トーナメントが行われており、同じく準決勝が行われる。

 この地球と月、火星、木星圏で行われるレースがグレードAに認定されており、優勝者と準優勝者は|グランドチャンピオンシップ《グラチャン》への出場権が手に入る。

 地球と月では団体リーグの上位クラブから一人だけ飛行士(レーサー)を選抜して16人の個人リーグを形成する。

 地球は大きいリーグが3つある為、3つのリーグの上位16クラブ(その時々でリーグレベルに合わせて人数を変更)から選抜選手を送り込む。実は、そういう理由もあって地球では上位クラブは圧倒的な力を持つ半面で2部3部となるとかなり弱い。

 月の場合は1リーグなので、団体リーグの代表1名を選出。実は秋から冬にかけて行われる団体リーグで、下位3クラブに入ると二部落ちしてしまうので、このリーグへの出場が出来なくなる。その為か、12月から1月にかけての移籍可能な時期はかなり激しくなることもある。そして、月では個人リーグの事情がある為に、2部に至るまでレベルの高い選手が所属するケースが多い。

 火星と木星圏ではそれぞれランキングの高い飛行士(レーサー)が出場する為、クラブ格差はあまり関係ないのだが、上位リーグのクラブの最も高ランキング選手は優先出場権がある為、上位クラブに所属する選手以外はレベルが下がる傾向にある。それに月や地球程には人気が少ないというのもある。


 俺達はレースの為に関係者の集まるロビーの片隅にあるテーブルに座っていると、レースの情報がどんどん入って来る。

 各星圏の代表がどのようになっているか、他で行われているメジャーツアーがどのようになっているか、である。例えば、地球には時差があるので、グリニッジ天文台よりも東にある地方で行われるメジャーツアーは一足早く結果が出て来る。


 そして各星圏で行われる4大レースの横にツアーファイナルのベスト4も名前が載っている。地球の上位4名、月の上位4名、火星の上位4名、木星圏の上位4名、ツアーファイナルのベスト4。

 自分以外はいずれもエールダンジェマガジンなんかの表紙を飾ったことのある飛行士(レーサー)ばかりだ。ジェラールやヴェスレイ、ジェロムも例外ではない。


「何か凄い名前の場所に乗ってるよね。新人王上位経験者に並んでその名前が載っていると、自分まで凄い選手みたいだよね」

「でも、レンもこの大会でランキングを上げて、400位以内に入ってるからね。月では100番以内を切ったし、メジャーツアーの予選と本選のギリギリのラインまで来てるわよ?」

「マジですか!?」

「まだ、若手の上位陣にランキングは並んでないけどね。向こうは新人王とかおいしいポイントをゲットしているし、私らがスポンサー問題で出れない間もレースに出てるからだけど。こっちはほぼ半年分の積み上げしかないって事を考慮すれば、レオンさんがパウルス・クラウゼに説教をしたくなるのも分かるかな。うちらは既に射程範囲内に入ってるから」

「今の若手ランキングトップって誰?」

「リオ・マクレガーだけど、今大会でジェロムが越えてるから、U20最強は文字通りジェロムね。さすがに団体リーグに出られちゃうと、入るポイントがすさまじいからね」

 リオ・マクレガーもジェロムも名門クラブの団体戦メンバーだから、そこでポイントを稼いでいる。俺のようなフリーがランキングで勝てないのはそこにある。


「くっ……デビューはこっちの方が早い筈なのに」

「まあ、向こうはステップアップツアー優勝も早いしね。能力的には多分大差ないけど、向こうは射撃でポイントを確実に奪える武器があった分、頭角を現すのも早かったよ。でも……ここからは厳しくなると思うよ?」

「ここから?」

「自分の武器を時速800キロとか900キロくらいで保つ必要があるのよ。パウルス・クラウゼがあの曲芸をこの領域で出来れば間違いなく怪物だけど、彼はせいぜい500キロくらいが限界。ジェロムもそこまで行くと射撃精度は下がるしね。近距離系なんてその速度で駆け引きをして相手に近づかないといけないからもっと大変」

「ああ」

「だから、本当の勝負はここからよ。今日は勝とう。今日で全部使い潰しても良いからね」

「無論、そのつもりで飛ぶけどさ。俺は明日も勝つからね?」

「珍しく頼もしい。明日になっても同じことが言えたら見直してあげよう」

 リラは俺の頭を撫でながらケラケラ笑う。


 見直すも何も、今年が恐らくリラと組める数少ないチャンスになるのだろう。今年が終わったら、俺達はムーンレイク工科大付属高校に編入する。そうすれば、リラはジェネラルウイングの飛行技師(メカニック)候補生として数百人といる飛行技師(メカニック)の卵の1人になる。

 俺はジェネラルウイングとプロ契約を結ぶか、結べなければ学生として飛行士(レーサー)候補生として所属する。

 実質、ジェネラルウイングへの入団のタイミングで、俺達のコンビは解散だろう。

 俺達のコンビのタイムリミットは近づいている。


 だから、全部勝つ積もりでやる。解散するまで突っ走り続ける。俺達コンビが戦ってきた記録をこの世界に刻み付けてやるまで。



***



 俺とジェロムは小惑星エロスにある最大のスタジアム『ジャック・インバネス』の舞台へと立っていた。

『さあ、第3シードのレナード・アスターの登場です!ヴェスレイ・尹、高橋疾風、パウルス・クラウゼ、ウィリアム・パルムグレンとU20の強豪を悉く倒してきました!最高時速1458キロという現役飛行士(レーサー)の中では3番目の記録を持ち、圧倒的速度で対戦相手を翻弄し、ついにメジャーツアー準決勝に到達。3年前、月では最年少デビューを果たしつつも沈黙したままですが、ついにその頭角を現しました。対するはワイルドアームズのジェロム・クレベルソン!アステロイド帯の紛争地域で戦争奴隷として生まれ落ちた孤児が、ルヴェリア連邦の更生プログラムを経て、火星の名門ワイルドアームズへ入団。10代半ばながらも飛び級で新人王の準決勝へ進出。ワイルドアームズの3番手として団体戦に出場して一気にその名と実力を、そして若くして既にエアリアル・レース界最高の狙撃能力を示しました』

 実況の声が響く。

『オッズは五分五分、若干ジェロム・クレベルソンの方が優位ですね』

『直接対決では二度、ジェロム・クレベルソンが勝ってますからね。ただ、このコロニーツアーから連なるツアーファイナルにおいて、レナードはただ基本飛行能力だけでジェロム・クレベルソンと同格の若手をシャットアウトしてますから』

『彼は軍用遺伝子保持者(メタリックカラー)でもありませんし、天才という奴でしょうか?』

『いえ、一概にそうとは言えませんね。曲芸飛行や狙撃能力、近接能力は一切ありません。得意な事が『基礎飛行』だけですからね。基礎飛行は才能に関係なく時間と練習を重ねれば上手くなりますから。むしろ軍用遺伝子保持者(メタリックカラー)じゃない人間が、行きつくべき果ての世界にいると言えるでしょう。才能が無いから誰もがやれば伸びるものを伸ばした結果なのでしょう』


 放送は実は俺達にも聞こえている。

 だが、実況の人、ごめんなさい。確かに結果的にそうなんだけど、基礎飛行が楽しかっただけです。他の練習はやっても上手くならないし、面白くなかっただけです。別に努力何て何にもしてません。皆が大嫌いという基礎飛行が大好きなだけです。


 俺は実況の言葉に申し訳なく感じながら、心の中で謝る。


『この若干15歳の2人が今、U20で最強と言える事実。間違いなく、この登竜門と謳われるツアーファイナルを駆け上がった二頭の竜が激突します!』


 俺の遥か前方に立つのはジェロム。赤い機体の装備している。面白い事に、以前シャルル王子に貰った機種『クリムゾン』の最新機種だ。

 俺とジェロムは互いにヘッドギアについているグラス越しに視線が交わされる。


 今度こそ勝つ。


 カウントダウンは10を切る。リラは後ろに下がる。


 カウント0と同時に俺は一気に手袋型操縦器(コントローラ)を握ってフル出力で加速する。そして、出発早々に飛んでくる光弾をかわす。以前、この一瞬でいきなり点を取られてリードされた。

 俺は一気に加速してジェロムとの距離を詰めに行く。だが、俺の良く先を射撃で警戒しながら最短距離を潰しに来る。


 やはり、簡単に詰めさせてはくれない。こっちが速度を上げたように、向こうも速度が上がっている。飛行を狙撃技術で邪魔をして距離を詰めさせてくれない。単なる警戒なら避けずに突き進むが、恐ろしい事に3~400メートル位の距離でも普通に俺に直撃する光弾を撃って来る。

 恐ろしい事にジェロムは俺の飛行経路を邪魔する場所へ、ピンポイントで攻撃してくる。避けなければ確実にヘッドショットされる精度。


「相変わらずの化物め」


 加速させたくても中々速度を上げられない。出鼻をくじくような射撃をポンポンとしてくる。

 だけど、中々、追いつけなかった昔とでは違う。レオンさんとの戦いで覚えた射撃への対策。それが想定をはるかに超えた長距離でやらなければならないのは厳しいが、出来ない事ではない。

 超高速の世界で俺はジェロムの射撃を避けながら一気に背後を取る。


 俺の一方的な攻撃が始まる。だが、ジェロムも簡単には点数を取らせてくれない。左右に蛇行(シザーズ)をしながら射撃を避けつつ、逆に射撃を仕掛けてこちらも簡単に仕留めさせないようにする。

 飛行でポジションを奪っても簡単には点を取らせてはくれない。常にジェロムは射撃で狙ってくるうえ、狙いが正確だ。しかも超絶クイックドロウなので息を吐いたら簡単に攻撃を食らってしまう恐れがある。

 常に警戒しながら攻撃を仕掛ける必要がある。

 ジェロムは高度な曲芸を持っていない。それゆえに不意に俺の背後に回り込むような技術がない以上、この状況は恐らくレース中、ずっと続く。さて、どこまで続けられるのか互いの根競べの始まるとなる。


 高速飛行で追い回しながら、互いに互いの射線を切りながら点数を狙う。飛び交う光の弾丸を紙一重で避けて、俺は距離を詰めようとし、ジェロムは距離を取ろうとする。だが、近付こうとし過ぎればジェロムは逆に俺に近づいて近接を狙おうとする。そう、近接戦闘は俺の苦手分野でもある。戦闘シチュエーションが擦れ違い戦(ジョスト)ならともかく、併走戦(デュエル)になればかなりやばい。なので慎重に自分の距離を保ち続ける必要がある。


 ビーッ


 俺とジェロムのレースは前半を0-0の状況で終わる。

 俺もジェロムも直に飛行技師(メカニック)のいるスタート台の奥の控場所へ戻り、機体調整に入る。

 どちらも酸素マスクを貰って呼吸を整える。

「展開は悪くないわ」

 リラは今の状況に対して特に文句はないようで、淡々と仕事をこなす。

「但し、向こうは遠距離狙撃で一発狙えるから、絶対にこっちの距離とポジションをキープする事。言われるまでもないと思うけど」

 俺は頷く。呼吸は直に整う。相手が相手なだけに息を継げないのが一番つらい状況だった。そう、この状況で俺が点を取れず、一瞬の隙でジェロムは点を取る。これが才能の差だというのであれば、俺達はこれを越えなければならない。そして、恐らく俺にはそれを劇的に帰るような能力はない。だからこそ、こういうレースでは徹底してクレバーにチャンスを探し、この状況を壊されないようにして、そして押し勝つしかない。

「あと、高速域から低速域に行けないようにしたからね」

「?」

「スピードでもっとプレッシャーを掛けたいわね。レンの悪い癖よ。確かにジェロムに背中を向けるのはリスキーだけど、抜ける時は抜かないと駄目」

 中々に厳しい指摘である。だが、たしかに近接の選手なら背後から速度で近づいてそのまま併走戦(デュエル)を狙えるのは得策なのだが、俺の場合近接が苦手だから、どうしても追い越していかないと相手のスピードに合わせてしまう。


「停止する時はどうするの?」

「前にもやったでしょーに。ニュートラルに入れれば停止できるから。でも握りで低速に入らないようにしてるから、高速域だけで戦う事」

「分かった」

 つまり、俺の相手に合わせる癖を無くすために、いつもの無茶振りを機体に織り込んだという事か。まあ、慣れたけどね。まさか、この舞台でそれが飛び出すとは思わなかった。

 いや、これがリラの平常運転だ。恐らく誰もやらない、飛行士(レーサー)に対する負荷を与える行為。これは過去に何度もやっていた。俺の悪い癖を矯正させるために。

 今の機体になってから、もっと速い領域でやれるようになっているからこそ、普段よりも早くても、遅く相手に合わせていると指摘しているのだ。


 リラは早々に仕事を終えて俺を見る。

「良い。レンは自分のペースで飛ぶのよ。相手にあわせない。遅いと感じたらさっさと抜いてポジションの取り直し。相手を煽って煽ってペースを崩す。それに」

「それに?」

「アンタ、気付いてないだろうけど、相手に合わせてる時、遅くてストレス溜まってるわよ。飛んでる時の顔を見れば一目瞭然なんだけど」

「マジで?」

「6年もコンビ組んでるんだから分かるわよ」

「分かるのか」

「私から言えるのは一つだけ。好きにやりなさい。その手綱だけは私が握っておくから」


 競走馬みたいな扱いだが、確かに飛行士(オレ)飛行技師(リラ)の関係はよそと違って、競走馬と騎手みたいな関係に見える。

 鞭の代わりにスパナで叩かれている気もするけど。


「じゃあ、楽しんでくるよ」

 俺とリラは軽く手の甲を合わせ、そして俺はヘッドギアを取り付けてレース場の方を見る。


 ジェロム達はかなりバタついている様子だった。

 まだ酸素マスクを離せていない。恐らく、向こうの方が精神力は削れている筈だ。もっと煽ってもっと飛ばしてこっちのペースに持って行く必要がある。俺とジェロムの戦いは我慢大会だ。ジェロムは元狙撃手というだけあって我慢大会には定評がある。だが、普段の生活だったり狙撃とかならともかく、レースにおいて負ける気が全くしない。


 カウントダウンが1桁に入る。俺とジェロムはヘッドギア越しで互いに睨み合う。


 そして、カウントゼロと共に飛び出す。

 俺はスピードを飛ばしてジェロムの背後へと直に辿り着く。背面にさえ正確な射撃で攻撃してくる恐ろしさは変わりない。俺は速度を上げて死角へ死角へと動いて重力光拳銃(ライトハンドガン)の射線を切る。

 ジェロムはそこで速度を緩める。近接を狙いに来ているのは明らかだった。

 俺は加速して急旋回(ブレイク)で距離を取りつつ一気に加速して、重力光拳銃(ライトハンドガン)で射撃をしながら、ジェロムに攻撃を当てられないながらも近接を避ける。


 だがジェロムも簡単には俺の飛行に振り回されたりはしない。俺が追い抜く瞬間を狙って射撃を仕掛けて来る。俺も分かっているので背を向けながらもヘッドギアで背後を見ながら、射線から体を外して再びジェロムの背後へと回り込み好位置を奪いに行く。

 ジェロムも簡単にポジションを取らせたくないから速度をあげる。

 互いに一歩も引かない飛行戦になる。


 だが、ジェロムには一芸ともいうべき武器がある。飛行技能は同年代の中ではトップクラスなのだが、この業界の中に入っても頂点に近いのは狙撃だ。絶対に狙ってくる。

 俺は死角に入って近づいて攻撃を仕掛ける。

 徐々にだが、ジェロムは反応が悪くなってきていた。削り合いの結果が出てきている。ジェロムは一気に組み付こうと速度を合わせて近づきに来る。

「くっ」


 俺は急旋回(ブレイク)で切れて、レース場の中央方向へと逃げる。

 もっとも距離が離れる。


 刹那、ジェロムは腰のホルスターに重力光拳銃(ライトハンドガン)を収めて、重力光狙撃銃(ライトライフル)を取り出す。俺は引き返しジェロムへ距離を詰めに行く。一方的に狙える場所にいたら逆に危険だ。

 俺はこの狙撃に対して、ヘタクソな盾捌きでは意味をなさないので、重力光盾(ライトシールド)をホルスターにしまい、狙撃に対して体の接触面積を下げるように正面を向いて一気にジェロムへ向かう。こちらも重力光拳銃(ライトハンドガン)を向けながら、射撃しつつ一気に詰める。


「終わりだ!」


 ジェロムが狙撃をしてくる。俺はジェロムの指のタイミングを計り、咄嗟に右に逃げる。掠ったのは左の操縦系装甲(アームプロテクタ)。弾かれるような感覚と、引っ掛かりを感じるがポイントにはならない。

 だが、ジェロムはあれを連射する。逃げた先を読んでいたように第二の狙撃。

 俺は今度は左へ避ける。ヘッドギアにギリギリ化するかどうかという所。右目の端に強い光が過ぎるのを感じる。

 ジェロムは三射目を狙ってくる。

 だが、それは悪手だ。

 俺は加速してジェロムに向けて射撃を放つ。ジェロムは自分を固定させるためにニュートラル飛行状態になっている。この状態なら、射撃が下手な俺でも、セミオート射撃で当てられる。ただジェロムに向けて引き金を引くだけでいい。


 ビビーッ


 俺とジェロムの射撃が同時に放たれ、ポイントのおちる音が二つなる。

 だが、俺は4つ目の攻撃を、ジェロムの引き金を引くより早く到達する。一直線にジェロムへの接触を狙っていたからだ。

 通りすがりにジェロムの右肩を叩いて通りすがる。


 ビーッ


 俺とジェロムの点差は2対1になる。俺が胸に1点、ジェロムは胸と右肩の2点が落ちる。


 リードをしても気を抜ける相手じゃない。このペースを続けなければならない。再び俺はジェロムから距離を取り、そこから死角に潜り込んで攻撃を続ける。

 だが、ここから、ジェロムの射撃精度が落ちて来る。俺は飛行を続けるが、点数はとり切れなかった。


 レース終了のブザーが響く。


『2対1 レナード・アスター選手の勝利です』

 電子音声が響き渡り、大きな歓声が響き渡る。


 俺は思い切り疲れて息を吐く。ジェロムはレース場でその音を聞き、首を捻って溜息を吐く。


 俺とジェロムは飛行技師(メカニック)のいるスタート台のある入出場口に戻るべく移動を始める。

 擦れ違う際に操縦系装甲(アームプロテクタ)を付けたままだが握手をする。

「今度はこっち追いかける番だな」

「まだランキング越えてないし、まだまだだよ。でも次は…|グランドチャンピオンシップ《グラチャン》予選か。1対1対1対1(バトルロイヤル)形式だけど、またやろうぜ」

「ああ」


 俺達はリラのいる場所へ戻り、観客の歓声に手を挙げて応えてレース場から去る。

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