マルグリット・王
スバルカップの予選トーナメントを勝ち抜くと、本当に本選1回戦でエリアス・金と対戦する事になっていた。しかもそこで勝てばワイルドカードが使われなかったせいで、既にフィリップ・シルヴェーヌ・ルヴェリア王子殿下が二回戦から始まる事になっている。
エリアス陣営やシャルル陣営がどんな手品を使ってこんな組み合わせを生み出したのか聞きたい所だが、多分説明されても分からないだろう。
だから聞かないでありのままを受け入れる事にした。
2回戦の相手も3回戦の相手も20代半ばのプロ飛行士で火星の2部リーグに所属する強豪だった。とはいえ、俺よりも世界ランクが1000位程度上にいるってだけなので、別段困る事はない。
2000位代の俺からすれば1回戦を勝ち抜けば軽く1000位上がるので、手強い相手だったが、負ける事も無かった。
とはいえ、さすがはメジャーツアー。予選といえど、強力なプロが出てくる。よく勝ち続けられるものだと自分で自分を褒め称えたい。
***
俺とリラはどうにか予選決勝戦まで辿り着いたのだった。
このレースは昼にあり、午後の夕方は出場選手が集まって会食をする。よくよく考えるとそこで暗殺したほうが早いような気もするのだが………それは無いそうだ。
俺達は予選決勝戦間近となり、今泊まっている部屋を引き払ってからレースに行く予定だ。勝てばそのままAARPが用意しているホテルへ行く流れである。
これは、メジャーツアーの本選は賭博の金額が大きいので、一般人とプロ選手を隔離するようにするためである。当然の話だが八百長も禁止。その為、協会が公認している場所に居を移す必要がある。
ちなみに本選だと宿泊費も移動費も全て無料だ。お迎えの車も来るし、お迎えのAI搭載型ロボットまで付属する。
一度メジャーツアーに出てしまうと、分からない事は全て協会にお任せとなる。
但し、大規模なクラブの場合、メカニックや色んな関係者が付きまとうので、その全てを無料では対応できない。その為、自分たちの保有する施設や、借りた施設、はたまた宇宙船をプロ協会に公認してもらって、そこで宿泊をするらしい。
メジャーツアーのある都市は基本的に大都市なので、スタッフが100人位を泊められる場所を作ったり、貸切にしてしまった方が安いらしい。
***
俺達は予選決勝戦を翌日に迎える。
機体性能の向上に加えて、擦れ違い戦でも思い切って相手に向かって攻撃をかわしに行くので、レベルが格段に上がったトーナメントであっても、近接にもつれ込むことなく勝ち星を挙げることが出来ていた。
相手が火星の一部リーグであるヴェリアリーグで活躍した事もあるベテラン飛行士を相手に勝利できたのは一つの自信に繋がった気もする。この調子で明日の決勝も勝ちたい所だ。
そんな中、ロレーナさんはシャルル王子から持たされた情報を俺達の方へ持って来てくれる。
「殿下が調べた所ですと、レース中に事故を装って殺す為の武器は既に搬入済みだそうです」
ロレーナさんは状況を説明をしてくれる。
「でも、それじゃ、分からないから捕まえる事は無理なんだよね?」
「1回戦で倒して頂くしかないという事です」
「最初から分かってたけどさ」
「まあ、あまり気負わないで下さい。殿下のことだから、何だかんだ言いつつも、どっちに転んでもどうにかなる様に動いている筈ですから」
「そういわれても俺は俺でやる事があるから」
カイトをこっち側に連れ戻す。それが今回の俺の目的なのだから。
だから、勝つしかないのだ。
「次の対戦相手に勝たなければそもそもそこに辿り着けないんだし、次に集中しましょう」
パンパンと手を叩いて俺達に声を掛けるのはリラ。
「そうだね。なんだか夢のメジャーツアー出場が目の前にあるってのに、全然、そんな雰囲気じゃないなぁ」
「確かにね。まあ、運よくチャンスが回っただけなんだし。でも、これでポイントも結構入るし、今後のスポンサー探しだってぐっと楽になるかもしれないし」
「あー、それはあるね」
互いに頷きあう。
「次の相手って誰なの?」
「んー、キャリアが少ない相手なのよ。火星の若い女性飛行士みたいよ。レンより年下は初めてじゃないかな?」
「年下か。デビューした頃は現役最年少だったのに、月でもハッサン・アブトレイカ君みたいにどんどん年下って出て来るよなぁ。これは負けられないな」
「対戦相手のマルグリット・王は昨年度に、12歳ながらもプロのツアーに出てプロランキングを手に入れているのよ。あのマーズロケットのU16に所属しているみたいね。プロツアーでの活躍で、飛び級でガールズリーグに出場してたし。決勝で桜と戦ってた子よ?」
「桜さんと戦ってた子?」
年に1度、春ごろに行われる若き飛行士達の国際大会。優秀なU16の選手が出場するボーイズリーグとガールズリーグというレースが存在する。同時にヤングリーグとレディスリーグというU20の選手が出る大会も行われる。
INAAC(国際エールダンジェ委員会)の公式ツアーレースの一つとして数えられている。
「桜さんが勝ってるんだよね」
「攻撃力は桜より強いわね。何ていうか………牛みたいな感じ?」
「闘牛みたいな?女の子相手に俺に逃げろと?」
「アンタ、誰が相手でも距離を取って追ってくる相手から逃げるタイプでしょうが」
「おっと、忘れてた」
相手が女性だからと言って自分のスタイルが変わるわけでもない。相手が誰であろうといつも通り飛ぶだけだ。
「マルグリット・王ですか。厄介な子と当たりましたね」
ロレーナさんが知っていたようでふと気づいたようにぼやく。
「知ってますか?」
「以前、ジェロムが戦ってましたから」
「ジェロムが?」
「はい。確かに彼女を表するならリラが言うように………牛みたいなイメージですね。最近格闘系の飛行士が中距離系攻撃として偶に使う空気弾を使ってましたね。近接から逃げるところで空振りの拳によってポイントを奪われたから、かなり焦ってました」
「空気弾?近接系、しかも格闘技が得意なタイプなの?」
俺は空気弾をそもそもレースの場で見た事がない。拳を振り回すことで圧縮された空気を撃ち出して目の前の相手に不可視の攻撃を仕掛けるというのだ。重力制御の場合、力を撃ち出す際に光が放出されるので見えるのだが、空気を押し出されてしまうと目に見えない。
間合いの分かりにくい嫌な攻撃だというのはプロの世界でも言われている。そもそも空気を撃ち出す反動を自分も受けるから、使い勝手が悪く、使い手が少ないというのが事実である。
「レンの一番苦手な、飛べる近接攻撃の得意なタイプね」
「やだなぁ」
「でも、月の最年少君も近接が得意だったし、飛行系が上の年代で流行ってるから、私達やその下の年代はどうも近接系が流行りなのよね」
「何で?」
「飛行系に強いのは近接系。流行ったスタイルの飛行士が増えると、その年代で強いのは流行りのスタイルに強いタイプ。つまりうちらの年代って飛行系が多いのよ」
「なるほど。………飛行系多いか?」
俺の記憶が確かならば、飛行系というか小手先のクルクル飛行はよく見るけど、正直、飛行系で一度たりとも主導権を握られた事が無い。
去年の10月頃にムーンレイク高専オープンツアーに出場したけど、1対1対1対1形式のレースで負けたレースではあったが、高校の全国大会出場者で手強い選手もいた。だが、それ以外にまともに思い出せる飛行系の飛行士を思い出せなかった。大体、最後は俺に特攻する飛行士ばかりだ。
でも若手の有名選手が飛行系が多いというのもあながち嘘じゃない。
「レンはほとんど飛行系を売りにしてる連中をスピードで置き去りにしてまともにテクも出させないから、相手が飛行系なのに飛行系だって気付かない事が多いのよ」
「そ、そーなん?」
「最近は小手先技術を注目されていて、速度耐性はプロに入ってから身に付ければいい、みたいな感じだけどさ。レンはプロと同等の速度耐性があるからね。スカウト基準では才能が無いように見えるかもしれないけど、今やれば大体、皆、基礎だけでがっつり勝てる」
「リラさん。ちゃんと育てて。俺をもっとちゃんと育てて」
俺はスカウト好みされない戦い方を覚えているのに何の指摘もしてくれない相方に涙して訴える。だが、リラは首を横に振って大きく溜息を吐く。
「別にアンタが勝手に育っただけじゃない」
無慈悲な女だ。
「ですけど、それ単体だけで殿下と引き分けていたんでしょう?正直、レナードさんってトッププロに負けない飛行技術があるのでは?」
「基礎だけならトッププロで飛んでても違和感ないけど、射撃技術も防御技術も飛行の駆け引きも宙返りのような相手をかわす曲芸飛行も近接戦闘能力も、本当に何も無いんだもん。だから、これを身に付ければ勝てるようになる、みたいな将来性を誰も感じてないんだと思うわよ。レンはただ飛ぶのは上手いけど、飛行士として強くないよねって印象なんだと思うわ」
「なるほど。ジェロムの射撃技術みたいな点数を取る強みがないって事ですか」
ロレーナさんはうんうんと頷く。
「このまま誰も気付かない内に、飛行だけで世界を制して、皆をぎゃふんと言わせてやる」
「さすがにプロクラブのスカウトもそこまで来れば気付くとは思うけど、私は最初からそのつもりよ。その前にはまず、このメジャーツアーを勝ち抜く。アンタの目標は取り敢えず1回戦勝ち抜きみたいだけど、こちとら狙いはこのスバルカップで優勝して一躍スターに躍り出るところだし」
「やだ、ウチの相方が凄い目標掲げてる。飛ぶの俺だからね?」
「リラって前から思ってたけど、性格は飛行士向きよね」
ロレーナさんも呆れたようにぼやく。
そう、ウチの飛行技師は俺よりも飛行士向きで男前なのだ。美人で胸も大きい最高のパートナーである。
「取り敢えず、次の対戦相手のレース見てみるかぁ。次を勝たないとどうしようもないしさ。こっちだってメジャーツアー初挑戦は楽しみだし」
カイトの事はある。大きい事件の中に巻き込まれている事もある。
だが、幸運にもメジャーツアー出場まであともう一歩という所に来ているのも事実なんだ。夢の一つがどさくさに紛れてあと一歩まで来ている。ここでうっかり落とすわけにはいかない。
俺はマルグリット・王選手の過去のレースを見ようと探す。
去年の5月ごろに行われたガールズリーグのレースをマーズネットにつなげる。既に依頼主経由でマーズネットにつながるようになっていて、即座に|INAAC《国際エールダンジェ委員会》のサイトに入り、過去のデータを確認する。
ガールズリーグの決勝戦の映像が映し出される。女子4人が1対1対1対1形式のレースの為に、大きなレース場を四方から囲むように立っている。
「ごっついなぁ。桜さんの美しさが際立つ」
身長180センチくらいありそうなごっついU16の女子選手が紹介される。白人系というよりは白熊系と言いたくなるような容姿の女性に俺は大きく引きつる。
次に紹介される桜さんの美しさが際立つかのようだ。神秘的な黒髪にオリエンタルな容姿、スレンダーでありながら胸元の丸みも年相応以上に持っている美しき飛行士の登場に、会場も一際湧き上がっているのが分かる。女子の中では実力や実績は良いほうらしく、美しさも相まって人気のようだ。
そして次に紹介されるのはイオ連邦から参戦している女性飛行士のようだ。こちらは逆三角形の筋肉質な少女だ。水泳もやっているらしくオリンピック候補だったとか。目が離れ気味で茶色いエールダンジェを装着していて、野生の馬のように見えなくもない。
最後に紹介されるのがマルグリット・王だった。桜さんも含めて背の高い選手が目立つ中で明らかに小柄な少女が紹介される。そういえば彼女はU16の大会に出ているがこの頃はまだ12歳だったとか。そりゃ小さいだろう。白熊系、東洋美人系、馬系と続く女性陣の中で可愛い系と評して良い容姿だった。
だが、明らかに不自然な容姿だった。太っているかと言われれば顔立ちからすれば太っているようには見えない。だがどう見てもふくよかに見える。そう、胸を押さえるエールダンジェの大きさが妙にごっついのだ。そして12歳とは思えない谷間が見える。しかもインナースーツを着ているのにだ。
「12歳…だと。あれが?」
リラとロレーナさん曰く『牛系』という言葉だが……
まさか牛っておっぱいが牛っぽいって事!?
俺は同年代でリラより胸の大きい少女を初めて見たよ。
マジかー。
レース中に間違えて触ったらどうしよう。不可抗力だよね?いや、むしろあれだけ大きいと間違えて触ってしまうと思うな。うん、間違えてだ。けっしてわざとじゃない。ほら、俺ってば近接嫌いだからね。だからうっかりワシッと揉んでしまっても、きっと偶然。
「言っておくけど、もしも下心で近づいたら、アンタ速攻で落ちるからね?」
「はっ……な、なるほど、ハニートラップか。恐ろしい。マルグリット・王」
「いや、勝手にトラップに引っ掛かったらスパナで流血するくらい殴るよ?」
リラはポムポムと手の中でスパナを遊ばせながら俺をジロリとにらむ。
いやだなぁ、そんな事するわけないじゃないか。ちょっとしか考えてないってば。レース中にそんな事はしないってば。
「桜の乳に銃口突き付けた前科があるからな、レンは。危なっかしい事この上ない」
「全く下心なくやった事なのに、犯罪者のように言わないでください!」
リラの理不尽な言葉に俺は大いに驚くのだった。
レースで近接状態のカウンターで胸のポイントを取る為に伸ばした銃口がたまたま胸元に当たっただけだったのに!
だが、レースを見ると、確かにマルグリット・王は強かった。
彼女は近接を狙って白熊系女子に真正面から向かいに行き、擦れ違い戦で鋭いフックを放つ。相手の白熊系女子はバックロールで攻撃を回避したと思いきや空気弾によってフックの余波みたいな形で背中に攻撃を受けて胸部のポイントが落ちる。
これはかなりいやらしい。
空気弾は空気を撃つので高速飛行中のバランスを取るのが非常に難しいと聞いていたが、自在に使っている。
「バランス感覚が良いね。そして確かに闘牛みたいにずんずん近づくね。銃口向けられても全然逃げないし、あの空気弾は差し詰め闘牛の角だね」
「プロの場だともう少し防御をするけど、女子飛行士内のレースだからなのか、相手が近接のスペシャリストだからなのか知らないけど、失点覚悟でゴリゴリ点を取っていくのよ」
空気弾は厄介そうだ。プロのトップで使っているのは見た事があるけど、同年代が使うというのはかなりレアだ。プロ仕様の特別な操縦系装甲が必要だし、飛行と近接技術も必要だ。
そして、ゴリゴリ近づこうとするスタイルは、俺の最も嫌いなタイプだという事実もある。
彼女たちのレースはマルグリット・王のワンマンショーのように次々と近づく相手から失点覚悟でポイントを奪っていく。
前半は桜さんも彼女から延々と逃げていた。
マルグリット・王は9得点5失点、白熊系女子が3得点4失点、馬系女子が5失点、桜さんが2得点と桜さんは無難な可もなく不可もなくというレース展開を見せていた。
だが、後半もマルグリット・王は次々と獲物を見つけるや否や追いかける。必死に桜さんは逃げていて、上手く白熊系女子へマルグリット・王を押し付けるように飛んで、逃亡をする。
レース画面も全てが桜さんが消えて、マルグリット・王も白熊系女子をKOに追い詰めようと一気に詰め寄る。
白熊系女子もうっかりやられるのは危険と判断して逃げようとする。
それでもマルグリット・王が白熊系を襲いに加速しようとした瞬間、レース画面の外、マルグリット・王の死角からいきなり桜さんが飛んできてレイブレードで左肩を叩いてポイントを奪う。さらにマルグリット・王がバランスを崩したところを重力光拳銃で射撃して残りの1点を取ってしまう。
結果として、マルグリット・王はKO負けをする。白熊系と馬系の女性陣は失点が目立ち、桜さんはそこから一方的な逃亡劇を始める。二人に追われて尚逃げ切ってしまう。
「うわー、えげつない」
「桜の奴、画面から消えたのは右上だったのに、いきなり左下からひょいと現れたでしょ。あれ、画面の外で誰に狙われたわけでもないのに、マルグリット・王が視線を切った瞬間にループを使って逆方向に飛んでたわよ」
「マジで?どの画面?うわ、本当だ。なに、この人。凄いえぐい。汚い」
「こういう策略の上手さとかはレンも見習った方が良いわね。前のムーンレイクでやった1対1対1対1形式のレースで負けたけど、やっぱり戦略が無かったのが痛かったし。勝ちに集中すると、桜って本当に上手いのよ。レンと戦った時辺りから、そういう姿が見えなかったけど、最近復活してきたわね」
「言われればそうだね」
「多分、妹の治療費をクリアして『勝利への執念』が薄れてたんでしょうね。でも、最近は戻って来てると思うし、今度当たったら手強いわね」
っていうか、ベンジャミン戦の後辺りなんだよね、桜さんが強くなってきたの。
リラに勝利の執念が足りないって指摘されてからだと思うんだけど……本人が焚きつけた事実に気付いてないのかな?
「まあ、でも…こっちの方がプロ歴も年齢も年上だし、俺としては負けられないよ。いくらタイプ的には苦手な相手でもさ」
「ちょうど同じ年代でプロになってるからプロ歴も1年向こうの方が少ないのよね。まあ、……相手の飛行技師がプロだって所くらいじゃないかな?そもそも空気弾はプロじゃないと調整できないでしょうし」
「うわ、もしかして飛行技師も一流どころ?」
「過去にメジャーツアーを取ったベテランよ。飛行士の親戚らしいわね。何ていうか子供の頃から英才教育を受けた感じの飛行士なのよ」
親の七光りとは耳にする言葉だが、だからとて実力の世界において七光りで所属するクラブからの支援やコーチ、飛行技師に恵まれる事はある。
だが、レースとなれば実力が無ければ通用しない。勝ててる以上、ただの七光りじゃないのは事実だ。
「手強いなぁ」
「向こうもメジャーツアーが後一歩みたいな状況だし、狙ってくるでしょうね。ただ……」
「?」
「………私達よりも彼女たちの方が、エリアス・金に勝てる可能性が高い……………って、ごめん、今の忘れて」
リラはとんでもない事を口にして慌てて否定する。
らしくない。
そう、ここ最近のリラは非常にらしくないのだ。少し弱気な気がする。メジャーツアーの話が出たら喜びそうだが、話を精査して慎重になっていた。いつもならレースの話があればリスクも無視して飛びついて、優勝しなかったら殺すとか言いかねない女なのに。というか最初はそうだった。急に弱気になっていた。
まあ、今回は俺が引っ張るつもりでやるから良いんだけど、ちょっと調子が狂うな。
***
そして俺達は予選決勝戦へと向かう。
巨大なレース場は予選ながらも多くの人が詰めかけていた。火曜日ではあるが、予選最終日は二試合しか行われないので夜に行われる。14歳と13歳のレースとあって注目度が高いらしい。
まあ、火星の選手なので目当ては向こうみたいだけど。
マルグリット・王の登場に盛り上がる会場、完全アウェイであった。
平日だというのに、ヘラス・クリスタルスタジアムに詰めかけるのは15万人の大観客。
『マルグリット・王選手!年齢13歳、身長152センチ、所属は既に飛び級をしてマーズロケットのU20で研鑽を積んでいます!飛行技師には大叔父のデイビッド・王が付いています。そして聞いてください、この大歓声!未来のニューヒロインの登場にクリスタルスタジアムが揺れています!』
派手な選手紹介はアイドルのコンサートのような変な熱狂があった。
正面に立つ彼女の姿はあまりにも、愛らしい少女なので仕方ない気がする。エールダンジェで胸元をがっちり抑え込んでるはずなのに、観客に向けて手を振ると胸が揺れるとかどんな中学生だ。スゲーな、おい。
確かに対戦相手はかなり可愛い女の子だ。だが俺の天使はいつだって後ろにいるのだ。俺は背後に立つ相棒を見る。
うん、大丈夫。美人度で勝ってる。
そう確信してレースのスタート台に足を掛ける。
『対するはレナード・アスター選手。月に住む14歳の若手だそうです』
俺の紹介もあるが何だか雑な感じだった。
現役最年少だったのは遠い昔、前期中学2年生になるとまだまだプロで活躍する選手がいなくても俺くらいの場所で勝ったり負けたりしている学生の有名選手がたくさんいるのだから仕方ない。
カウントダウンは一桁台に入り、俺達は互いに見合うようにレース場を見る。
カウントがゼロになると同時に俺達は右回りで光の翼を広げて空へと飛び立つ。
互いに遠距離で撃ち合いから始めるのだが、どうも互いに遠距離攻撃は得意ではないようで、俺も向こうも当たる気がしない。今回のレース場は直径500メートルで、通常のレース場よりも広い。そのせいでより顕著に射撃技能の弱さが露呈する。むしろ、こういうレース場だと遠距離射撃を得意にする相手も遠すぎて当たらないから助かる。
俺は全速力で飛んで、早くもマルグリットの背後を取って、主導権を握る。
マルグリット・王は必死に俺の銃撃から身を守ろうと蛇行を入れたり、振り切る為に急旋回を入れたりして逃げようとするが、スピードが足りない。
こっちが一方的に攻撃を続け、向こうは逃げ続ける。
ポジションが悪いのか、映像では問答無用で襲ってくるイメージがあったのだが、彼女は俺から逃げていた。
急旋回のタイミングを読んで、射撃を撃つ。ギリギリだったが右肩を掠めてさっそく先制点を手に入れる。
さらに追いかける。だが追いかけるというのはこっちが向こうに向かって行っているという事。一瞬の飛行変化で近接に持って行かれる恐れがある。
背後を追いかけていると、突如スローダウンして俺との近接を狙ってくる。
だが距離はあるのでそのまま追い越してしまおうと俺は考えるが、その瞬間相手は拳を横薙ぎに振って来る。
その場所では攻撃は当たらないし意味がないと思いつつも回避行動をとる。すると強力な暴風と空気のきしむような音響き、右肩を強く叩かれたような衝撃を受ける。
ビーッ
「!?」
全く攻撃になっていないと思っていたものによって、俺の右肩のポイントが奪われる。
だが相手は自分のバランスを整えていて連続攻撃はないようだった。
あれが空気弾か。
フックのように撃って、横薙ぎに不可視の攻撃が飛んできた。威力は強くないしポイントが落ちるとは思わなかったけど……5メートル圏内で攻撃の軌道上にいると危ないな。
空気弾のような珍しい攻撃は、トッププロと戦わない限り、実践の場で目にするのは稀だ。初見なのは当然だが、かなり厄介だと判断できる。
ただし、ぶつかった雰囲気からすると、射程はもう5メートルも伸びれば当たってもポイントが落ちるほどの衝撃じゃなかったような感じがした。10メートル未満の射程、拳の振った方向に横薙ぎに飛んでくる。長い重力光剣を振って来るというイメージだろう。重力光剣と違ってぶつかったら弾かれる訳ではないので、横薙ぎの方向が悪いと一度に2~3点取られる可能性があるのが怖い所だろう。
あと、攻撃後に少しもたついていた。恐らく連発は困難。
飛行士は自分の周りを流体制御しているので、自分の周りの空気を乱すあの攻撃は、バランスを崩しやすいと思われる。
プロのレースで空気弾を使う飛行士は、近接戦闘で相手に離れられそうになった時に逃がす前に使うような手段で、普段は全く使わない。つまり、リスクも大きい技術なのだろう。
俺は再び相手を追い越して先へと飛び、追いかけて来る相手を突き放して、遠距離での射撃戦を経て、再びの飛行戦になる。
一つ気付いたのは、彼女は確かに飛行は上手いし、色んな技術もあるのだが、基礎飛行は他のプロと大差ない。一発がある部分が怖いが、飛行で俺から主導権を握る事はないだろう。そう判断するのには十分だった。
俺は更に背後から攻め立てる。マルグリットは防戦一方となり、背後に向けて銃口を向けて必死に抵抗するが、俺もそれに対応できているので、全く当たる気配はない。
ただ、辞めて欲しいのは、俺があまりに一方的に飛行主導権を握るから、彼女は涙をためたような表情で俺を追ってくるのだ。なんか、俺が虐めているみたいじゃないか。
会場もブーイングに包まれていた。アウェー感が半端ない。
***
中々得点は取れなかったが、それでも射撃で両腿のポイントを落として、ハーフタイムに入れたのは良かった。3対1、危なげなくリードが出来ていたのだが……ハーフタイムに入ると、リラは慌てて俺の機体調整に入る。
いつものように外部装甲を外して、電力供給装置に電源ケーブルとプログラム書き換え用のケーブルを刺しこみ、ノート型モバイル端末を使って大慌てで調整データを書き換え始める。
「そんな慌てなくても大丈夫だと思うけど」
何をそんなに慌てているのかと、俺としては首をかしげるところだ。
レースはこちらが一方的に進めてる。厄介な部分はあるけど、些末事だ。油断なく、きっちりレースをすれば勝てると感じている。
「相手は修正してくるわよ。レンが予想以上にスピードがあって飛行士が追いきれてないから、追いきれるように感度や速度を変えて来る。それに空気弾の射程を上げてくる可能性もある。勿論、飛行士がその出力でバランスを取れるか分からないけど」
「………こっちが押してるのは向こうも分かってるし、賭けに出る可能性もあるのか」
「そういう事」
リラは相手の機体に対応して、こっちの機体も修正をするらしい。
機体同士の駆け引きなのか。そういえば、向こうはベテラン飛行技師のチームが付いているらしい。
俺はマルグリット陣営を見ると、向こうも飛行技師が重力翼制御装置や操縦系装甲にコードを刺しこんでデータの書き換えをしているのが分かる。新しい外部装甲を持ってくる助手の飛行技師がいて、バタバタと忙しそうだった。
当の飛行士であるマルグリット・王はボトルに入った飲みながら、こっちの方を見ていた。俺と目が合うと慌てて目をそらす。
何だろう、睨まれていたのだろうか?さすがに500メートルも先の場所にいるのでヘッドギアの下についているグラス越しで目を凝らさないと見えないので、よく分からないが。
リラは機体修正のデータ変更を終えると2本のコードを引っこ抜き、重力翼制御装置に外部装甲を取り付けてスパナでボルトを締める。
「さあ、行ってらっしゃい」
「はいよー」
ペシッと俺の後頭部を軽く叩いて送り出してくれる。
***
カウントダウンがゼロになり、レースが再開される。
互いに超高速で飛び回り、自分に有利なポジションを奪いに行く。
飛行戦になるや、早々に俺が彼女の後ろを取って追い回す形になる。女の子を追い回すというのはなんだか犯罪チックだが、レースなので仕方ない。
追い回しながら更に背中と腰に射撃が入り、二つのポイントが入る。残すは頭と左肩のみとなる。KO勝利を狙わなければこのまま逃げるのは余裕の相手だ。
そもそもマルグリット・王という対戦相手は俺に近づこうとするのだが、自分の間合いに良い形で入ろうとし過ぎていて形振り構った動きをしない。強引さが無いので怖さがない。
元々、俺は非常に荒々しいフィロソフィアカジノで逃げるレースを身に付けている。いつも形振り構わず襲い掛かるプロに負けてきている。その為、殺気纏わせて殺すつもりで突っ込まれても慌てる事はまずないし、その手の反撃シチュエーションにも慣れたものだった。
綺麗に自分のペースに持って行こうとする彼女は非常にやりやすい。ぐいぐい出ていけるのは自分が速度で勝てている時だけだと理解できる。桜さんが彼女を上手くやり込めたのはこういう部分だろう。
実力自体は、多分、俺や桜さんと大差ないと思う。
そんな中、彼女は急な減速で俺と並ぼうとする。
一緒に減速するとこっちの逃げにくくなるのでよくない。とはいえ、向こうが減速してこっちがそのままなら、思い切り並んでしまう。体のバランスを変えるだけで、迂回するように小さく軌道を変えて追い抜こうとする。空気弾の推定射程は10メートル程度だが、余裕をもって15メートルほど、迂回するように動きつつ、拳の振る延長線上に来ないように注意する。
予想通りで拳が宙を切る。俺は余裕で掻い潜るのだが、そこで俺の機体に大きい異変が起こる。
ガクンッと飛行が落ちて重力感が俺を襲う。
「!」
だが、即座に機体に元の浮力が戻って、立て直ることが出来た。
心臓が凄いバクバクと音を立てていた。一瞬、あれで落下して終わるかと思った。多分、避けた場所が悪かったのと、空気弾の効果範囲が想定をはるかに上回っていたのが伺える。
大きく迂回して、彼女との距離は20メートル位の距離があったのだが、どうもそれ以上の効果範囲に設定したようだ。性能が倍以上になってれば、そりゃこっちも想定外だ。しかも、そしてやられた場所はポイントではなく翼だ。背中にある重力制御する光の翼は重力光拳銃の光弾を受けても、重力光剣で切られても、特に問題が起こるようなものではない。そんなので問題が起こったら危険なのだから当然だろう。
恐らく問題は、空気弾という特殊な攻撃が翼全面を強引にたたくような形になったのだろう。それで流体制御を失ってしまったと思われる。
やばかった。油断していたのは否めない。
俺は慌ててバランスを取り直して相手を見る。畳み込まれやしないかと危惧していたが、俺よりも彼女の方がやばかった。
バランスを崩して彼女は自分からレース場の壁にぶつからないように存在する斥力フィールドに吹き飛んで左肩と頭をぶつけてしまっていた。
ビーッ
『7対1、勝者レナード・アスター』
という放送が流れるのだが、俺は慌てて引き返す。
マルグリット・王は操作をミスって混乱したようで、翼を失って落ちていくのだ。
俺は引き返して彼女の手を取って落下するのを助ける。別に落ちても死にはしないだろうが、めっちゃ怖いからね。俺の場合即座に気絶するけど。
「え?あ…」
よほど混乱していたのだろう。涙目じゃなくて本当に涙が流れて顔を青ざめさせていたようだ。
「大丈夫?」
「…あ、す、すみません」
俺の問いによって、バタついていたマルグリット・王は自分が俺に支えらえて浮いている事に気付いたのだろう。
「大丈夫?翼が消えてるよ」
「はわわわわ。あ、ありがとうございます」
マルグリット・王は自分がかなり慌てていた事に気付いて両手をゆっくりと握り翼を再び放出させる。
うん、俺も高所恐怖症を発動させてしまうと、混乱して気絶して落下一直線だから気持ちは凄く分かる。たった指先をちょっと動かすだけで翼が形成されて無重力状態になるのに、その超簡単な作業が一切できないのだ。
俺は彼女の手を放し、互いの入出場口へと戻っていく。
***
俺とリラは控室を出て、ロビーの方へと歩いて向かう。
「はあ、良かった。無事に勝てて」
「予想をはるかに超えてたわね。っていうか自爆勝利かぁ。でも、空気弾で翼が消えたのはびっくりした。あれで負けたかもって思ったし」
リラは胸を撫でおろすようにぼやく。
「握りっ放しの状況だったから直ぐに翼が戻ったよ。良かった」
「そういう設定なのよ。無駄にシステム領域が食うからよくないんだけど、アンタの場合不慮の事故で飛べなくなったら負けるでしょ。空を飛ぶたびに私に感謝しなさいよね」
「はいはい」
まあ、空を飛ぶ度に、心の中ではいつだって最大限の感謝をしているんだけどね。さすがにそれを肯定するのも恥ずかしいから、その件については流すことにする。
俺達が歩いてロビーに出ると、そこにはマルグリット・王とその飛行技師達がいた。俺達と顔を合わせると、筋肉質なベテラン飛行技師がずんずんと俺達の方へと向かってくる。
「レナード君だね」
「はあ」
「ありがとう。恩に着る。もしもウチのメグがもしもあのまま地面に落ちてたら、高所恐怖症になって飛行士生命を絶たれている所だった。礼を言うよ。本当にありがとう」
マルグリット・王の飛行技師と思しき男は、俺の手を両手で取って、感動したように強く握りしめくる。
「え、あー、どういたしまして?」
俺が困ったように返すのだが、俺の後ろで笑いをこらえたように顔をうつむけて、若干肩を震わせているリラがいた。
ですよねー。
俺、高所恐怖症でも飛行士生命絶たれてませんが何か?
「あ、あの、レナードさん。今日はありがとうございました」
おずおずと飛行技師の後ろにいた少女は俺を見上げて来る。そういえば小柄だった俺も、この業界で初めて自分より小柄な相手と戦ったような気がする。
「別に、俺もよく混乱して、やらかすから」
「そ、そうなんですか?あんなに飛ぶのが上手なのに」
「ま、まあ、…………だ、誰にでもそういうのはあるんじゃないかなー」
高所恐怖症だからなのだけれど、さっきの話の流れでは言いにくい。
「あ、あの。出来れば良いんですが、今日は本当に何もさせてもらえなくて。ここまでこれたのも幸運があった部分があるのは分かってるつもりですけど、もし差支えが無かったら、何で簡単にあしらえたか教えてくれませんか?」
マルグリット・王は俺を見上げて助言を求めて来る。
確かに手ごわい相手では無かった。年下だからという訳では無いが、彼女はプロでの経験不足の一言に尽きると思う。実力はあると思うけど、素直過ぎる。思えば彼女の対戦相手も強いものの経験値の低い相手が多かったような気がする。若い選手同士の戦いが散見された。
「うーん、駆け引きとか強引さとか色々と足りない、かなぁ。俺の場合、KO負け覚悟で俺にぶつかって自分が負ける前に倒してやる、みたいな無茶苦茶な飛行士と戦う経験が多いから、近接をさけようとする事に慣れてるんだよね。もう少し無理やり形を作っても良いと思うけど」
「無理やりですか?でも、そうすると間違えて自分もポイントが一緒に落ちて負けそうですけど」
「そこはリスクとリターンを考えると思うけど。残りが少なくなれば、ぶつかり合ったショックで自分のポイントが一緒に落ちるリスクは少ないし」
「な、なるほど」
「あと、戦略かなぁ。俺もプロになる前は、ガールズリーグの覇者になった桜さんと何度も戦ったけど、やっぱり狡猾にやり込められて黒星ばかりだったし。あの人の場合は、俺が自分から擦れ違い戦へ向かわないと、併走戦で落としますよ、っていう究極の選択を選ばせるような巧みな戦術を駆使するから。マルグリットさんはそういう狡猾さとか強引さとか、無理やりレースを勝とうとする部分が足りないかなって思った。今日も正直、凄く上手いし、手強いとは思ったけど、負けるとはあまり思わなかったし」
俺が何となく思ったことを伝えると
「ほら、だから言っただろう、メグ。もっと強引にいかないと駄目だって。素直なのはお前の良い所だが、レースではそんな素直で綺麗すぎる戦いをしてたらこの先勝つのは厳しい。育成世代では通用してもプロでは通用しないってな」
「むー。レナードさんまで叔父さんと同じことを言うんだもん」
マルグリットさんはどうやら俺と同じことをよく言われていたらしい。
キャリアがあればすぐに感じる事だろうから、身内のプロ飛行技師からそういう指摘を受けるのは当然だ。
彼女の所属するマーズロケットは常に火星の上位にくる強豪だ。プロと練習する機会があればどのくらいの差があるかはわかりそうなものだ。
「別に強引に行けとか、狡猾にやれとは言わないけど。実際、俺なんてそういうの一切してないし。でも、自分の得意な形にどうすれば良いのか考えた方が良いと思うよ。俺はいつも相手がしたい形を作らせないために頭悩ませてるし」
「うーん……」
「まあ、メグの場合、もっと基礎飛行練習の質を上げないとな。俺が見るに、レナード君は基礎飛行に関しては世代でも頭一つ抜けている。恐らく軍用遺伝子保持者じゃないから特別な才能を持たないがゆえに、基礎飛行を真面目に取り組み続けてきたのだろう。才能に胡坐をかかず、苦手な練習もきっちりやらないとな」
「ううう、叔父さんが意地悪だ」
すいません、俺は基礎飛行訓練以外ほとんどしてない人です。履歴書に「趣味:基礎飛行練習」って書けるくらい飛んでます。
でもやっぱり基礎飛行練習って嫌いな人いるんだ。あんなに基礎飛行練習楽しいのに。色んなバリエーションあるし、ずっと同じ格好で飛ぶ訳でもないから、飽きる事もないし。確かにやり過ぎて翌日とか体中が筋肉痛になる事もあるけど。何故嫌うのか分からない。フィロソフィア時代なんて、毎日レースがあっても、明日筋肉痛になろうとも基礎飛行練習だけは絶対に欠かさなかったのに。
「今日はメグにも良い薬になっただろう。明日は手ごわい相手だろうが期待しているよ」
俺の肩をバンバンと叩いて飛行技師の男は去って行く。最後に俺に挨拶をしてから飛行技師に付いて行く。
「何で助言するかなぁ」
去って行った後にリラがぼやく。
「何でって?」
「明らかに才能が向こうの方が上だからね。あの子が戦略性や強引さが身に付いたら、あんた、勝てないよ?」
リラの突っ込みがとても痛かった。
確かにあの子は俺の苦手な近接系だ。桜さんの腹黒系スキルが身に付いたら勝てる気がしなかった。