その場のノリと勢いって結構大事
龍神ゼクス経由のありがたい最高神からの忠告に従って朝、廊下でルークと遭遇した瞬間に魔法をかけた
「ルーク!ここで会ったが250年目!覚悟ー!!」
「うわぁぁぁああああ?!目が、目がぁぁああああ!?」
突きつけた指先から魔力が放出され、ルークの顔面、正確には両目の上で魔法陣が展開され、カッ!とフラッシュのように瞬いた。
どっかのム〇カさんみたいなリアクションを取ったルークは狭い廊下を転げ回った。
「何をしてるんだ、朝っぱらから...」
「元気ですねー」
「コントかよ」
「...ブフォッ」
既に朝食を取るために席についていた4人組。ウィルヘルムは意外と笑いの沸点が低かったのか、真顔で吹いていた。
チッチッチ、分かってないなぁ
「いやね、何を隠そうルークくんは魔人族。希少なことには変わりないし、なんだっけ...そう!ミース教!なんと人族至上主義だと言うではないですか!遭遇した瞬間に何言われるか分かったもんじゃないし、余計な騒動などお呼びじゃねーんですよ!」
今気づいたという顔をするのは、未だに腹を抱えてテーブルに突っ伏すウィルヘルム以外の3人。
「...今の今まで忘れていたが、確かにその通りだな。というか、君たちのインパクトが強すぎてそういう諸々が吹き飛んでいたな...」
「本当に。私たちがここにいることになった、そもそもの原因だったというのに...キャラが濃すぎるんですよあなた方。」
失礼な
「私らのせいにしないでちょうだいな。むしろそっちの方がインパクト強いんじゃないの?殿下?」
チッ、目をそらした
「シオン、ほどほどにしなよ」
ルークが何とか復活したみたいだ。でもまだ目をこすっている。目をなんとか開けたルークにアルバートが一言。
「ルーク、鏡を見てこい。「え?」今すぐ」
アルバートの真剣な様子にルークの口元が引きつった。
「まさか、シオンがとんでもないことを...?」
「いいからいいから、ルークのためなんだよ!悪いようにはしてないって!」
疑いの目を向けるルーク。しかしその目の色は常とは違う───
「うわぁ、何これ、目の色が蒼い?」
深い蒼色に染まっていた
「ふふん、私ほどになれば体の組織に干渉するくらいなんてことないのでーす!これならどこからかどう見ても人族に良くいる平民!...では無いな。うん。これで平民はナイ。」
あまりにも、そう。貴族っぽいのだ。
「ああ、これで平民なぞありえんな。確実に事情を根掘り葉掘り聞かれるな。騎士団の詰所で。」
うんうん頷く3人と、先が読めたようにから笑いするアルバート。
「しかも、なんか色の配色がアルス皇国民っぽい感じだわ。」
そう。アルス皇国は北国だからか知らないが、色素が薄めなのが特徴だ。今のルークの銀髪蒼眼はまさにアルス皇国に一番よくいる色彩だ。
あ、
「設定を考えないといけないわ。そうね、私は親戚の従姉。ルークはアルス皇国の貴族に仕える従者を輩出する家の3男、見聞を広めるために従姉を訪ねてきた。そういうことにしましょう。」
「現実味がありそうな雰囲気だな」
「ありがと。で、私は訪ねてきた従弟をルイン王国の王都へ案内する旅の途中、あなた達4人が怪我をして倒れているところを発見。見捨てられずに手持ちのポーションをぶっかけて助けた。」
「あり、か?」
「ありよ。事情は深く聞かなかったけれど、追手がかかっている事を危惧して王都までは街を避けて、巻き込んでしまった私たちは、証人として王都まで共に来た。そういうことにしましょう。」
少し考え込んだがアルバートは頷いた
「その設定で行こう。行方不明の昼帰りだが、それなら国王陛下にも納得が行く説明として使えるだろう。事情説明にしばらく追われそうだ」
「アハハハ!頑張りなよ近衛騎士団長閣下、それとその旗下の方々?バラしたら龍神が怒るわよ?」
冗談なのに顔から血の気が引いていく4人組
「どうかしたの?顔色悪いわよ」
「「「冗談に聞こえない」」」「(こくこく)」
「だよねー。マジでありそうだ」
ルークまで、ヒドイや...
「コホン、それは置いといて、真面目な話。」
「次はなんです」
セインが心底疲れた目を向けてくる。
「えー、この悠久の森に初めて入ることを認められた人間4人には、私から豪華景品が進呈されます」
「「「「は?」」」」
ルークは、「あれかー」なんて遠い目をする
「じゃ、じゃーん!〝収納魔道具〟腕輪タイプ!なんとこれ、パッと見は腕輪だけど実はダンスホール1個分は入ろうかという容量を誇るスグレモノ!今なら盗難防止で個人設定もできる貰い得景品となっております、はい『カシャン』」
「「「「なっ?!」」」」
「もう他人は触れないよ?」
いつの間にかルークはお茶をすすっていた。
「被害者が増えたね。」
感慨深げに自身の手首を飾るものを見せる
「僕もあの押し付け景品の被害者なんだ。今じゃ有効活用させて貰ってる。あと、捨てても帰ってくるから売っても無駄だよ?」
某呪いの人形バリの追跡機能も搭載してます☆
その腕輪が確かにその通りの性能だと確認したあと、愕然とした表情のアルバートはほとんど消え入りそうな声でうめいた
「......何故...ここまでしてくれる?」
おや
「何か不安かね?」
「ああ、なにか裏があるのではと、疑ってしまう...」
「安心しなよアルバート、私は伊達に長生きしてる訳じゃないんだ。アンタの国くらいなら片手間での国崩しくらい軽い。裏なんて探ってるだけ無駄だよ。それにねアルバート、私はあんた達4人組をかなり気に入ってるんだよ。気が向いたらこの件が終わったあとも遊びに行こうかなって思うくらいにはね。」
国崩しという言葉に顔をこわばらせたものの、その後に続いた言葉で力を抜いた
「それは、昨日あったばかりの私たち4人を友人と認める、という事か?」
ふふん、と笑う
「だいせいかーい」
「シオンはちょっと簡単すぎると思うよ」
「ルーク、こんなの難しく考えたら負けよ。それにさ、友って打算ありきの関係じゃないでしょ?困ってたら何かやってあげたいっておもうものよ。」
「えー」
「何より!、ここは私の家よ。私の家では私がルールなの!」
ルークがまだ何か言いたそうだったけど無視。「横暴すぎだ」なんて聞こえたけど無視ったら無視だ。
「くっはは!うだうだ考えるのが面倒になってきた。でも、いいな、それ。シオンの家ではシオンがルールか...なら、意義は唱えまい...」
「団長が決めたなら私もそういう事で。」
「俺も同じくー」
「同じく...」
もうみんな開き直ったみたいだ
「よし、じゃあほんとに真面目な話。あと三十分したら出発します」
「ああ、頼む。」
「帰ったらまた色々ありそうです」
「濃ゆいなー最近。」
「...報告書、下書き書いとく。」
「「その手があった」」
3人は足早に、アルバートは苦笑いであとを追った
「子供に色々あげたくなるおばあちゃんの気分...?」
「止めてあげて、みんないい大人なんだから、これ以上いじったらかわいそうだよ...」