シオンって龍神さんと似てるよね by最高神
「...い、いちまんにせんねん」
「団長、このひと、やばい人?」
「龍神の...義理の娘...ですって...」
「守護者?大陸の?ラスボスの間違いでは?」
「アルバートさん失礼な事言わないでくださいよ、ホントのラスボスである所の邪神は私たち使徒が封印した(※設定)んですよ、もし復活したら今んとこ私ぐらいですからね、対抗できるの」
それに対してジェインが吠えた
「は?!それ一番のカミングアウトだから!邪神ってあの伝説の邪神でしょ?!」
「どの伝説よ」
「ルイン王国の創世記だよッ」
アルバートは合点したように手を打った
「ああ!確かにあったぞ、創世記に邪神戦争の記述が!まるで荒唐無稽な話だと学者は言っていたが...事実なのか?」
「ええ、(ゲームでは)魔物が溢れ、(ゲームの設定上)神が私たち使徒を遣わし、(ゲーム内では)70年かけて邪神を封印するに至りました。」
それにセインが続けて言う
「確か、ルイン王国を創った初代国王は邪神戦争に参加しており、使徒が結成したギルドのメンバーとの交流も浅からぬ方だったとか、」
え、初耳。
「何てギルドだったか伝わってる?」
「はい、確か『神々の黄昏 (ラグナロク)』だったかと。意味は伝わってはおりませんが、使徒が恐れるほどの強さを誇ったと...
どうかなさいました?」
「...いや、そのギルドはね、私のこの世界で親友と言ってもいい人物がギルドマスターを務めてたギルドなんだ。」
懐かしい、色々強化された影響か、今も鮮明に思い出せる。私は基本ソロだったから、たまにギルドホームに突撃したら『まーたきたのか、いい加減うちに加入しろよ』なんて勧誘をしてくる、気のいいネコ耳だった。ネコ耳。ちなみにアバターは筋骨隆々のオッサン。
「私以上に変わったヤツだった...で、その初代国王の名前って...」
「はい、初代国王陛下のお名前はベンジャミンと記されて「ベンジャミン?!」...えっと?」
その名前は予想外...!
「ベンジャミン君といえばムッキムキな男臭い野郎どものひしめく傭兵団に何故か所属してたあのショタっ子?!ギルドのお姉さま方にもみくちゃにされてたあの?!たまに女装させられて涙目になってたあのベンジャミン?!もれなく私も可愛がったけど、あのギルドに関わりの深い住民と言えばムッキムキのオッサンかと思ってたのに...!」
頭を抱えて悶絶する私を見てアルバートがボソリとつぶやく
「初代が...ショタっ子、」
そう言えばこいつ子孫だった
「確かに、ベンジャミンも金髪に赤目だったけど、えぇぇえええ...ホントに?」
セインは感心したように何度かうなづく
「王族は皆金髪に赤目です。なるほど、初代からの遺伝だったのですね」
ならば
「アルバート、ちょっと確認するね?」
「何をだ?」
「いいからいいから、〝解析〟!」
上から下までしっかり見る
「何か見えるのか?」
「ええ、本当にあったわ、」
「何があるというのだ?!」
「龍神の加護 (小・隠蔽)。」
「は?!何故そんなものが?!」
「龍神さんが見つけやすいようにって付けたんだって」
「誰が見つけやすいようにだ?」
「私が。」
沈黙がその場を支配した。
ボソッ「...龍神ってすごく天然?」
ウィルヘルムの一言は、的確に的を射ていた。
「一応恩恵もあるみたいよ、成長率上昇(微)だけど...」
「確かに、総じて王族は何かの分野で上達が速いと聞いたことがあります。コレのせいだったのですね。」
セインは結構情報通なんだね、っていうか、
「ねぇ、私のことはおいおい後でも質問を受けるけど、あなた達はどうしてあそこにいたの?」
「それは僕も気になります。王弟、しかも近衛騎士団団長とその直下の方々ともあろう人たちが何故この森に?しかもシオンが出向いたのは東です。ルイン王国はこの森の南でしょう?」
ルークの台詞ももっともだ。しかし、それを聞いて4人は表情を固くした。
「そういう事だったか、なるほどな。」
アルバートはなにかに納得したみたいだ。
「ここは私が説明しましょう」
アルバートに目配せされたセインが説明をする
「ルイン王国は、アルバート団長の父君である前王陛下の前、おじい様が王位にいた頃、名ばかりの王位であることを嘆かれ、政治に介入する貴族を大量に粛清なさりました。
その影響で高位貴族が大量に断絶し、侯爵位に新たに陞爵した伯爵位が三門ありました。それを快く思わなかった筆頭侯爵ゾフィス家が、他国と通じているとの内通があり、訓練遠征に出ているほかの騎士団にかわり、近衛騎士団がゾフィス家に乗り込みました。
しかし、どこからか情報が漏れていたらしく、待ち伏せされ、私たちは奇襲を受けました。何とか応戦に成功し、制圧しようとした矢先、捕縛していた侯爵本人にジェインが切りかかられました。とっさの出来事に反応できず、更に魔法を打ち込まれ、私が足を負傷、動けずにいた私とジェインを後方に下げようと団長とウィルヘルムの4人が一塊になっていたところで、何かを侯爵に投げつけられ、次の瞬間には森の中にいました。
これが今回の事のあらましです。」
「ふぅぅーん?もしかして投げつけられたのってこれじゃない?」
持ち物からアイテム〝転移クリスタル〟を取り出す。
「「「!」」」
これにジェイン以外が反応した。ジェインは意識がなかったのだろう。
「これに間違いありません、外観は稀に発見される〝遺物〟とよく似ているようです。どのようなものかお聞きして宜しいですか?」
セインがクリスタルをじっと見ながら聞いてきた
「いいよ。これは〝転移クリスタル〟という錬金術で作るアイテムで、邪神戦争期には一般的に出回っていたものよ。あらかじめ転移先を設定できるスグレモノなんだけど、それを利用されたみたいね。」
「錬金術か、それも廃れて久しい...そのような〝遺物〟はかの神聖国に多く所蔵されていると聞く。さてはゾフィス家が通じていた他国とやらは、ミース神聖国か。」
「可能性は高いかと。すぐに情報を持ち帰りたいですが。シオンさん、この転移クリスタル、おいくらで譲ってくださいますか?」
「転移クリスタルでルイン王国に帰ると?」
「いえ、参考資料として欲しいのですが」
「ならば代金は必要ありません。タダで進呈しましょう。ついでにルイン王国まで明日送って差し上げます。その代わりと言ってはなんですが...」
チラ、とアルバートを伺う
「叶えられる範囲で応えよう」
「ならば、ルイン王国創世記とやらを拝見できませんか?出来れば写本も頂きたい。」
ポカンとする4人組
「私の趣味、本集めなんです。ご協力お願いできませんか?」
「くっ、はは!そんなことでいいのか?いいだろう、修正なしの原本の写本を許そう。」
アルバートが拍子抜けしたように笑った
「うっしゃあ!ついでだから王都も散策して隠れた名店巡りやらせて頂きますね!」
「僕も付いていきますよ」
「いいだろう2人とも言わば恩人、兄上なら快く迎えてくださるだろう」
「隠れた名店巡りは私も同行しますよ」
「俺は兄さんに根掘り葉掘り聞かれそうだ、あぁー憂鬱...」
「...帰ってからの報告書の方が憂鬱。」
「まぁまぁそういわずに!明日しっかり送り届けるんで、もうそろそろ寝ちゃいましょ!」
「そうだな、そうさせてもらう...部屋まで案内してくれないか?場所が分からなくなった...」
「僕が案内します、シオンはもう寝てくださいね明日疲れるのはシオンだけですから」
「はいなー、皆さんおやすみなさーぃ」
早速自室へ帰っていくシオンの声がドップラー効果で消えていった
ルークが部屋へ案内し、扉を閉める直前、絞り出すように口を開いた
「アルバートさん、セインさん、ジェインさん、ウィルヘルムさん。シオンは何も言わなかったけど、ここの事は絶対に口外しないでください。この森は人外魔境なんて呼ばれているけれど、実際は消え掛けの種族の最後の拠り所なんです。今まで大陸の各地に遠征と称して旅に出て、迫害された種族や幻獣と呼ばれる彼らを連れて帰り、作り上げた最後の楽園なんです。だからどうか、ここの秘密を守ってください。お願いします!」
アルバートは頭を下げたルークの髪をぐしゃぐしゃにしながら答える
「案ずるな、ルーク。私は近衛騎士団団長ではあるが、一応は王弟だぞ?そのへんの煙に巻き方は心得ている。それに口の硬さは折り紙つきだ。それに、シオンやお前は恩人。裏切るなど騎士道に反する。」
「秘密を漏らしたが最後、シオンさんに消される未来しか浮かびませんよ」
「俺も上に同じく」
「...うっかりばらすほど喋らない。」
それぞれ覚悟を決めたものや、そもそも口数が少なかったりする理由から漏れる心配はゼロだった。
改めて四人の顔を見回したルークは晴れやかに笑った
「お願いしますね、
それと、明日のことですが、外を見て気絶しないでくださいね。」
扉は閉められ、4人の中にはとても悪い予感が渦巻いた。
ルークとしては、不幸は分かち合うものだと思うのだ。